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【パルタージュ】
2021/04/15
ようやく寒波が去り、冬の間ほったらかしにしていたテラスの手入れを再開した。我が家には細長く狭いテラスが5か所あって、ベゴニアなど零下に耐えられなかった植物をとりのぞき、「そこに何を植えようか」と考えながら、花屋の店先を覗いて歩くのが楽しい季節になってきた。
パリでは毎日ごみの収集が行われていて、その処理に伴う経済的・物理的な負担の軽減と環境保護のため、家庭から出るごみを減らす取り組みが進められている。その一つとして、コンポスター(生ゴミをミミズの餌にして土や肥料を作るプラスチック製の装置)の配布が行われている。
「(我が家のテラスにある)プランターの土を手軽に入れ換えることができる方法だ」。私は1年ほど前にこのコンポスターを利用している友人からミミズを譲ってもらうことを思いつき、自家製のコンポストを始めてみることにした。あらためて思い返すのは、実家にある畑の柿の下にあるコンポストにゴミを捨てたときに、勢いよくバリバリとくず野菜を食べている虫たちの姿を見た衝撃にほかならない。まさかパリで暮らすことになる自分が同じことをするとは思いもよらなかった。
コンポストでの作業は、卵の殻をミキサーで砕き、箱は手でちぎって細かくしていく。コーヒやお茶のカス、玉ねぎと柑橘類以外の野菜のくずを入れるといったプロセスを経験する中で、普段の生活でいかに大量のゴミを出して生きていることを実感するのと同時に、自然界が持つリサイクルシステムのすごさを実感している。
その一方で、土いじりをしていると不思議と気持ちか静かに過ごせることに気がついた。黒いふかふかの土が手軽に使えるようになって、昨年には寒くなるまでサラダやパセリ、ミント、ネギ、青紫蘇などを収穫することができた。不思議なもので、ちょっとした時間の合間に世話をするだけなのに植物が元気に育っていく様子を見ることができるのは嬉しいものだ。
昨年、福井の実家に帰る度に手伝っていた畑の代わりとなってくれた我が家の“小さい菜園”は、人との交流が制限されて久しいこの時期にあって密かな慰めにもなっている。今年はロリエやラベンダーなど今まで植えたことがなかったものに挑戦してみよう、と想像を膨らませている。
画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。娘の急なリクエストでノルマンディー地方の海に2泊の小旅行。北海道の美瑛(びえい)町を思わせる地平線と水平線が広がる畑の中を歩いた。
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