陸上・桐生祥秀選手インタビュー。『9.98スタジアム』と「Sprint 50」への挑戦。

2021/10/02

『9.98スタジアム』で今シーズンを締めくくった桐生選手
©️アミューズ

東京五輪400mリレー代表の桐生祥秀選手(日本生命)。新たなスプリント種目として「Sprint 50」を自ら考案し、『9.98スタジアム(福井県営陸上競技場)』でジュニア世代との真剣勝負に挑んだ。その初レースから約1か月が経過、「印象的だったのは子どもたちの走り終わった後の笑顔。体験してほしかったスピード感を伝えられたので開催して本当によかった」と、桐生選手は振り返る。


3点スタートや顔を上げる位置を練習して「Sprint 50」に臨んだ
©Getsuriku

8月28日に行われた「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン・フクイ」と同時開催となった「Sprint 50 Challenge in 福井 supported by 日本生命」。「9.98 CUP」の100m予選を控えた午後2時半に臨んだレースでは、大会内で選抜された小学生の男女6人を序盤から一気に引き離し、圧倒的な走りでレーンを駆け抜けた。


「Sprint 50 Challenge」の初めてとなるレースでは5秒87を記録
©Getsuriku

多くの人が経験したことのある50m走をベースに、世代や競技経験の有無に関わらず参加することができる独自ルールを採用した新種目「Sprint 50」。桐生選手自身、「本気で50mを走るのは小学生以来」という本番では、5秒87を記録。「僕自身、まだまだ50m走の走り方があると思う。このルールの中で5秒70以下を出すことが直近の目標」という。


参加した福井のジュニア世代と交流
©Getsuriku

レース後は「Sprint 50 Challenge in 福井 supported by 日本生命」に挑んだ小学生一人ひとりと笑顔でグータッチを交わした。「僕だけでなくトップレベルの選手とこういった形で一緒に走れる機会はなかったと思います。トップのスピード感を横に並んで同じレースで走ることは、その後の練習や試合で経験として活きてくると思います。すぐには追いつけないけど、これが長期的な目標につながって、少しでも前進するきっかけになってほしいです」と、ジュニア世代にメッセージを送る。

8月6日、世界の頂点を目標に掲げて臨んだ、東京五輪400mリレー決勝の舞台。そこには、バトンミスによる途中棄権という非情な現実を前に呆然と立ち尽くす桐生選手の姿があった。

「Sprint 50 Challenge」の開催に向けて動き始めたのは、それから数日後のことだ。「オリンピック前から考えていましたが、チームやスタッフとも話し合い、僕にとって思い出深い福井でやることを決めました」。



記録や新しいチャレンジの舞台となった“9.98スタジアム”

2017年の日本インカレに出場した桐生選手は日本人初の9秒台となる9秒98をマーク。その舞台となった福井県営陸上競技場には、“9.98スタジアム”という愛称もついた。

「東京オリンピックが終わってスポーツ界は絶対に変化していく。その変化はアスリートにとっていいことばかりではないと思う。それでもまずは自分ができることをやる。それが陸上界の発展につながってくれたらうれしい」と考える桐生選手にとって、「Sprint 50」は新たなチャレンジの第一歩となった。あらためて舞台の地に選んだ福井で、東京オリンピック後初めてのレースとなる「Sprint 50 Challenge」、そして今シーズン最後のレースとなった「9.98 CUP」100mの決勝では10秒18のタイムとともに優勝で締めくくった。

「今シーズンはケガなどもあり、トップでゴールすることができない中、ラストの福井で優勝することができた。そして、多くの方から『おめでとう』や『来てくれてありがとう』などと温かい言葉をかけてもらえたことがうれしかった」。


「本気の走り」で陸上や短距離の魅力を伝えた桐生選手
©Getsuriku

来シーズンに向けて、「大事なところでケガをしない体づくりとともにスピードアップを図っていきたい。『Sprint 50 Challenge』でもいろんな人と競いながら勝負を楽しみたいですね。福井のレースでもまた優勝する走りを見ていただけるように頑張ります」と桐生選手。「走ることの面白さ」を純粋に追求する「Sprint 50」へのチャレンジとともにふたたび福井を熱く盛り上げてくれそうだ。


桐生祥秀(きりゅう・よしひで)
滋賀県彦根市、1995年12月15日生まれ。175cm。
中学で陸上競技を始め、高校3年時には10秒01の高校記録・ジュニア日本記録を樹立。東洋大学進学後、各大会で活躍し、2016年リオデジャネイロオリンピック4×100ⅿリレーで銀メダルを獲得。翌年9月の日本学生対校選手権100ⅿ決勝で、日本選手初の9秒台となる9秒98を樹立。2019年アジア選手権100mでは金メダルを獲得し、同年の世界選手権4×100ⅿリレーではアジア新記録を樹立し銅メダルを獲得。2020年10月に行われた日本陸上選手権100mでは6年ぶり2度目の優勝を果たす。東京2020オリンピックでは4×100mリレーに出場。 Twitter Instagram

「Sprint 50」
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