【パルタージュ】

ロックダウン解除の梅雨の日に。|パルタージュ

2021/07/11

『エミール・グドー広場』
©Tomoko Iozaki

フランスではようやくロックダウンが解除となり、多くの国民が待ち望んでいたレストランやカフェ(テラス席のみ)、映画館、美術館などが営業を再開した。5月中旬、実に200日ぶりとなるこの日の様子は「取り戻された自由(リベルテ)」として報道された。

この頃のパリは日本の梅雨に似ていて、天気予報には毎日のように雨マークが並んでいる。クラスターを避けるべく屋外で風景画を描くようになり、1年ほど前から絵を教え始めた京都出身の友人も雨マークが続く天気予報を眺めながら晴れの日を見つけては私に連絡してくるようになった。それはさまざまな制限下で暮らす私たちにとって、励ましとなる小さなイベントのようにも思えた。

パリでは雨上がりの虹と出会う日も多く、真夏の訪れを予感させる。対照的に故郷の記憶として想起する日本の梅雨は、一日中降り止むことのない雨に閉じ込められて過ごすような日が続き、土の香りを感じる青田の中を小学校へと向かった通学路の風景が懐かしく絵画的に思い出される。

規制緩和の初日、(午前中は雨が降らないことを確認して)友人と待ち合わせして、モンマルトルのエミール・グドー広場へと向かった。今年は例年よりも気温が低く、セーターにダウンという冬の装いでも、手足の指の感覚がなくなるほどの寒さだった。アコーディオン奏者がいつもの定位置でそっとバックミュージックを奏でていて、芸術的なゆったりとした時間の流れを感じながら、広場のベンチに座って絵を描くことにした。

予報よりも早く雨が降り始めたものの、しばらくは新緑が美しいマロニエが傘になってくれた。それでも時折花や雨の雫が画面の上に落ちてくる。「しばらくは止まないだろう」と諦めて道具をしまい、広場横のパティスリーへと向かった。

入り口のドアの取手がマドレーヌのお菓子の形をしていて可愛い。探していたプルーストのプチィット・マドレーヌを見つけて喜んでいると、それはフィナンシェのようなお菓子(ヴィジッタンディンヌ)だと、対応してくれた日本人パティシエールが色々と教えてくれた。フランスの伝統菓子の奥深さに感心しながら、画材で潰れないようにそっと鞄の中に入れて自宅への帰路についた。

画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。福井大学などで油絵を中心に学び、渡仏後は語学や絵画を勉強。様々な情報が交錯し気が進まなかったものの、夫の勧めもあり1回目のワクチンを接種した。


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#コラム#アート#連載

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