【ハナ金夜ふかし倶楽部】

38年ぶりの日本一へ！福井の虎党酒場『味とら』店主が語る日本シリーズのキーマンとは｜味とら

2023/10/23

日本シリーズまで残りわずか！というわけで、福井の虎党（阪神ファン）にはお馴染みの虎党酒場『味とら』を直撃してみることに。外観から店内まで阪神一色に染まるこちらのお店は1997年の創業。前回の日本一といえば、ランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布が打ちに打ちまくった1985年が最初で最後なので、『味とら』が阪神の日本一を見届けたことは一度もないのである！

店内に飾られる応援メガホンの数々。店主・齊藤さんが長年かけて集めたコレクションで、応援歴の長さが窺える

「ここまで来たらもう日本一しかないでしょう。『味とら』もこれまでずっと頑張ってきたので（日本一を達成できたら）最高のご褒美になると思います」と語るのは店主の齊藤秋彦さん。根っからの阪神ファンで、他の居酒屋やチェーン店にはないオリジナリティのある店を作ろうとして誕生したの『味とら』だった。「福井はどうしても巨人ファンのほうが多くて、テレビ中継も巨人の試合がほとんどでしたからね。それで、阪神戦が映るチャンネルを契約してお店のテレビで観戦できるようにしたら阪神ファンの間で口コミが広がって、お客さんが集まるようになりました」。

統計サイト『J-READ』が発表している「最も好きなプロ野球球団勢力図」では、各都道府県で最もファンの多い球団を知ることができる。2008年度および2018年度のデータでは福井県はオレンジ色に塗りつぶされており、つまり巨人ファンが最も多いとされている。

福井に限定されず、全国的な人気を誇る巨人。1960年代には王貞治、長嶋茂雄を擁し9年連続リーグ優勝（V9）を達成。当時の社会は「巨人・大鵬・卵焼き」と形容された。齊藤さんが言う通り、福井県内のナイター中継ももっぱら巨人戦が中心だったわけで、巨人を応援する文化が必然的に根付いている。自分の周りの阪神ファンと言えば高校時代の国語教師（背広の裏地に「六甲おろし」の歌詞を刺しゅうしていた）くらいで、福井の知り合いのほとんどが巨人ファン。「親の影響で巨人ファン」という人が多いから、世襲的に巨人が応援されているのかもしれない。

そんな福井のど真ん中で、福井の虎党たちの憩いの場として愛され続けるのが『味とら』なのだ。阪神でエースとして活躍した能見篤史氏や藪恵壹氏、前阪神監督の矢野燿大氏など実際にこのお店を訪れた選手も多く、店内で撮った記念写真はお客さんも見ることができる。独走状態のままリーグ優勝を決めた9月14日には、立ち見のお客を含め40人を超える虎党たちが集結した。

往年の名選手たちが『味とら』を訪れた。店内には藪恵壹氏（阪神、アスレチックス他）の直筆サインボールが飾られている

大人気のおでん（各種180円）を味わいつつ、好きなお酒を片手に試合を見守るのが『味とら』の日常風景。「おもしろセ・リーグドリンク」（各550円）はセ・リーグ6球団のチームカラーを連想させる酎ハイを味わうことができる人気メニューで、阪神の場合は虎をイメージしたレモンハイとなっている。

一風変わった「おもしろセ・リーグドリンク」（各550円）。阪神ファンだけでなく、セ・リーグ他5球団のファンも楽しめるお店だ！

日本シリーズの対戦相手は同じく関西の人気球団オリックスで、「阪神vsオリックス」の組み合わせは史上初。甲子園球場（兵庫県西宮市）と京セラドーム大阪（大阪府大阪市）の距離は15.5km。阪神電車を使えばそれぞれの最寄り駅から最速で15分、車でも約20分で到着するという、もはや移動日すら必要ないように思える“ご近所対決”となるが、熱気渦巻くのは『味とら』も同じ。齊藤さんに日本シリーズのキーマンを尋ねたところ、近本光司外野手の名を挙げた。「先頭打者がヒットや四球で出塁すれば、チームに自然と勢いがつくでしょう（今季出塁率リーグ3位）。脚も使えますし（今季28盗塁で盗塁王）、ランナーがいる場面で打席に立てば打点も稼ぐ（今季得点圏打率リーグ1位）。期待してます！」。また、二桁勝利を記録した村上頌樹投手、大竹耕太郎投手、伊藤将司投手を中心に、両リーグ最小の与四球「315」をマークした盤石の投手陣にも目を細める。「1985年のバース、掛布、岡田の頃みたいに攻撃的な打線も観ていて楽しい。でも、今年のようなピッチャー中心の“守りの野球”ってのも立派ですよね！」と話してくれた。