2021/06/14
「町中華」は美味しいだけじゃない。
歴史と情熱を感じさせる看板、食欲をかき立てる食品サンプルが並ぶショーケース。外食へのワクワク感はすでにお店に入る前から始まっている。厨房の奥から聞こえてくる中華鍋の金属音、漂ってくる油や香辛料の香り。エンターテイメントを感じた瞬間、いよいよ町中華の扉は開かれる。
午後5時過ぎからの町中華
ちょっと早めの仕事帰り。なじみの町中華の厨房から漂ってくる 胡麻油の香ばしさに胃袋が騒ぎ始める。夜ご飯のお供に、お酒のアテにもぴったり。さあ町中華の世界に飛び込んでみよう。
中華愛溢れる総料理長の
一皿を求めて
ピリケン本店
基本の味を守りながら
その美味しさを進化させる。
福井市の中心部、足羽川の並木道を目の前に望むピリケン本店。重厚な造りの店構え、2階には伝統的な円卓の小上がりと、ガラス張りの開放的な空間にテーブル席がある。大正10年(1921)の創業とその歴史は古く、今年100周年を迎える老舗中の老舗だ。
現在、本店の厨房を取り仕切る総料理長の大坂弘海さんは入社から30年以上になるベテランスタッフ。ピリケンとの思い出となるとさらに深い。
「両親に連れられて初めて来たのが小学6年生の時。その頃はまだ洋食と中華をやっていた時期で、僕が注文したのはお子様ランチ。両親は八宝菜と酢豚を食べていましたね」と話し、今も当時の記憶が鮮やかによみがえってくる。
当時、暮らしていた武生でも『珍々飯店』や『甲来』に通っていた思い出があり、町中華は大坂さんにとっての人生そのもの。高校を卒業すると名古屋にある中華料理店に修行へ。調理師免許を取得するため福井に戻り、ピリケンで働き始めて30年以上の歳月を積み重ねてきた。
現在60種類以上あるメニュー、その一皿一皿に思いがこもる。
「例えば酢豚も伝統の甘酢を使って、入社した時の味付けを守っています。一時期、入っていなかったパイナップルも復活させて、懐かしい味に。時代の流れに合わせて少し甘さは控えめにしているけどね」と、和やかな笑顔を見せる大坂さん。まだ働き始めて間もない20代の頃、初めて任されたのはシュウマイを包む作業。今も変わらずシュウマイや春巻きは手づくり。「技術や時間は必要になるけれど、できる限り手づくりにこだわっていきたい」と話す。
歴史ある老舗の味を受け継ぎながら、時には大坂さん自身の経験や工夫を取り入れて、町中華を進化させてきた。
修業時代、その美味しさに感動したという大連産の特級クラゲを使用した「くらげの冷菜」や、前任のチーフに教わったレシピを再現し、より食べやすくクリーミーなソースに改良した「海老のマヨネーズソース和え」。一見、今風に見える「ガーリック炒飯 牛ステーキのせ」はYouTubeの食べ歩き番組で紹介されていた、尊敬する料理人のメニューに独自のアレンジを加えてメニュー化した、オマージュとなる一皿だ。
「僕自身、外食は記念日などの特別な日に行くと決めているので、美味しい中華を提供して、そのお手伝いをできるのが何よりもうれしい」と大坂さん。その自然体のこだわりは町中華の魅力そのものと言えるだろう。
ピリケン本店
【住所】福井県福井市つくも1-5-28
【電話】0776-36-3536
【時間】11:00~15:00(14:30LO)、 17:00~21:30(21:00LO)
土日・祝日は11:00~21:30(21:00LO)
【休日】12/31、元日
【席数】285席
【駐車場】40台
【HP】あり
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