【気象予報士 二村千津子の風と雲】

統計史上初6月に梅雨明け。でも大雨の仕組みを改めて解説!|気象予報士 二村千津子の風と雲

2022/07/01

こんにちは。
気象予報士の二村千津子です。

7月は雨の季節から夏本番へと移り行く時期ですが、今年は異例の早さで、梅雨明けの発表がありました。ただ、読者の方から梅雨にまつわる質問がいくつかあり、来年に持ち越したくないので一気にお答えします。

坂井市のたばちゃんさんから

「なぜ、梅雨がくるの?」と7歳の息子からの質問に答えられませんでした。

という質問をいただきました。これは難しい質問だーーー。

こどもだまし…と思われてしまうかもしれませんが、7歳のお子さんに対して、ということだと私だったら、「春と夏がけんかして押し合いへし合いするからだよ」と答えます。

春の空気と夏の空気がぶつかりあう所に前線ができて雲が発生して雨が降る。はじめは、けっこう、いい勝負で、ひきわけみたいな状態が続きますが、だんだん夏がパワーアップして、夏の空気に覆われて、夏本番になる。ひきわけ状態の時が梅雨にあたります。

実はこの春と夏の間の梅雨ほどはっきりしはしないものの、春夏秋冬の季節が移り変わる時にはすっきりしない空模様の日が続くことが多いのです。

夏から秋には秋りん(しゅうりん)、秋から冬はサザンカ梅雨、冬から春は菜種梅雨などと言われます。



たばちゃんさん、参考になりましたでしょうか。

つづいての梅雨にまつわる質問は…。

福井市のカムバックさんから

「いつもNHKで二村さんのお天気情報を見ています。わかりやすい解説をありがとうございます。ことしの梅雨の傾向を教えてほしいのと、天気と自律神経の関係についてわかれば教えてください。私は雨の日には何もしていなくても体がだるくなって寝てダラダラと過ごすことが多いです。よろしくお願いします。」

といただきました。ありがとうございます!

まず、ことしの梅雨の傾向、梅雨に入る前にお答えできなくてすみません。それどころか明けてしまいました。でも、この梅雨明けの発表は「速報値」で秋に見直しが行われることがあります。6月に雨が少なくても、過去には7月、8月に大雨になったことがあるので、油断は禁物です。

大雨のキーワードは、“暖かく湿った空気”“前線の活動が活発化”そして“線状降水帯”です。線状降水帯については、去年の7月のコラムでメカニズムなどをお伝えしています。おさらいしておくと、

①暖かく湿った空気が山などにぶつかり、
②積乱雲が発達します。
③上空の風が吹く方向に次々と積乱雲が流され、
④同じような場所に発達した積乱雲がかかり続け、豪雨をもたらすものです。

去年からは、この線状降水帯が確認されたら「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されるようになりましたし、また、今年の6月からは線状降水帯が予想される時にも「予測の情報」が発表されることになりました。平成16年7月の福井豪雨も線状降水帯が発生していたと考えられています。線状降水帯が発生していなくても、大雨になる危険はありますから、梅雨末期に向けて、しっかりと備えておきましょう。

そして、雨と自律神経との関係についても少しお答えします。

ここ数年、「気象病」という言葉を、よく耳にするようになりました。いままでは「気のせい」だと思っていた不調の原因が「天気のせい」にあった、というものです。具体的には急激な気圧の変化や気温の変化によって、頭が痛くなったり、だるくなったり…という体の不調が現れることです。

私はお医者さんではないので、症状などについて専門的な話はそこまでできませんが、気温や気圧の変化で自律神経が乱れ、体のバランスを崩す、ということは確かにあるようです。



数年前になりますが、北海道の気象会社の方が、「あすは朝と昼間の寒暖差が非常に大きくなるため、夫婦喧嘩にご注意ください」と“夫婦喧嘩注意報”なるものを発表して、話題になりました。つまり、大きな寒暖差で自律神経が乱れ、イライラしがちになるかもしれませんよ、ということだったんですよね。 

難しいのは気象病はみんなが一緒に起こるわけではないので、「天気のせいで」って、なかなか言いづらいのが現状かもしれません。(それでも、今はだいぶ認知されてきていますが)「天気が悪いから不調で…なんて言いづらいな」とは思わず、天気や気温の変化が大きくなりそうな予報が出たら、頑張りすぎず、ゆっくりお風呂に入ったり、しっかりと睡眠をとるなどして少しでも元気に過ごしていきましょう。

おしまいに、もう一つ。

敦賀市のまーしゃるさんから

「梅雨寒のある地域、ない地域の違いは?東北出身です。毎年、梅雨の時期は肌寒くなるので羽織るものを一枚持ち歩いていました。福井に引っ越してきて梅雨の時期も暑いのにびっくり!どの辺りの地域から梅雨寒がなくなるのでしょうか?」といただきました。

とても、面白く、考えさせられる質問です。ありがとうございます。

梅雨寒という言葉、気象庁のHPでは「梅雨の時期の顕著な低温」とあって、解説や予報では「使用を控える用語」となっているんです。地域性や体感的なものなので、定義を決めるのは難しいですね。

私は、福井に来てからも「梅雨寒」という言葉は使っています。例えば、前日の気温が30度近いムッシムシの空気に包まれていて、翌日雨で20度そこそこまでしか気温が上がらず、羽織るものがあってもいい時などは「あすは梅雨寒です」とお伝えします。おそらくですが、九州や中国地方の気象キャスターの人たちも「梅雨寒」の表現を使う時はあると思います。でも、一つ言えるのは、東北の太平洋側や関東地方は、「めっちゃ梅雨寒」となる気圧配置があるんです。

オホーツク海に高気圧があって、そこから北東の冷たく湿った風が関東から北の太平洋側に吹き込んで、冷たい雨が降るときがあります。その風は「やませ」と言われ、その状態が続くと「冷夏」の原因にもなります。まーしゃるさんは東北の太平洋側のご出身でしょうか。もしかすると、ある意味「本場の梅雨寒」を経験されている方にとっては、北陸地方の梅雨寒は「あまっちょろい」のかもしれません。でも、あまっちょろくても梅雨寒は梅雨寒。今年は梅雨寒という言葉の出番はないかもしれませんが場合によっては「まるで梅雨寒のような肌寒さ…」的な使い方をする可能性があります。その時は風邪などひかないよう、ご注意くださいね。

さて、ちょっと長編になってしまいましたが、皆さんからの質問とてもうれしいです。“暑さ”にまつわる質問もいくつか届いているので、次の機会にでも、お答えできればと思っています。

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※回答の掲載時期は未定です。全てのご質問にお答えできるとは限りませんので、ご了承ください。


二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ



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