【気象予報士 二村千津子の風と雲】

梅雨入り・梅雨明け発表のワケは? 夏の見通しも詳しく解説|気象予報士 二村千津子の風と雲

2023/07/01

こんにちは。
気象予報士の二村です。

ことしの北陸地方は、例年と同様6月11日ごろに梅雨入りしたとみられるという発表がありました。例年だと、7月下旬まで雨の季節。上手に付き合って、大雨の時には、災害を避ける行動を起こして、安全に夏を迎えましょう。

さて、今回は、そんな梅雨入り・明けに関しての質問が届きました。

越前市 たかっさん(男性)より

「なぜ、梅雨入り、梅雨明けは北陸などの地方単位なのですか?県ごとにだすのは無理があるにしても、新潟と福井では差がありすぎ」

おっしゃる通りですね!私も、個人的にはまったく同感です。
以前、東京の番組で気象キャスターをしていたころ、全国の週間予報をお伝えする際、当初は、新潟の週間天気をお伝えしていました。でも、北陸地方の天気を考えた場合、「新潟」と「北陸3県」という傾向に分かれることもしばしばあり、「金沢」の天気に変更してお伝えする時期がありました。ちょうど北陸新幹線が金沢まで開通したこともあり、週末などは、需要があるかと思ったからです。ところが、しばらくして(多分ひと月も経っていないかと)、新潟県の視聴者の方から、週間予報で金沢があって新潟がないのはおかしいのではないかというご指摘がありました。実際、北陸地方で唯一の政令指定都市ですからね。おっしゃることも、もちろんわかります。それから、新潟に戻しました。
たかっさんのおっしゃる通り、新潟と福井は東西に離れすぎているんですよね。新潟の最も北の村上市と、福井の最も西の高浜町との距離は直線距離でおよそ460キロもあります。

なぜ、北陸地方がこの4県になったのか、気象台の方に質問したところ、古い資料を振り返ってくださいました。
そのお話をざっくりとまとめると、もともとの北陸道地方という区分に準じたようです。この北陸道が若狭、越前(福井県)、加賀、能登(石川県)、越中(富山県)、越後、佐渡(新潟県)で構成されていました。これが北陸地方が、この4県になった経緯のようです。

とは言え、460キロも離れた地域を対象に「梅雨入り」「梅雨明け」の発表というのはちょっと無理があるかもしれませんね。それでも梅雨入り、梅雨明けの発表が行われるのはなぜでしょう。それぞれ防災情報の意味合いがあります。梅雨入り、梅雨明けの発表は、「○○ごろに梅雨入り(明け)したとみられる」という風に、表現的には少しあいまいな文言で発表されます。
というのも、「きょうから梅雨です」「きょうから夏です」と、はっきりと境があるわけではありません。これからは、これまでよりも雨が降りやすく、大雨による災害が起こりやすいシーズンに入りましたよ。備えておきましょうね。という注意喚起。そして、「梅雨明け」は、夏の猛烈な暑さにいっそう注意が必要だよ、という呼びかけになります。地方ごとに発表される情報には、少し「ズレ」を感じることもあるかもしれませんが、幅を持たせた情報だととらえて、日々の気象情報に注目するようにしていただけるといいと思います。

そして、もう一つ、質問にお答えしますが、なんと、パリから届きました!

パリにお住いのフランソワさんより

「こんにちは。私はフランスに住んで4年になりますが、まもなく故郷の福井に戻ります。二村さんの天気予報をまた見られるのが本当に楽しみです。フランスに限らず、ヨーロッパの冬は毎日どんよりして、鬱病になる人も多いです。でもこれからの季節はカラっとして最高、バカンスでたっぷり太陽を浴びて鬱を吹き飛ばすんです。なんだか福井みたいです。冬が終わった後の桜の季節に元気が出てくるような。日本の気象予報士さんは、海外の気象についても学ぶことはあるのでしょうか。エルニーニョとか。
さて、私が帰国するのは夏ですが、今年の福井の夏はズバリどうなりそうでしょうか。暑いのは同じでも、ヨーロッパはカラっとしているので、日本の蒸し暑さにやられてしまいそうです。よろしくお願いします。」

私の天気予報を楽しみにしてくださって、とてもうれしいです。頑張ります。
海外で異常気象が起こると、その解説を求められることがあるので、その原因を調べることがあります。エルニーニョ現象やラニーニャ現象をはじめとして、いま、上空の風の流れや海面水温がどうなっているか…などです。

現在、まさにエルニーニョ現象が発生していて、この秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高いという見通しです。エルニーニョ現象が発生している時の日本の夏の天候の傾向は、気温は、東日本は平年並みか低め、降水量は東日本の日本海側はやや多い日照時間は東日本の日本海側は平年並みか少ないという傾向が見られます。

それを踏まえて、3か月予報でことしの北陸地方の夏の傾向をみてみましょう。

7月は気温は大きなばらつきはありませんが高い確率40%、8月は平年より高い確率が50%、エルニーニョ発生中ですが、そこまでの低温予想ではありません。むしろ、梅雨明け後の厳しい暑さに注意する必要がありそうです。

そして降水量は7月は平年並みか多い確率が40%、8月はほぼ平年並み。こちらは、エルニーニョの影響で多雨傾向と言えそうです。7月前半は梅雨本番を迎える時期です。そして7月後半は、本来梅雨明けを迎える時期ですが、平年に比べ、晴れの日が少ない見通しです。

梅雨末期に向けて、大雨には警戒が必要です。カラッとした夏を体感したあとの、フランソワさんにとっては、体にこたえる夏になるかもしれません。
福井の夏に慣れ親しんでいる皆さんも、7月の蒸し暑さ、そして、8月の例年以上の暑さに備えて、しっかりスタミナをつけておきましょうね。

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※回答の掲載時期は未定です。全てのご質問にお答えできるとは限りませんので、ご了承ください。


二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ



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