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2023/07/21
創業240年、その先を築く気鋭の菓子職人。
6月2日、福井市の老舗和菓子店『昆布屋孫兵衛』が長い休業を経て再始動した。大きな庇が目をひく新店舗では、17代目の昆布智成さんが菓子づくりに励む。東京やパリの有名店で腕を磨き、帰福直前までシェフパティシエを務めた東京・南青山の『UN GRAIN』では、小さな菓子に技術と感性を詰め込む「ミニャルディーズ」で人々を魅了した。
10代の頃から店は継がないと決めていた昆布さんだが、独立を考えるなかで、ある経営者に言われた「歴史はお金では買えない」という言葉の意味を考えるようになったという。「自分のお菓子が東京で受け入れられていくのは楽しかったですし、業界の第一線を走る充実感もありました。だけど、より難しくて挑み甲斐のある環境はどこにあるのか見渡したとき、その場所が福井にあった。僕は和菓子屋は継げないけれど、菓子屋は継げる。それなら歴史をつなぎながら、どこにもない形の菓子屋を作ってみようと思いました」。
和の雰囲気をまとったモダンな店内にはシンプルなロングカウンターが据えられ、いちご餅やどら焼きなどの和菓子の販売のほか、5席のイートインスペースで皿盛りのデザート「アシェットデセール」を振る舞う。納得できる食材が揃い次第、持ち帰り用の洋菓子も提供する予定だ。
「父の仕事を受け継ぎつつ自分のお菓子もブラッシュアップしていき、双方をミックスさせて新しいお菓子を生み出せたら。時間はかかるでしょうが、和洋折衷の概念を超えた、和菓子でも洋菓子でもない、昆布屋孫兵衛だからできるお菓子づくりを目指していきたいですね」。
今はまだ手探りの状態だと言うが、店の建て替えや食材探しの過程で福井の誇れるものづくりに触れたことから、越前漆器や越前和紙などの伝統工芸とのコラボレーションにも意欲を見せる。「お菓子とは違う分野のほうが、いろいろな視点からお互いの魅力を知っていく、かけ合わせの可能性が楽しめて好きなんです。伝統工芸の方と一緒にプロダクトを作ったり、僕の人脈を活かして東京でやるようなイベントを企画したり。ここから全国や世界に発信していける何かを福井の人と一緒に仕掛けて、こんな和菓子屋のやり方もあるんだということを見せていけたら面白いのではと考えています」。
創業240年の歴史を受け継ぎ、伝統と革新の融合に挑む。昆布屋孫兵衛17代目の動きに注目が集まる。
昆布屋孫兵衛
【住所】福井県福井市松本2-2-6
【電話】0776-22-0612
【時間】Instagramで確認
【休日】火・水曜
【席数】5席
【駐車場】11台
【SNS】Instagram
(月刊URALA STYLE 7月号より抜粋)
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