タンゴの革命家、ピアソラ生誕100年記念コンサートを開催。バンドネオン奏者、小松亮太さんインタビュー。

2021/02/27

19世紀後半に南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスとウルグアイの首都モンテビデオを中心に生まれたといわれる『タンゴ』

2021年は「リベルタンゴ」で知られるアストル・ピアソラの生誕100年にあたります。3月13日(土)、「ハーモニーホールふくい」にて『アストル・ピアソラ 生誕100年記念 小松亮太 五重奏団 コンサート』を開く、世界的バンドネオン奏者小松亮太さんに、バンドネオンとの出会い、伝統的なアルゼンチン・タンゴにクラシックやジャズなどの要素を取り入れ、独特のスタイルを作り上げた鬼才ピアソラについて、タンゴ界のこれから…など、さまざまなお話をうかがいしました。


すべての始まりは、行くあてのなくなったバンドネオンとの出会いから。

©Yusuke Takamura

――福井でのコンサートは2002年の「ハーモニーホールふくい」以来とのことですが。

僕もびっくりなんですよ。そんなに来ていなかったんですね。うちは父も母もタンゴ・ミュージシャンで、90年代かな…当時のホール関係者の方が両親に“福井でぜひコンサートを開いて欲しい”と声をかけてくださって、修業時代になりますが、両親のタンゴ・グループの一員として「ハーモニーホールふくい」でコンサートを行なったこともあるので、いろいろご縁を感じています。

――バンドネオンは独学とのことですが、バンドネオンを始めたきっかけを教えてください。

1987年に日本でもタンゴ・ブームというものがありまして、それはブロードウェイからの余波なんですが、中森明菜さんも「タンゴ・ノアール」という曲を歌っていましたよね。時代もバブルだから、うちの両親も仕事のオファーは多くあったんですが、当時の日本はバンドネオン奏者が激減していたときで、仕事はあるのにバンドネオン奏者がいないから引き受けられない。困っていたところ、若手のアコーディオン奏者の方が「僕がやります!」と手を挙げてくれたみたいで、それで両親がバンドネオンを購入し、彼に試しに弾いてもらったところ、ものの5分で「すみませんでした」と…。彼としては何かしら、アコーディオンとバンドネオンの間に互換性があると思っていたんでしょうね。結果、行くあてのなくなったバンドネオンは、我が家に持ち帰ることになったんですよ。

――それは運命的としか言えないですね。プロの奏者になろうと思ったのはいつからですか?

両親ともミュージシャンですから、僕は基本的に鍵っ子だったんです。時間があったんで、バンドネオンを引っ張りだして遊んでいたら、まわりの大人たちが「この楽器を練習している時点で日本一だ!」とか、「この楽器でもしもプロになることがあったら、絶対に仕事がある!」とたきつけるんです。要するにバンドネオン奏者が一人でもいいから、増えてくれないと困る立場だったんですよね。そこからすべてが始まりました。

――アストル・ピアソラという作曲家・バンドネオン奏者がいることを知ったのはいつですか?

日本でアストル・ピアソラというすごい人がいると言い出したのは、うちの両親世代から。つまり今75歳くらいの人たちなんです。ピアソラは生きている間、アルゼンチン以外ではそんなに有名ではなく、亡くなってからクラシックやジャズの人たちが彼の曲を演奏し始めたのをきっかけに、世界的に有名になったんです。昔はタンゴの仕事をしているとピアソラの曲が20分の1くらいの確率で出てくるんです。トラディショナルなタンゴがあって、それを普通にやっているなかで、たまにピアソラの曲があったというだけで、ピアソラだけが特別好きだとか、ピアソラだけを神様と思っているとか、そんな考えは僕にはありませんでした。ただ最近、僕より年下のタンゴ・ミュージシャンの人は、これはアルゼンチン人もそうなってきているんですけど、まずピアソラから入る。初めはクラシックやジャズ、ロックなど、他のジャンルの音楽が好きだった人は、ピアソラを聴くことによってタンゴを知って、ピアソラが好きでバンドネオンを始めるというパターンが多くなってきているんです。これってすごく大問題なんですよ。

――タンゴ=ピアソラ。世の中がそういうふうにタンゴを誤解しているということですか?

そうですね。これは本当に声を大にして、ピアソラ生誕100年記念だからこそむしろ言ってるんですけど、アストル・ピアソラという人が特別すごくて、彼よりも上の世代の人たちが作っていたタンゴが「単なる踊りの伴奏でした」というのは、クラシックやジャズの人たちが勝手に言い始めた嘘なんです。このことによってどれだけのデメリットが起きたことか。ここから先タンゴがどうしていくのか、このへばりついてしまった誤解を解くことからまずは始めないとリセットできない。そんなことを数少ないタンゴ・ミュージシャンとして考えています。

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#インタビュー#音楽#コンサート

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