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【気象予報士 二村千津子の風と雲】
2022/10/01
こんにちは。
気象予報士の二村千津子です。
さっそくなのですが、皆さんに一つお伝えしたいことがあります。
7月のコラムの冒頭で、「6月は記録的に早い梅雨明け」とお伝えしました。
ところが、9月1日に気象庁が発表した「夏のまとめ」で、梅雨明けの確定値は、『東北北部・南部と北陸地方では8月上・中旬も前線や湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多かったため、梅雨明けが特定できませんでした。』と修正されました。梅雨明けは立秋の頃までに特定できない場合は、「特定せず」と記録されます。ちなみに九州から関東甲信地方も大きく見直され、6月下旬の速報値から3週間から1か月ほど遅い7月下旬に修正されました。北陸地方の梅雨明けが特定されなかったのは、1951年の統計開始以来、過去3回(1993,1998,2009)しかなく、今回は4回目。
つまり全国的な記録的な早い梅雨明けは幻となりました。それだけ不順な天候だった今年の夏、これまでに経験したことがない大雨に見舞われた南越前町の今庄そばさんから質問が届きました。
「二村さん、こんにちは。 南越前町はこの夏、大変な水害に見舞われました。ボランティアの皆さんに助けてもらいながら町全体で復旧を目指しています。でも、これから毎年このような気象状況が続いて水害が起きやすくなるのかなと不安になります。 防災士でもいらっしゃる二村さんから見て、最近の気象状況に、街づくりや道路整備などが追いついていないと思いませんでしょうか。今の気象状況にどう対応すればいいのか、ご意見をいただきたく質問しました。 漠然とした質問ですが、よろしくお願いします。 」
という質問をいただきました。
まずは、大変な災害に見舞われましたこと、心からお見舞い申し上げます。
8月上旬以降も、度々、まとまった雨が降るようなことや、予想されるようなことがあり心休まらない日が多いと思います。どうぞ、無理のないようにお過ごしいただきたいです。
さて、「毎年、このような気象状況が続いて水害が起こりやすくなるのかな」という不安。体験された方は特に痛烈に感じていらっしゃると思います。ただ、一つ言えるのは近年の雨の降り方を見ると、「局地的な豪雨の可能性」は毎年あるということは否めない気がしています。それが南越前町なのか、敦賀市なのか、はたまた福井市なのか、さらには滋賀県かもしれない。むしろここ数年、福井は豪雨に避けられていた印象すらあります。では、ハード面で、どこまで何ミリの雨に耐えうる街や道路、川、を整備すれば安心なのか。正直、この場で答えを出すことは難しいです。よく、30年~50年に1度の大雨を想定して…とか、100年に1度の大雨に想定して…という枠組みを耳にすることがあるかもしれません。洪水のハザードマップなどをみると概ね1000年に1度の大雨で浸水を想定しています。川でどのくらいの雨が降ることが想定されているのかは、洪水ハザードマップに表記されているので、皆さんがお住いの自治体のハザードマップで確認してみてください。
これまでも、これからも「災害に学び、次の災害に備える」しかないのかもしれません。
一度、大きな災害が起こると、たくさんの人の大切な財産や思い出が奪われます。そこから「日常に戻る」のは並大抵のことではなく、何年かかっても戻りきらないこともあるかもしれません。
でも、これからも一番大切な命を守ることを最優先に行動できるようにしておくことが大事なのではないでしょうか。ハード面を整えるためには時間も費用もかかりますがソフト面、つまり、私たちは、個々に備え、行動することができます。気象の予測は年々進化し、精度も上がってきています。私が教わってきた防災の心構えは「考える」「気づく」「行動する」という3つのKで始まるキーワードです。大雨が降ってきたら、ここはどんな風になるだろうと、自分のこととして被害をイメージする=「考える」。空が急に暗くなってきた、川の水かさが増してきた、などいつもと違う周りの様子に注意する=「気づく」まだ大丈夫だろうな、とつい考えてしまいがちですが、早めに避難する=「行動する」です。
これまでも、防災情報についてお伝えしたことはありますが、今後も、色々な視点から防災について考えていきたいと思います。
先月20日、気象庁から、この冬の見通しが発表になりました。この冬は寒気の影響を受けやすく、冬型の気圧配置が強まる見通しです。北陸地方は、平年に比べ曇りや雪、または雨の日が多くなりそうです。気温は平年並みか低い見込み。降水量、降雪量は、平年並みか多い見込みとなっています。
10月はまだまだ台風への備えも必要な時期ではありますが、大雪になった時、我が家ではどんな被害が考えられるのか具体的に想像しておきましょう。災害は正しく恐れて自分にできることを普段から考えておくことがとても大切です。
※回答の掲載時期は未定です。全てのご質問にお答えできるとは限りませんので、ご了承ください。
二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ
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