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2023/06/16
丸シールアート作品を手掛ける現代美術家、大村雪乃さん(1988-)の近作「Blue Tokyo」は東京・六本木から見たビル群をアニメーションの背景のようにポップな街の風景として表現しています。ブルーの濃淡を使い分けながらビルの輪郭や奥行きを描いた作品。光の再現には反対色であるイエローを採用しました。大村さんは「ブラッシュアップされた実験的な表現の作品」と説明。この作品は現在、福井市美術館で開催されている『大村雪乃展 BEAUTIFUL LIGHTS』で展示されています。(7月9日まで、月曜休館)
アニメやマンガ、映画が好きだった父親の影響で、子供の頃からサブカルチャーに触れる機会が多かったという大村さん。多摩美術大学では油画を専攻。現代アートの裾野を広げようと、身近な素材である市販の丸シールを使ったアート表現に挑戦し、在学中の2012年に発表した「Beautiful Midnight」は「Tokyo Midtown Award」オーディエンス賞を受賞、飛躍のきっかけをつかみます。
代表作となった「Beautiful Midnight」をはじめ、丸シールを使って描いた大都市作品は“奇跡の夜景”と称されるほど、その表現力と高い再現性が評価されています。一方で、実際に訪れた全国各地の名所や観光地、大都市とは対照的な地方や田園地帯など、さまざまな夜景を対象として描いてきた大村さん。その中でさまざまな表現や美しさの本質を追求してきた作品を『大村雪乃展 BEAUTIFUL LIGHTS』では紹介しています。
「自由で、好きな表現に挑戦できるのが現代アートの醍醐味。丸シールアートのコンセプトやアイデアを継続していきながら、新しい可能性や自分が楽しいと思えることを活動の軸にしていきたい」と大村さん。表現の幅を広げるため2022年にカッティングシートのマシンを導入。200色ものカラーバリエーションをオリジナルで製作できるようになり、「Blue Tokyo」では、これまでアクリル絵の具で描いていた背景も含めてすべてカッティングシートを使用した作品となっています。
「夜景を描いていると、すごく写真的に感じてしまうという課題が自分の中にあって、それをいったんデフォルメして、ポップで可愛く表現していきたいというところから行き着いたのが『Blue Tokyo』の色合いや表現です。遠目から見ると夜景なのですが、絵画なので奥行きのない表現とのせめぎあいになります。二次元と三次元を行き来するような作品になったらいいなと思っています」(大村さん)。
最近では日本画の巨匠や風景画の研究に没頭しているという大村さん。「川合玉堂という先生に影響を受けていて、日本画の優れた表現力や捉える技術を少しでも取り入れることができたら、作品の質がものすごく上がると確信しています」。本展で紹介している「Blue Tokyo」や「六甲山―夏」は、そういったエッセンスが取り入れられている作品のひとつ。日本画の卓越した表現力へのリスペクトと、現代アートにおけるシールを用いた風景画への挑戦は本展における見どころのひとつとなっています。
大村雪乃展 BEAUTIFUL LIGHTS ―丸シールアートの世界
【会場】福井市美術館[アートラボふくい] (福井県福井市下馬3-1111)
【日程】2023/06/03(土) 〜 2023/07/09(日)
【時間】9:00~17:15(最終入館16:45)
【休館日】月曜
【料金】一般1000円、大高生 800円、小中生500円
【お問い合わせ】0776-33-2990
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