【わたしのレコ麺】

敦賀市『THE Depth TIME FAILS』の敦賀ラーメン

2022/02/07

©川瀬徳太郎

福井への移住をきっかけに麺料理にドはまりしたライター・にしやま(岐阜出身)がレコ“麺”ドする食レポ企画。訪れた先で出会ったローカル麺を歴史あるお店のたたずまいや、人情味あふれる店主とのやりとりとともにつづります。




敦賀の麺といえば、真っ先に思い浮かぶのが「敦賀ラーメン」の屋台だと思う。地元の人からは、「国道8号沿いにかつては15軒くらい屋台が並んでいた」と聞くが、昔ながらの敦賀ラーメンの屋台は今では残り数軒に。昨年末にも一軒、その歴史に幕を閉じたそうだ。

そんな中で、屋台と同じ国道8号沿いにあるバー『THE Depth TIME FAILS(デプス)』に「敦賀ラーメン」が誕生した。


国道8号のアーケード沿いに店を構える。「デプス」という店名の通り、奥行きのある入り口から奥へと進むにつれて、食欲をそそる香りが漂ってくる

わたしは以前からお酒を飲みによくこの店に行っていた。店主の坂本涼さんは、なんだかいろいろとギャップがある人。一見クールに見えるが、ハマっていることについてはとことん熱く語ってくれるから、毎回わたしの知らないことを「へえ~!」と聞いているのが面白い。


店主の坂本涼さん。趣味は卓球というからこれもまたギャップ

そんな坂本さんが、一昨年の冬、突然ラーメンをはじめた。

正確には突然ではなくて、一昨年の11月に敦賀で開催したイベントでラーメンを提供したところ、これが評判に。「店で出してほしい」というお客さんの声に応える形でラーメンを食べることができるバーになった。







内装は完全にバー。とてもラーメンが出てくるとは思えない

醤油ラーメンに始まり、塩や鶏白湯、梅ラーメンなど、次々と新しいラーメンに挑戦してお客さんを楽しませてきた。「お客さんから『次これ作ってよ!』というリクエストがあるから、それに合わせてラーメンを作ってきました。食べに来てもらっているわけだからお客さんのニーズに合わせないと」(坂本さん)。

とは言いつつも、毎回開発の過程を楽しそうに話してくれるから、わたしも次はどんなラーメンを作るのだろうと心待ちにしていた客の一人。今回の敦賀ラーメンはそんな研究の賜物だというから、これは食べに行かないわけにはいかない。


注文が入るとスープを温め、ラーメンを作り始める。ラーメン店ではないため設備にはいろいろと悩んだそうだ。

「ラーメンの開発の面白いところは、組み合わせの問題なんです。味はもちろん、人間の目はアテにならないから写真を撮って色味も比べて毎回ちゃんと記録しておくことが大事。そうしてきたから、どんなラーメンを作る時にも役立つデータができました。データに基づいて、当てはまりそうなパターンを全部やっていくことになります。敦賀ラーメンは、週1で豚骨と鶏ガラの配合を変えてみて、それに合わせてタレも色々と試行錯誤しました」(坂本さん)。

いつもの通り、とまらない開発秘話。「料理は科学」とはよく言うものの、地道な研究を知った上で食べるラーメンはより一層美味しく感じらる。


麺は美浜と敦賀に店舗を持つラーメン店から仕入れているという。つるりとした食感がスープに合う

『デプス』の敦賀ラーメンは、鶏ガラ豚骨に紅生姜というベーシックな敦賀ラーメンの特徴は踏襲しつつも、敦賀ラーメンらしからぬ濃厚さと、それでいて後を引かないあっさりとした後味を兼ねそなえる。食べ終わりの惜しさに思わずスープまで飲み干してしまう。地元で培ってきた文化を継承しつつも、時代やニーズに即して形を変えたという感じだ。これは「ニュー敦賀ラーメン」とも言えるかもしれない。


メニューには、ラーメン屋の定番サイドメニュー「チャーシューごはん」も。もはやバーではなくラーメン屋だ

近いうちにラーメン屋を出店する目標もあり、「敦賀ラーメン」はその店の看板商品にするそうだ。きっとこだわりの詰まったお店になるだろうから、また話を聞くのが楽しみになってきた。


THE Depth TIME FAILS
【住所】福井県敦賀市本町1-7-19
【電話】0770-36-4990
【時間】18:00~25:00
【休日】日曜
【席数】9席
【駐車場】なし
【HP】なし
【SNS】Instagram





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