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2021/11/05
童話にエッセイ、小説にイラスト。五条一馬さんの言葉はとても深く、生きづらさを感じる人が多い今の時代に「大丈夫だよ」と優しく寄り添ってくれるようです。74歳にして今も精力的に執筆活動を続ける五条一馬さんの個展が明日から鯖江市「まなべの館」にて開催されます。盲目だからこそ生まれたその言葉の原点を探りに五条さんにインタビューを行ないました。
40代までは目も見えて大手通信会社でセールスエンジニアとして働いていましたが、徐々に目が見えなくなっていったと言います。原因不明の難病と診断され、54歳でリタイア。光を感じる世界から暗闇の世界へ。不安ばかりが襲い、家に閉じこもってしまう生活が続きました。ご自身でも「それではだめだ」と思いながらも、何をすればいいのかもわからない、そんな生活が1年ほど続いたそうです。
落ち込む五条さんを励まそうと、家族で旅行に行こうと奥様は提案します。向かったのは北海道。そのときに試食で食べた夕張メロンの大きさ(半玉!)と美味しさに、「味覚の喜びは残っていた」と、少し心が上向いていきます。そして運命を変える出会いがその後待っていました。
家族が乗馬をしようと「ノーザンホースパーク」に向かったときのこと。盲目だから乗れない、そう思い込んでいた五条さんに家族は乗馬を勧めたのです。見えないけれど馬という動物の体温も分かる、乗っている感覚もわかる、落ちないように注意するバランスもとる。これまでにない体験でした。「落ちたら痛いし危ないし、そう考えると落ち込んでいる暇がなかったんです。それが、心が変わった瞬間でした。“心が病んだら体を動かせ、体が病んだら心を動かせ”って」。
心が優しすぎて競走馬として活躍できなかったロングクレール号、盲目となった元競走馬タカラコスモス号、この2頭と出会い馬の愛情を感じ取った五条さんは、それ以降全国の乗馬施設に足を運び、乗馬の楽しさを覚えていきます。と同時に、馬を通じて心の教育をしようと、月1回「馬っ子の会」を開催し、馬と触れ合うことで馬と人の歴史を大事に、馬の素晴らしさを伝えていきたいと活動を続けています。
そうして執筆活動、講演活動を続ける五条さんは、絶望から動物を通じて生きる希望を与えてもらい、次の世代につなげていきたいと思っています。「今は苦しい時代です。だからこそみんなで、これは人だけじゃなく動物も植物も含めて力を合わせて共に生きていくことが求められます。これを理屈じゃなく、自然に気持ちが湧き上がっていくものでありたいと、この個展の場所がそういう気持ちの場になればと思います」。
個展当日は腹話術人形での朗読や民族楽器の演奏など、優しい気持ちが溢れている時間になりそうです。
「五条一馬のむかし話 越前和紙でつづる童話の世界 作品展」
【日程】11月6日(土)・7日(日)
【時間】 9:30~17:00
【会場】鯖江市まなべの館
【料金】入場無料
【お問い合わせ】090-1485-0051 (一馬とゆかいな仲間たち)