2024/08/30
岡倉天心の愛弟子で、日本画の改革に生涯をささげた菱田春草の企画展が『福井県立美術館』にて開催されます。会期は9月15日(日)から11月4日(月)まで。
今展のテーマは、「不朽の名作〈落葉〉誕生秘話」。幅約7メートルの屏風に幻想的な山林の風景を描いた代表作〈落葉(おちば)〉を起点として、夭折した春草の短くも濃い画業全体をたどる構成となっています。
春草の〈落葉〉は県立美術館の購入第一号作で、同館はこれまでもたびたび展示を行ってきました。そんななじみ深い県立美術館の〈落葉〉を、今展では春草によって同時期に制作された他の〈落葉〉4点とともに展示。ひとつの画題を完成させるまでの試行錯誤の過程をうかがい知ることができます。
特に注目したいのは、重要文化財に指定されている3作目の〈落葉〉(永青文庫蔵)。晩年、眼病を患いつつも、第3回文展に向けて試作を重ねた春草が最終的に出品した重要作品です。当時の日本画の題材としては珍しかった名もなき自然を描き、西洋画の遠近法を取り入れた本作品は激しい論争を巻き起こしながらも最高賞を受賞。日本画の改革に大きく寄与しました。
実はこの文展出品作は、最後に描かれたとされる県立美術館所蔵品と同じ規格で制作されたもの。学芸員の原田さんは、「ぜひ両方とも実際に見て、どういった違いがあるか比べてみてほしい」と話します。
これらの作品は六曲一双という大画面で、それぞれ単体で見ても迫力のある大作です。「7メートル近くある作品を歩きながら見ていただくと、本当に雑木林を歩いているような感覚に陥ります。少し離れてみた時の、屏風絵特有の空間性も魅力です。他方、木肌や小鳥など、非常に細かく精密に描き込まれているので、そういった部分はぜひ近寄って見ていただければ」と原田さん。
会期は前期と後期に分かれ、前期(9月15日~10月14日)には重要文化財の〈落葉〉を含む連作5点が揃って展示されます。この5点が一堂に会するのは実に10年ぶりで、30日間に及ぶ長期展示は全国初とのこと。他にも、春草が〈落葉〉制作に向けてスケッチを描き溜めた写生帳や、影響を受けた琳派(尾形光琳)の屏風絵などの展示もあり、盛りだくさんの内容となっています。
会期終了直前の11月2日(土)には、好評のナイトミュージアム(春草ナイト「アートと音楽と」、要申込)も開催されますよ。この機会に、春草の日本画の色褪せない魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
菱田春草展 不朽の名作〈落葉〉誕生秘話
【日程】前期:2024/9/15(日)~10月14日(月・祝)、後期:2024/10/17(木)~11/4(月)
【会場】福井県立美術館(福井県福井市文京3-16-1)
【電話】0776-25-0452
【時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)※9月15日(日)は10:00~
【休館日】10月15日(火)、16日(水)展示替
【料金】一般1400円、高校生900円、小中学生600円、未就学児無料
【HP】あり
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