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2020/11/09
食欲の秋がやってきた。
一年で一番大好きな、グルメの季節。
今、気になるのは街角でよく見かけるキッチンカーグルメ。
お店でお客を“待つ”スタイルから、お店ごと“行く”スタイルへと、飲食店の新たな時代を作りつつある。
その姿は、本格的なグルメを提供する店、まちの風景を生み出す店、お客の笑顔を想う店など多種多様。
小さなキッチンカーの中には、店主のどんなこだわりと想いが詰まっているのだろう?
キッチンカーといえば、イベントでしか見かけないイメージがある。しかし今、一定の場所に常駐するキッチンカーが増え始めている。そんなキッチンカーのオーナーに聞いた、その場所やまちへの想いとは?
福井市中央公園にエンジン音が響く。遠くからでもわかる大きな黄色いバス。知っている人はそのバスがやってくると次々と近づいていく。アメリカ映画に出てくるスクールバスは、デビューから半年を経たずに、今や福井のキッチンカーの中でも有名な存在。
開業前から出店するならエキマエ、と決めていた。「フードトラックは歩いている途中にふらっと入って食べる場所ですから」。街なかでフードトラックに人が集い、そこにまた新しいバルのようなスタイルが生まれる――。そういう風景を開業前から描いていたオーナーの奥田貴章さんは、自身の青春の原風景はエキマエにあったから、その風景はおのずとエキマエ・ハピリンを描いていた。
ある日、知人から福井市が中央公園活性化推進を行なっていることを聞き、舞台をエキマエから中央公園に移す。「潜在需要はあるから」と言われた初日、公園には誰もいなかった。「いないのなら作ればいい」。チラシを手に周囲の会社を回っていく。すると1週間ですぐに結果が出た。開店前に30人分の注文が入ることもあった。「以前県庁の方がいらしたときに、この店のことを知らなかったんです。まだまだ需要はあるだろう、そう思います」。
7月に入り猛暑が続き、自粛ムードが続いたとき、変化が訪れた。外国人、とりわけアメリカ人が殺到したのだ。彼らにとってみれば懐かしいバス、そしてアメリカのソウルフード。来ない理由がない。さらにバスの近くにシートをひき、まるでピクニックのように公園を使う。その風景はまるでアメリカ。「この場所ならこういう風景ができるんだ、と逆に感心しました」。
キッチンカーはただ食べる場所ではなく、街の風景を作る要素になる。目立つバス、横のつながりを大事にする奥田さんはそう思い続けているから、いつも周りに人が集まってくる。「純粋にみんなの笑顔が見たいだけです」。笑顔を作る風景、それはキッチンカーにしかできないことなのかもしれない。
探していた念願のスクールバスを見つけたことで、フードは自ずと決まっていった。「このバスはアメリカ製。だからフードもアメリカのママの味をと選びました」。かつ持ち歩いて食べやすいものということでホットドッグやホットサンドを選んだという。奇はてらわず、日本人の口に合い、何度でも食べたくなるものを選んだ結果、リピーターが続出中。
FOOD TRUCK U.S.A. EAT ME イートミー
【電話】090-8095-0530
【HP】あり
【SNS】Facebook Instagram
敦賀半島の先端付近に位置する敦賀市白木。民家が15軒しかない小さな海辺の集落に常駐のキッチンカーが今年の3月にオープンした。この店を切り盛りするのは、店長の坂本悦子さん、橋本ふじ子さん、畠ひとみさんの地元に住む女性3人グループだ。
「白木は、敦賀市内からも遠く、『高速増殖炉もんじゅ』のイメージが強いエリアだと思います。しかし、そのイメージを変えていきたいという想いから常駐のキッチンカーをオープンさせました。白木は知られざるスポットも多くて、良い場所ですよ」と、坂本さん。その言葉通り、白木は美しい日本海の絶景を望む、門ヶ崎の遊歩道や白木海水浴場などがあり、知る人ぞ知る穴場スポット。その白木の魅力をキッチンカーと共にお客に広く伝えるため、地元に伝わる伝統食である“しとぎ”を使用したメニューを看板に掲げ、白木を盛り上げる。
また、今秋からは移動用の「mini Calm号」でイベントなどに参加し、活動の幅を広げる。「店名の“Calme”というのは、“おだやか”という意味。その名の通り、ゆっくりじっくり白木のことを知っていってもらえれば」。
白木ではかつてお百度参りの習慣があり、ご近所総出で病気平癒を祈願し、その際“しとぎ”と呼ばれるお餅の原型のようなおやつが子どもたちに振舞われた。その習慣は20年ほど前に途絶えてしまったが、坂本さんたちが“しとぎ”を再現し、クレープ状にアレンジしたのが看板メニューの「しとぎロール」。モチモチ食感のその生地はどんな具材とも相性抜群だ。
Take out cafe Calm カルム
【住所】福井県敦賀市白木1-435-1
【電話】0770-36-4512
【時間】10:00~15:00
【休日】火・木・土曜
【HP】あり
【SNS】Instagram
開山から約1300年、中世の宗教都市として栄えた白山平泉寺。2019年の日本遺産登録を機に、奥深い歴史が改めて注目されている。
そんな白山平泉寺の境内が、今ちょっと面白い。週末になるとピザと「白山平泉寺どじょう」の唐揚げを販売する2台のキッチントレーラーが開店する。ピザ店の店主は、門前の施設管理を行なう地域会社の代表・大久保満さん。「美味しいと喜ばれることをやりがいに地域に貢献しよう」と励む姿に触発されて、近隣でどじょうの養殖に取り組む谷浩紀さん親子も、キッチンカーのお店を開いた。
両店を目当てに地元の人も訪れるようになり、門前のにぎわい創出は少しずつ前進しているようだ。大久保さんは趣味として楽しみたいと話しつつも、「勝山で地元のキッチンカーが集結するイベントができれば」と夢を膨らませる。谷さんも「『白山平泉寺どじょう』を地域ブランドとして確立し、まちおこしに」と目標は大きい。
生まれ育った場所への愛着をもとに、まちおこしに取り組む2組の店主。古刹の門前に吹く新しい風は、地域の魅力を広く届ける力になるだろう。
地元の休耕田を活用して養殖した平泉寺育ちのどじょうを使用。ウナギにも負けない高い栄養価と美味しさを知ってもらうために、手軽に食べられる唐揚げにしたそう。揚げ方にも工夫を加え、骨まで丸ごと食べられるので子どもも安心。オーナーの谷さんは「福井にはどじょうを食べる文化がないからこそ、新しい流行を生み出せれば」と意気込む。
【住所】福井県勝山市平泉寺町平泉寺56-63 平泉寺大門市隣
【電話】0779-64-5710
【時間】金~日曜・祝日の9:00~17:00
【休日】月~木曜
【SNS】Instagram
ピザチェーンでの勤務経験がある店主・大久保さんが提供するのは、地元の野菜をたっぷり使った平泉寺流のアメリカンピザ。「できたての一番美味しい瞬間を届けたい」という想いから、ピザオーブンを搭載できるキッチントレーラーを選んだ。仕込みからすべて手づくりで、注文を受けてから焼き上げるため1日50枚限定。事前の予約がおススメ。
Heisenji Kitchen Harmony
【住所】福井県勝山市平泉寺町平泉寺41-8 平泉寺まほろば前・と之蔵横
【電話】0779-88-0033
【時間】金・土曜の9:00~17:00(当日予約は15:00まで)
【休日】月~木曜、日曜
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