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2024/05/23
海外から高く評価される、福井出身の現代アーティスト・三澤亮介さんの北陸初の個展「Voyage」が現在「西武福井店」にて開催中です。写真家として活躍してきた彼が現代アーティストに転身した理由や自身が手がける作品についてなどインタビュー。
――前回、日々ウララでインタビューさせていただいたのが2020年になります。その時は写真家として活躍されていましたが、美術家に転身されたのが2020年と聞き、驚きました。美術家に転身された経緯について教えてください。
写真家としての活動をもう少し広げて、現代アートという文脈の中で作品を発表した方が、作品を発表する際に、メディアやメディウム(素材)に捉われず、作品の発表を行なえたからです。より自分が仕事をやりやすい場所に移行したイメージです。
そこから2年ほどはデジタルソフトでの作品を中心に、写真家としての活動や手法を活かした制作を行なっていました。しかし、同年代の方とのグループ展に参加していく中で、絵の具を使った絵画作品の力に惹かれ始めて。そのタイミングで、2022年初頭に帝国ホテルにあった現代アートギャラリーでの個展が決まり、これが僕にとって初めての現代アートギャラリーでの個展になりました。
改めてデビュー的な意味合いもあったので、ギャラリーのオーナーと話をし、この個展を機にペイント作品を発表し始めた経緯があります。その際にギャラリーのあり方や、ギャラリーとの仕事の進め方なども勉強させてもらいました。なので「絵」を描き始めたのはここ2~3年でしょうか。
――もともと絵は得意だったのでしょうか?
好きでしたが決して上手な方ではなかったです。でも昔から自身のヴィジュアル制作への感覚には自信を持っていたように思います。
少しデザイン的な視点かもしれませんが、雑誌や広告のデザイン、漫画やアニメの作画に対して、これはイケているイケていないみたいな視点でヴィジュアルを勝手に判定していました。今考えると「何様だよ」と思いますが、子どもの頃はそんなものなのかも、とも思います。
――三澤さんが描く作品の特徴であったり、コンセプトがあれば教えてください。
これまでデジタルソフトを使って、アナログとミックスして作ってきた作品では「固定概念をアップデート」するというコンセプトを掲げてきました。
一方で最近は、下書きもせずにキャンバスにいきなり描き始めて、そこから画面とのコミュニケーション、対話で描いていくという、何とも古典的で絵画チックな方法でも描いたりしているので、自分自身でもまだ分かりきっていません。
変わり続けるし、自分自身も更新し続けて、変化を恐れないようにしています。自分から何が出てきてもそれを受け入れてもらう他ないというか。
――どういった時に、描きたいものがひらめくのでしょうか。
緊張と緩和の間にあるふとした瞬間です。普段から小さいスケッチブックを持ち歩いていて、そこに線を描きためたりします。他にも面白そうな形があると写真を撮ったりします。そういうものを持ち込んでアトリエに行くわけです。でも下書きやきちんとしたスケッチはないので、キャンバスの前に対峙した時は何もそこに持ち込めないんです。
テストや試合の時みたいな感覚でしょうか。練習や準備はしても、いざ本番は何も持っていけない…みたいな。そういった緊張感がキャンバスの前に立つとあるんですが、その緊張が少し解けた瞬間に、フッと描きたい形や追いたい線が見えてくるような気がします。
少なくとも最近はそうで、これを自由にコントロールしたり、使いこなせるようになりたいです。疲れるんですが、鍛錬ですね。
――美術家に転身されて以降、さまざまなメディアから取材を受け注目を集めていますが、ご自身ではこのスピードをどう感じていらっしゃいますか? また、注目を集める理由はどこにあると思いますか。
割と早い方だと思います。でも明確な基準がある世界では無いので、純粋にスピードが早いか、普通かはイマイチわかりません。理由はバックボーンが珍しいことと、制作方法が時代にマッチしていて、多彩だからでしょうか……。
あとは一重に関わってくれている周りの方々のおかげだと思います。いつもありがとうございます。笑
――2022年は台湾、2023年はギリシャやニューヨークで個展を開き、また、各国のアートフェアにも出展されていますが、海外の方の反応はいかがでしょうか。
日本が一番ですが、やはりアメリカやヨーロッパよりもアジア圏の方が反応はいいです。
アジアの方は展示のたびにメッセージやDMをくれるので、応援してくださっている感覚がして嬉しいです。その輪が少しずつ広がったらいいなと思う次第です。
――今回の地元福井で初の個展を西武福井店で開催されます。西武の思い出は?
自分は割と駅から近くに住んでいたので、西武にはよく行っていて、思い出は数え切れません。
でも強いていえば子どもの頃、家族で映画を見にいったことが一番印象的です。その時に見た手塚治虫先生原作の「メトロポリス」には衝撃を受けました。少なからずとも今の自分にも影響を与えていると思います。
――個展を開くことになった経緯を教えてください。
親戚が福井駅前でブティックを経営してまして、そこに僕の作品を飾っていただいています。今回、個展を担当された美術商の方が、そのお店のお客様で、僕の作品を見て、知ってくださいました。
その後、若手アーティストを紹介するTV番組へ繋いでくださったり、個展に足を運んでくださって、作品もコレクションしてくださいました。そういう経緯があり、その方から「西武福井店で個展をしませんか?」というお話を頂き、実現する運びになりました。
――個展のタイトルを「Voyage」と名付けた理由を教えてください。
松任谷由美さんが好きで、アルバムのタイトルからサンプリングしました。「航海」という意味が、自分の上京してからの13年に重なる気がして。
――福井のみなさんにこの個展を通じ、伝えたいことはありますか?
初めての個展ですし、地元とはいえ僕のことを知らない人の方が多いと思うので、自己紹介的な意味合いと感謝を伝えたいです。あとは、この5年間で作ってきた作品の変遷を紹介しているので、こんな変化が一人の人間の中にあるのか、という観察的な視点でも楽しんでもらえたら幸いです。
――最後に福井のみなんさんにメッセージをお願いたします。
最後まで読んでくださってありがとうございます。5月25日(土)・26日(日)は、僕も会場におりますので、お会いできたら幸いです。ぜひ足を運んでみてください。よろしくお願いします。
三澤亮介(みさわりょうすけ)
1992年生まれ、福井県出身。立教大学映像身体学科卒業。美術家。メディアパラドックスという独自の手法を提唱している。「固定概念のアップデート」をコンセプトに、アナログとデジタル、写真と絵画を制作の中で横断する。主な個展に「Tracing the night」(333 gallery / 台湾)、「NOH」(HOFA gallery / ギリシャ)、「Project the Process」(IRRITUM gallery / ニューヨーク)、グループ展示に「SHIBUYA STYLE vol.15」(渋谷西武美術画廊)、「CULTURE ART PARK 2023」(代官山蔦屋書店)など。渋谷駅をジャックした都市型アートプロジェクト「YOU FEEL」にも選出される。
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三澤亮介展「Voyage」
【日程】会期中~2024/6/4(火)
【会場】西武福井店 5F 美術画廊(福井県福井市中央1-8-1)
【時間】10:00~19:30
※作家在廊/25日(土) 終日、26日(日) 10:00~15:00
【休日】会期中無休
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