日々URALA(ウララ)

かこさとしが見つめた「世界のすべて」 担当学芸員に聞く生誕100年記念展

(写真奥)「生命の発生と進化」原画 加古総合研究所蔵/1980年、夏休みの子ども向けセミナーのために描かれた絵図 

「目立たない存在も省略しない」――原画から見える、かこさとしのまなざし

「恐竜時代でも恐竜だけでなく、食べられていた小生物や植物も等しく描く。目立たない存在も省略しないのが、かこさんの姿勢なんです」

そう語るのは、福井県ふるさと文学館で開催中の「かこさとし 私の本のはなし-あそびのはなし えほんのはなし かがくのはなし-」を担当する学芸員の尾崎秀甫さん。越前市出身で、生涯に600点以上の作品を残した絵本作家・かこさとしの創作の根底には、「物事を一部分ではなく、全体から捉える」というまなざしがあったという。

「宇宙進化地球生物放散変遷総合図譜(生命図譜)」複製原画 加古総合研究所蔵/宇宙の始まりから現在まで、宇宙と生命の歴史を1枚にまとめて描いた図譜の下書き

その姿勢を象徴するのが、北陸初公開の「宇宙進化地球生物放散変遷総合図譜(生命図譜)」だ。宇宙や地球の誕生から生命の進化までを一望しようとした壮大な下絵で、絶滅した生物や目立たない植物まで描かれている。

「生命の過去の歴史を全部知った上で、ようやく未来が見えてくる。それがかこさんの考え方だったと思います」

未完の下絵には、ホワイトによる修正や赤字での書き直しも残され、徹底して考え続けた創作の跡が見て取れる。

「生命図譜」を間近に見る。宇宙の始まりから現在まで、宇宙と生命の歴史を1枚にまとめて描いた大作だ

同じく北陸初公開となる「生命の発生と進化」原画は、かこさんが自ら子どもたちの前で語り聞かせる「生きた教材」として描かれましたもの。科学絵本『地球』や『海』などでも系統樹を繰り返し描き、命の尊さと繋がりを伝えてきたかこさんの貴重なオリジナル資料となる。

その「全体を見る」視点は、『からすのパンやさん』などの「もの尽くし」の制作手法にも通じている。同作では、無数のパンや道具を描くことで、「世界は多様で、自分一人が中心ではない」ことを子どもたちに伝えた。

また、科学絵本『道具』では、自動車を構成する部品や道具を、驚くほど細かく分解して描いている。東京大学工学部応用化学科で学んだ「科学者」としての視点。物事が何からできているのか、どのようにつながっているのか。全体を知ることで、そのものの姿が見えてくる。

「からすのパンやさん」複製原画 加古総合研究所蔵/多彩な形のパンが描かれる。かこさんが描く、もの尽くしの魅力がつまったシーン

一方、戦争への想いを刻んだ絵本『秋』では、18歳の勤労動員中に目撃した戦闘機の墜落や、戦死した医師との記憶を描写。1980年代には「今の時代に合わない」と出版されなかった作品だが、没後の2021年に刊行され、今回、原画を初公開する。

「自分の体験だけでは一方的になる。経済など、戦争が起こる様々な原因を理解して総合的に描かなければいけないと考えていました」(尾崎さん)

「秋」第14場面 原画/かこが大好きだった秋に起きた悲しく凄惨な出来事を、戦争への怒りや憤りとともに描いた作品

生誕100年を迎えたかこさんの企画展について、尾崎さんは「『生命図譜』や『秋』など、かこさんが大切にしていたことを知ることができる内容となっています。ぜひ会場に足を運んでください」と話しています。

子どもを楽しませながら、世界の成り立ちや人間社会の問題まで見つめ続けたかこさとし。その妥協のない創作姿勢を、貴重な原画から感じ取ることができる展覧会は 福井県ふるさと文学館 にて、9月13日(日)まで。

福井県ふるさと文学館 夏季企画展 かこさとし生誕100年記念 かこさとし 私の本のはなし
【会場】福井県ふるさと文学館(福井県福井市下馬町51-11)
【日程】7月11日(土)~9月13日(日)
【電話】0776-33-8866
【時間】9:00~19:00(火~金曜)、9:00~18:00(土〜月曜、祝日)
【休館】7/13、7/16、8/27、8/31、9/7
【料金】観覧無料
【HP】あり 







日々URALAからのお知らせをLINEで受け取れます!

モバイルバージョンを終了