【金津創作の森】福井各地で土を採取して絵の具に。生命のエネルギー溢れる作品を展示。「淺井裕介展 星屑の子どもたち」

2024/06/12

この星から生まれたものが重なり合い、形となって表れる。

展示室の床のほとんどを覆う巨大泥絵は、靴を脱いで作品を鑑賞することができ「足から何かを感じてもらえれば」と淺井さん
8月25日(日)まで『金津創作の森』にて開催中の淺井裕介展「星屑の子どもたち」。敷地全体に100点を超える陶器の立体作品や泥絵、抽象絵画などが展示中。6月14日(金)~27日(木)はマスキングテープを提供した「mt」による展示・販売が福井県で初めて開催される。



美術作家・淺井裕介は思想、造形、コンセプト、どれも捉えられないアーティストだ。土や石、水、テープなどの身近な素材を使い、抽象画、陶芸、ドローイング、マスキングプラントなど、展示スペースが狭くなるほどの作品を圧倒的な速さで創り出していく。インタビューをお願いしたその日も、床一面に描かれた巨大な作品の小さな空白に、一心不乱に絵を描き込んでいく。何かに憑依されているような、アートとは何かという問いを体現していくかのような淺井さんに、今展への想いを語ってもらった。

福井各地で土を採取して絵の具に。

『金津創作の森』から淺井さんへ企画展の依頼があったのは6年前の2018年。今企画展では、代表シリーズの「泥絵」、配置を変えても繋がる組み合わせの絵、鹿の血で描かれた絵などを展示。どれも作品から生命の痕跡が立ち上ってくるかのようなエネルギーで溢れている。

淺井さんが初めて福井を訪れたのは2022年。「泥絵」の制作に必要な土を採取するためだ。スタッフと共に足羽山や越前陶芸村、三方五湖などをまわった。
「福井の土は黄色っぽくてカラフル。これは大陸に近いからなのかもしれません。日本は島国で、温泉もあり、地震の多い地域なので、他の国と比べると土地土地で土の色が違うんです。例えば北欧だとグレーっぽく、色数も少ないんですよね」。
採取した土はふるいにかけ、粒子を細かくして絵の具にしていく。作品から何かが立ち上ってくるような印象があるのは、土そのものを使っているからかもしれない。

「今回、一緒に制作してくれるボランティアも募集し、会期日数と同じ105個の花を描きました。その作品はエントランスに飾るんですが、一日1つ消していきます」。翌日見ると消された跡だけが残っている。その痕跡がより存在を大きくし、また消される花がその日一日は主役であるという「一瞬の輝き」も作品の一部になるという。

滞在から生まれた作品も展示。

企画展のタイトルは『星屑の子どもたち』。淺井さんが制作で使用するナイロンの筆や絵の具を入れるプラスチックのコップも、さかのぼっていけば地球上の何かからできている。「身のまわりにある物体って、ある意味この星の子どもだと僕は思うんです。当たり前に存在するアイテムも想像力を膨らませることで、見え方も変わります。想像することを忘れないでほしいですね」と淺井さん。

金津での滞在制作をスタートさせたのは3月中旬。福井がようやく春らしくなってきた頃だ。「森というか、島で暮らしているような印象。宿舎から工房まで徒歩5分くらいなんですが、ゆっくり時間をかけて往復していました。『創作の森』は手入れされた部分と野生のままのところがあって、春の芽吹きを感じられたり、夜は星空がキレイだったり、制作に集中できる快適さもあって、元々作品を創るのは早いほうなんですが、予定にない作品を創り始めたりもしました」。

自身が思う、この星の物語。

今回展示される作品からは素材の質感や匂い、環境など身近な日常が認識される。命を持つもの、持たないもの、全てがこの星から生まれてこの星に還るという信仰に近いような淺井さんの世界観はどのようなものなのだろうか。

「いろんな土地に残された言い伝えって、大木やヘビ、龍とか共通するモチーフがあるんですよ。そういうのをリサーチして描いていると、文明というかバックボーンに近づいていくような感覚があります。狙うのではなく、描いていくうちにいろんな要素が重なり合って形になって表れるような。始まりも終わりもなく連綿としたもの」。その瞬間は後になってから気がつくこともあり、絵を通じてその土地の根底を流れる魂のような物に触れたと感じた時、祝福されたような気持ちになるのだという。

2カ月の制作期間を淺井さんは「ずっと作品を創り続けていたくなるような環境と時間でした」と振り返る。特に気に入っていたのは夕方少し前の時間帯の下の池の雰囲気。「光の加減が神がかっていて。そこに作品を展示しているのでぜひ、森を巡りながら見てほしいです」。

美術作家 淺井裕介
あさい・ゆうすけ 1981年東京都生まれ。美術作家。土、水、埃、小麦粉、テープ、ペンなど身近な素材を用い、ドロー イングや抽象画、泥絵などあらゆる場所に奔放に絵を描き続けるほか、陶芸の立体作品やマスキングプラントなど大きさや形にこだわらない、終わりのない作品を創り続ける。2019年、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。国内のみならず、韓国、アメリカ、中国などからも招待され、その土地を感じる作品を創り出している。
Instagram:@maskingplant

アートは”かがやき”北陸新幹線福井開業記念 淺井裕介展「星屑の子どもたち」
【日程】開催中~2024/8/25(日)
【会場】金津創作の森(福井県あわら宮谷57-2-19)
【電話】0776-73-7800
【時間】10:00~17:00(最終入場16:30)
【休館日】月曜(祝日の場合は開館、翌平日休館)
【料金】一般600円、65歳以上・障がい者300円、高校生以下・障がい者の介護者(当該障がい者一人につき一人)無料
【HP】あり
【SNS】@kanazforestcreation



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