小浜市の『伊勢屋』のくずまんじゅう、夏の風物詩で美味しく涼を感じよう。

2021/08/19

 店内に入ると名水が湧き出る水場があり、そこには「食べ頃」のくずまんじゅうが涼やかに浮かぶ。そんな小浜の夏の風物詩は、名水の宝庫である小浜に生まれるべくして生まれた和菓子だ。







 小浜は全国屈指の名水の宝庫。実は小浜には約100ヵ所以上の自噴井戸があり、目前に港を控える「雲城水」や「津島名水」では、海のすぐ近くでも海水が混ざらない豊かな淡水が、機械によるポンプアップではなく、自噴で湧いている。「名水の湧き出る場所には名酒や名物があることが多く、ものづくりの原点を辿れば“水”が不可欠なんですよ」とは創業天保元年の和菓子店『伊勢屋』の五代目である上田藤夫さんは話す。




自噴名水と名産くずを用いた、究極の涼菓子が誕生。

 古くから小浜の各家庭では、御影石や木材で囲った水場を持っており、そこに名水を引いて食品や飲料を冷やしたり、米や食器の洗い場として活用していた。また、若狭一円の村部を中心に、百姓の冬場の農閑期の仕事として、くずの生産も行なわれており、そんな状況下で美味しい名水と良質なくずを原料としたくずまんじゅうが生まれたのは必然だったのだろう。魚屋や八百屋、うどん屋など商いをしている家では必ずと言っていいほどくずまんじゅうを製造し、販売。一気に小浜に広まった。







 そして時は流れ、くず生産が衰退し、食品販売に関する条件が厳格化。くずまんじゅうは菓子屋だけの販売になっていくが、小浜では人生の節目には必ず菓子を用立てる「菓子を使う文化」が栄え、50軒弱の菓子店が存在していたことでさらに深く地域に根付いていったのだとか。


つるつるっと5個は食べたい、夏の涼菓。

 先人が作ってきたものにはすべて意味がある—。偶然なのか、必然なのか、知恵を生かしたお菓子には「なるほど」と納得させられることが多い。夏場のお菓子は冷蔵庫に入れるのが常だが、くずまんじゅうを冷たい地下水に浮かべるスタイルが生まれた発想力には、『伊勢屋』の上田さんも感嘆しきり。







 『伊勢屋』では、本くずと地下水を火にかけて練り上げる本返しという技法で作る。牛乳のように白濁してきたら、さらに練り上げ、のり状になるまでしっかりと火を入れる。熱々のうちに専用の容器に詰めていく。間にこしあんを入れるのだが、小豆を名水で炊くことにより素材が生きた風味豊かなあんができあがるという。容器に詰めたら、すぐに店先にある水場に放つ。くずが透き通っているのはできたての証拠。時間が経つと白くなり、生地に砂糖を入れない為、賞味の期限は当日だ。

 注文を受けてから一つずつ容器からはずして器へ。くずまんじゅうから「ぷるん」とした音が聴こえてきそうなほど瑞々しい。一つ食べるのに時間はかからず、口の中につるんと入れて、閉じた瞬間にほどけるくずとなめらかなあんこが、繊細かつ上品で美味すぎる。1人で50個食べるつわものもいるそうだが、5個はいける。
 見ても、食べてもひんやり。五感で癒す“究極”とも言える小浜の夏の涼菓子。旬を味わう〆は、くずまんじゅうで決まりだ。



「くずまんじゅう」1個130円。9月末または10月上旬まで販売している。店先で揺れる「くずまんじゅう」の旗も風情溢れる。店の裏には「ふくいのおいしい水」として認定された雲城水があるので、そちらもぜひ。




御菓子処 伊勢屋
【住所】福井県小浜市一番町1-6
【電話】0770-52-0766
【時間】8:30〜17:30
【休日】水曜、火曜(不定休)
【駐車場】あり
【HP】https://obama-iseya.com/


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#グルメ#スイーツ#嶺南

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