【気象予報士 二村千津子の風と雲】

「震度7」に「大津波警報」自分は命を守れたか? 改めて考えました|気象予報士 二村千津子の風と雲

2024/02/01

こんにちは。

気象予報士の二村千津子です。

能登半島地震。2024年のスタートはとんでもない災害に見舞われてしまいました。
被災された皆さんに日常が戻るのはまだまだ先かもしれませんが、少しずつでも心と体が休まる時間が増えることを願ってやみません。

大きな地震が起こるたびに、何にもかえがたい無力さを感じます。
それは、気象災害とは全く別のものです。気象災害で人の命が奪われた時は「自分が伝えたかった情報が伝わらなかった無力感」のようなものを味わうことはあります。
でも地震は、もっと太刀打ちできない絶対的な力で私たちに襲いかかります。
まさか元日に震度7の地震に見舞われるなど、だれが想像できるでしょうか。そして、あっという間に多くの命を奪います。これって備えていても、ひとたまりもないのでは…と感じてさえしまいます。でも、こうした現実を目の当たりにした時こそ、次に立ち向かうきっかけになるのではと思っています。どんな備えができるでしょうか。

もちろん、ハード面を整えることも必要不可欠です。具体的には耐震補強ですが、家全体を補強するのは簡単なことではありません。寝室など一部だけでも補強する、という方法もあるようです。そして、家具の転倒防止は、正しく設置すること。建物の補強が難しければ、倒壊しても身を守れるベッド、などもあります。
自分のライフスタイルや家族構成などで、効果的な対策が変わってきます。ぜひこれを機に、もし震度7の地震に見舞われた時、自分はどうするかを考えてみましょう。

そして、もう一つが津波です。元日に福井県に“津波警報”が発表されました。結果的に、福井県では敦賀港で午後8時28分に0.5 メートル 、50センチの津波を観測しました。
この時、県内に予想されてされていた津波の高さは最大3メートルだったので、「全然だったな」と思われた方もいらっしゃったかもしれません。でも50センチの津波は怖いです。

今回は津波のメカニズムや性質をお伝えします。

津波はおもに地震が起こることで発生します。(そのほか火山噴火や海底の地すべりがきっかけに起こることもあります)

①地震が起こって、海の底が動きます
②海の底が動いたことで海水を押し上げて、波が起こります
③海の表面から海の底までの水の塊が波となって四方八方へ広がります
④そして、海岸に向かって津波が押し寄せてきます

表面から底まで動くというのがポイントです。そして、津波には海が深いほど速く伝わり、水深が浅くなるほど遅くなるという性質があります。そうなると、深い所から浅い所へいくにつれ、浅い方でスピードを落とした波に、後ろから速度の速い波がおいつくので、水深が浅くなるほど、波の高さが高くなる、という現象が起こります。ただ、波が遅くなるといっても、走って逃げられるスピードではありません。

津波のスピードは、水深5000メートルの段階では時速800キロとジェット機並み。500メートルで時速250キロと新幹線並み。100メートルで時速110キロとチーター並み。水深10メートルで時速36キロとかなり速度を落としますが、それでも乗用車並み。私たちが全速力で走っても逃れられるスピードではありません。津波から命を守るためには、津波が海岸に近づいてくるのを見てから避難を始めたのでは間に合わないということです。大切なことは、海岸付近で地震の揺れを感じたり、津波警報が発表されたら、実際に津波が見えなくても速やかに、迷わずに避難することです。

では、具体的な津波の高さと想定される被害をみていきましょう。

高さ30センチの津波が押し寄せたら、私たちはどうなるでしょう。大人でも立っていられないほどです。50センチになると人は流され、1メートルは車ごと持っていかれます。人はほぼ助からないというデータもあります。2メートルだと木造家屋は全壊と言われています。50センチの津波でも決して楽観はできないということを覚えておきましょう。
津波からの避難は、すぐに海から離れ、ただちに高い場所を目指し、車を使わないことが大切です。車が渋滞したり、途中の道路が地震の影響でどうなっているかわからないからです。

今回、大きな地震が元日の、これからお夕飯、という時間に発生しました。台風や大雨ももちろん人の命をうばう恐ろしさがありますが、地震や津波は本当にいつやってくるかわかりません。大げさではなく、迷わず行動に移せるかどうかが、生死を分けることになるかもしれない、と思っています。能登半島地震が、改めて地震や津波についての知識を深める機会にしたいと私自身も強く思いましたし、皆さんにもそんな機会であってほしいと思いました。

いつもより長文になってしまいました。来月は春を先取るような、明るい話題をお伝えできるといいなと思います。

↑画像をタップ!

※回答の掲載時期は未定です。全てのご質問にお答えできるとは限りませんので、ご了承ください。


二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ



日々URALAからのお知らせをLINEで受け取れます!




#コラム#連載

  • ツイートするツイートする
  • シェアするシェアする
  • 送信する送信する