
芸術新聞社/2750円
今、SNSで加速度的に注目を集める写真家がいるのをご存知でしょうか? その人の名前はAkine Coco。何気ない福井の風景や日常を投稿したTwitterが多くの人に「いいね」をもらい、遂には写真作品集『アニメのワンシーンのように。』を発売してしまった、福井県在住の写真家です。
「旅行が好きで、もともとミラーレス一眼は持っていましたが、普段は埃を被っていましたね」。そう語り始めたAkineさんに、本格的に写真を撮り始めてからのこと、写真集が出版されるまでのこと、出版後の反響など、さまざまなことを伺いました。
――埃を被るまで放っておいたカメラですが、本格的に写真を始めたのはいつからですか?
2019年6月ごろです。まわりで写真を始める知人が増えたというのが一番の理由です。
――今ではフォロワー数20万人越えのTwitterですが、投稿を始めたのはいつからですか?
写真を始めてから2カ月後の2019年8月からです。SNSで写真を投稿して盛り上がるという文化があるのを知らなくて、面白そうだなと思って。Twitterを始めたことは誰にも言わなかったので、フォロワー0からのスタートでした。
――作品集のタイトルであり、Akineさんの写真テーマでもある「アニメのワンシーンのように。」。この言葉が生まれたきっかけを教えてください。
もともとアニメが好きで、アニメを見てから寝るっていう習慣があったくらい、ずーっと見てたんですけど、去年の3月くらいかな……。暇ができたので、常にカメラを持ち歩いて、いろんな場所を撮影していたんですが、仕事帰りに見た夕日がすごくきれいで。その時に何気なく撮った写真が、新海 誠監督の映画『君の名は』みたいな雰囲気があって、めちゃめちゃかっこいいなと思ったんです。その時ですかね「アニメのワンシーンのように。」っていう、自分の撮りたい写真のテーマがはっきり見えたのは。
――Akineさん目線で切りとった福井の風景を1ページ、1ページ見ていると、「何もないけど、何かある」「何もないが面白い」そんなことを感じました。
僕もそうだったんですが、学生のころは遊びたいじゃないですか? でも福井には遊ぶ場所がないから、金沢まで行ったりして……。常に“何もない、何もない”っていうネガティブな発言ばかりしていたんですが、写真を撮るようになって「何もないがある」っていう、その良さに気づけました。
写真を始めた当初は京都や大阪といった、人の多い場所で写真を撮ったりもしていたんですけど、コロナの影響もあって、県外に行くことができなくなってしまって。それで、もっと身近な地元で撮っていこうと思ったんですよね。そしたらすごく楽しくて。それこそ人気のスポットはみんな撮ってるじゃないですか。もちろんそれもいいんですけど、身近な場所って誰も撮ってないから、自分だけのお気に入りのスポットになったり、特別感を感じるというか。それは、ただの道でもいいんですよね。
――作品集『アニメのワンシーンのように。』のお話になりますが、出版社の方からコンタクトがあったのはいつごろですか?
2020年の7月ごろだったと思います。ちょうどそのころ投稿したTwitterに40万超えの「いいね」がついて、それを見た出版社の方がダイレクトメッセージを送ってきてくれたんです。初めてのことだからよく分からなくて、こういうことってよくあるのかなって笑。でも、すごくうれしかったことは覚えています。
担当の方がめちゃめちゃ熱い方で、「こうしたいです! ああしたいです!」って何回も連絡をくださって、「ああ、この人に任せれば、絶対にいいものができる!」と、自分の中で感じるものがありました。今はこんな時期なので、まだリモートでしかお会いしたことがなくて、直接ご挨拶できる日をとても楽しみにしています。
――作品集を制作するにあたり、何枚もの候補カットがあったと思います。写真のセレクトはAkineさんご自身が行なったんですか?
たまに「こうしたら?」というアドバイスはいただきましたが、写真のセレクトや構成は自由にさせていただきました。撮り下ろしも含め、200以上の写真を掲載しているんですが、7割が福井、3割が県外です。作品集に物語性を出したかったのでコンテンツを「夏の記憶を巡る」「夕暮れの魔法」「アフターダーク」「秋風に吹かれて」「続く世界」の5つに分けています。また、アニメっぽさを表現したいと思い、画角は基本的にはヨコ主体になっています。
――「アニメのワンシーンのように。」というテーマをくれた、仕事帰りに見た夕日の写真は掲載されているんでしょうか?
最初は候補に入っていたんですが、途中で外したんです。作品集を作るのに半年ほどの時間をかけているんですが、何度も何度も流れを考えていく中で、言葉では言い表しにくいんですが、感覚的に何かが違うなと思ったんでしょうね。
次ページ→今まで経験してきた情緒的なものを大事にしたいですね。
――お気に入りの写真を教えてください。
表紙の写真が一番のお気に入りです。これも本当に何気ない写真なんですよ。この写真を撮った後に、何度か同じ場所で撮影をしたんですが、同じものが撮れないんですよね。もちろん雲の形も違うし、光の差し具合も微妙に違うんです。だからこそ愛着があって、一期一会というか。
――発売以降、Amazonの特殊写真カテゴリーにてベストセラー1位にずっと選ばれていますね。
あまり実感はないのですが、うれしいです。とても面白い方がいて、これは福井の方なんですが、「知っている場所に全部付箋を貼りました」と笑。他にも「聖地巡礼しよう」って書かれている方もいて、たくさんの方からコメントをいただきました。
――撮影場所はどこが多いですか?
福井市、坂井市が多いです。最近好きなのは三国です。海の近くにある古い街並みが気に入っています。あと、大野もよく行きますね。嶺南エリアでは美浜が好きです。嶺南はまだまだ未知の世界なので、ぜひ撮影したいですね。
――カメラや撮影場所にこだわりはありますか?
正直、こだわりはそこまでないんですよね。カメラは自分が表現したいことを表現する手段のひとつだと思っていて。大学生のころから音楽をやっていて、ギターで作曲をするのが好きなんですが、ギターもある程度弾けて、自分が表現したいことが表現できればそれでいいんです。上手くなりたいとはあまり思わないんですよ。もちろん下手よりは上手い方がいいですけど笑。カメラもそれと同じで、テクニックよりも感覚というか、今まで経験してきた情緒的なものを大事にしながら、自分が表現したいことを、写真を通じて伝えられたらと思っています。
――2作品目のお話があったら、どうしますか?
オファーがあれば、また出したい気持ちはあります。でもテーマは同じかと聞かれると、その時によるでしょうね。今は「アニメのワンシーンのように。」というテーマのもと、写真を撮っていますが、次は都会を切り取るというのもあるかもしれないですし。
――写真以外にも見て欲しい部分があれば教えてください。
今回、コロナの影響で県外に撮影に行けなくなり、地元に目線を向けたことで福井には「何もないがある」ことに気づき、多くの方にたくさんの「いいね」とコメントをいただきました。本当に予想もしていなかったことで、今も驚いています。作品集の中で使用しているコピーも自分で考えたものなので、ぜひ注目してください。また、巻末には、映画のスタッフロール的な意味合いのQ&Aもありますので、そちらも読んでいただけるとうれしいです。
Akine Coco
写真家。福井県出身。田舎の写真をアニメのワンシーンのように仕上げた写真が話題に。現在、東京のジュンク堂書店 池袋本店にて、YOASOBIのビジュアルなど手掛ける古塔つみさんと「古塔つみ・Akine Coco 作品展」を開催中。Twitterフォロワー数20.7万人(2021年4月現在)。Twitter Instagram
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