【気象予報士 二村千津子の風と雲】

「できていますか?雪への備え。最新の“使える”雪の情報もお教えします」|気象予報士 二村千津子の風と雲

2022/01/01

あけましておめでとうございます。気象予報士の二村です。

2022年、寅年が始まりました。

この原稿を書いている時点の予想だと、12月最後の1週間は、屈強な冬将軍が日本に訪れ、居座るような傾向です。なので、寒い年明けを迎えているのかな…とやや心配しています。

この1年が人の命や財産を奪うような気象災害が起こらず、穏やかな年になりますように。わたしも、変わらずに雲と風をつかむ努力をしていく所存です。

さて、この冬は、やはりラニーニャ現象の影響で雪が降りやすく、寒くなりやすい天候となっています。先月中も福井市街地でしっかりと雪が積もるタイミングがありましたよね。そうなると、冬本番の1月、2月は大雪があるかもなっていう気持ちだけは持っておいた方がよさそうです。

皆さんは気象庁から発表される情報で、今シーズンから運用が始まった「今後の雪」という情報をご存じでしょうか?これまでは、過去6時間でどこでたくさん雪が降ったとか、現在どこで積雪が多いか、などを面的に知ることはできましたが、この先どのくらい積もるのか、までは分かりませんでした。この「今後の雪」という情報は、このあと6時間先までに、どこでたくさん雪が降りそうか…という予想を地図上で確認することができるのです。

気象庁のHP「今後の雪」のページ

この図は、先月20日午前8時の様子。この48時間で降った雪の量が色分けしてあります。この図の中央上部に、物差しのようなメモリがありますが、これを動かしていくと、過去24時間とこの先6時間までの予測を見ることができます。これがわかることで、今は強く降っているけど、強い状態は続くのか、続くんだったらどのくらい続くのか…ということをイメージすることができます。車で向かうのはやめようとか、1本早い電車にしようとか、予定を考えるときに参考にしていただきたい情報です。

そして去年の1月にも新たに発表された情報がありました。「顕著な大雪に関する情報」です。1年前の大雪は記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。ちょうど成人式の頃、福井県の嶺北で大雪に見舞われました。

大野市内や福井市内では、数時間で数十センチ積雪が急増しました。気象台では、積雪が急増している時、その後も強い雪の恐れがあり、大規模な立往生などが発生する危険が高まった時に「顕著な大雪に関する情報」を発表することになりました。実際に、去年の1月には大野市1回、福井市には2回発表されました。この情報が発表される頃には、車で出ている時、すでに身動きが取れなくなっているような事故が起こっている可能性もありますし、そもそも、どこまでこの情報が必要な人の耳に届いたのかな…と悩んだこともありました。でも、少なくとも、この情報が発表された時には車での外出は危険だと考えて、踏みとどまっていただけるような情報にはなってほしいと思います。

というのも、大雪で危険なのが「立往生」です。いわゆる大規模車両滞留ですが、これは本来、車を運転している多くの人が巻き込まれなければ、何の問題もない状態のはずなのに、自分が原因ではなく、そのうちの1台になってしまうわけです。立往生の規模によっては、命を落とすことがあります。一酸化炭素中毒や凍死です。エンジンをかけて停車している間に、マフラー部分まで雪に埋まってしまう。もしくは、一酸化炭素中毒にならないよう、エンジンを切るが、暖を取り切れない。この危険を避けるには、まず、車で出る以上は巻き込まれた時のために、スコップや防寒着、水やチョコなどの非常食を常に用意しておくこと。そして、本来はその場所に居合わせない、ということが何よりも大事なことになります。そんな危険を回避するための情報が「顕著な大雪に関する情報」だと思ってください。

万が一の時に備えておきましょう

そして、大雪にはもうひとつの危険があります。雪がやんだ後の「除雪中の事故」です。

屋根からの転落・落雪、排雪溝や側溝への転落など、きっと気を付けながらやっていらっしゃると思いますが、自分は大丈夫と思わず、ぜひ、まわりの人と声をかけあって一人では行わないようにしましょう。

この2つの危険を回避できれば、大雪の災害はかなり減らすことができると思っています。これはあくまでも人的な被害で、もちろんビニールハウスなどへの影響を考えると、局地的な大雪が極力降らないことを願うしかありません。

先々月、ある公民館で雪に関する講演をさせていただいた際、「冬に降るなら雨か雪、どっちがいいですか?」と質問させていただいたんです。すると、圧倒的に「雨」の方が多かったです。私は、断然「雪」なのですよね。もしかするとここ数年、いや数十年の間に、市街地での雪の量はどんどん減って、降ったかと思えばドカ雪になり、そのたびに、雪かきや雪下ろしの重労働をしいられ、さらに、自分自身も年齢を重ね、体力的にも厳しくなって、「もう大雪は勘弁」というお気持ちが強いのかもしれません。私も、30年ぶりに福井に戻ってきた途端、平成30年の豪雪に見舞われ、たくさんの方が命を落とされたことに心が折れました。それでも、小さい頃に家の前で雪山を作って、ミニスキーで遊んだことや(いま考えれば、親は大変だったのかもしれません)よくわからない雪の像を作って楽しんでいたので、今でも雪が積もると、ほぼ100%雪だるまを作りますし、何なら人がいないところでダイブしたりして喜んでしまう自分がいます。

自然がおりなす美しい世界もあります。

だからこそ、大雪が心配な時には、命を落とすようなことがないようにその怖さや危険を私なりにお伝えするようにしています。皆さんは、福井の冬、降るなら雨か雪、どちらがしっくりきますか?


二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ



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