新境地を拓いた2作品『山中静夫氏の尊厳死』、『ONODA』主演・津田寛治さんインタビュー。

2021/10/15

末期がん患者と真摯に向き合う医者の役を務めた『山中静夫の尊厳死』、戦争終結後も約30年フィリピンのジャングルに生きていた小野田寛郎氏役を務めた『ONODA』。前者は映画批評家大賞主演男優賞を受賞し、後者はカンヌ映画祭にてオープニング上映されたなど、今一番注目を浴びている福井出身の俳優・津田寛治さん。10月10日にこの2作品をW上映&W舞台挨拶が『テアトルサンク』にて行なわれました。久しぶりの福井凱旋、津田さんにインタビューを敢行しました。

この2作品を通じて感じたのは、芝居の仕方が変わったということ。「『山中静夫氏の尊厳死』の脚本を読んだとき、芝居をしてはいけない、本当にリアルな医者を演じようと思ったんです。そのあとすぐに『ONODA』だったので、『山中静夫氏の尊厳死』でつかみかけた芝居を追求しようと思っていたら、もっと芝居をしない演技を追求する現場だったんです」。どちらも“津田寛治”というフィルターを通じての役者というより、長野にいる今井医師やジャングルに潜む小野田氏にしか見えなかったのは、その境地に至っているようでした。

11月20日にテアトルサンクで開催される『福井駅前短編映画祭』の審査委員長も務める津田さんは集まった150本もの映画に全部目を通すのですが、それらの作品にも感じるものがあるといいます。「登場する名もなき俳優たちは、本当にいい芝居をしているんです。普通の生活の延長線上にいるように演じているんですね。それは今の時代において感情移入できるものであって、求められるものでもあると思うんです」。

『ONODA』では、ジャングルで独りになってからはセリフもなし。ただ所作のみで演じる姿に、それが演じていることさえもわからないくらい“小野田寛郎”だと感じるものでした。「脚本に“緑と同化している小野田”と書いてあって、どんな撮影をするんだろうと楽しみにしていましたが、既にそうなっていたので追加で撮影することはなかったんです。編集もされていて、かなり時間をかけた感じでしたね」。



今回、津田さんが一番驚いたのが撮影のやり方で、週休2日制で毎週おこづかいをくれたり、パーティーが催されたり、日本とはまるっきり違っていたそうです。「欧米は“仕事としての映画”が確立されていて、映画をとても大切にしている印象でした。日本においての映画撮影は憧れの場所で、その期間は非日常を生きている感覚というか……。どちらが良い悪いとかではないんですけど、日本は一体感があるというか。全員で“同じ夢を見る”という体験があって、それはきっと自分が死ぬ直前に感じる“思い出”になるのかなと思います」。

『ONODA』より
『山中静夫氏の尊厳死』より

奇しくもこの2作品は「生きること、死ぬこと」が根底に流れています。「『ONODA』では国のために死ぬことが正しいという価値観の時代に“生きろ”と言われて生き続けた人、『山中静夫氏の尊厳死』では死ぬ直前の患者を見守った人。下手すると小野田さんはジャングルと同化して生きているかどうかさえも分からなくなっていたと思うんです。今井医師は意識もなくなっている患者をどこで死亡と判断すればいいのか迷ったと思うんです。この2作品は生きるということ、死ぬということを深く考えさせる映画だと思います」。

荘厳なテーマの2作品を同時期に演じたからこそ辿り着いた役者としての新境地。「これからは“芝居をしないリアル”という路線で進んでいこうと思っています。どんな役も当てはまるし、自分自身が楽しみでもありますから」。円熟味を増しながら挑戦する津田さんの今後の作品にも目が離せません!

©映画『ONODA』フィルム・パートナーズ




[公開中]
ONODA 一万夜を越えて
2021/フランス、日本、ドイツ、ベルギー、イタリア/配給エレファントハウス/174分
STAFF&CAST●監督/アルチュール・アラリ
出演/遠藤雄弥、津田寛治、イッセー尾形、嶋田久作、仲野太賀、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井之脇海、足立智充、吉岡陸雄、伊島空、森岡龍、諏訪敦彦
STORY●1945年に終戦を迎えた日本。終戦を知らされないまま約30年間、フィリピン・ルバング島で秘密戦の任務を遂行し続けた実在の人物・小野田寛郎。壮絶で孤独な日々と戦った一人の男の人間ドラマを描く。
公式HP




©2019映画「山中静夫氏の尊厳死」制作員会

[公開中(10/21まで)]
山中静夫氏の尊厳死
2019/日/配給マジックアワー、スーパービジョン/107分
STAFF&CAST●監督/村橋明郎 出演/中村梅雀、津田寛治、田中美里、浅田美代子、高畑淳子、小澤雄太、天野浩成、中西良太、増子倭文江、大島蓉子、石丸謙二郎、大方斐紗子
STORY●長野県佐久市の病院を舞台に、末期がん患者と医師の交流を通じて、「生と死」の意義を問う物語。
公式HP




今回紹介した2作品は、テアトルサンクで絶賛公開中です!

テアトルサンク
【住所】福井県福井市中央1丁目8−1
【HP】あり







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#人物#インタビュー#エンタメ

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