【炎上エンジョイ!】

犠牲について考える。

2019/09/30

僕は牛や豚や鳥などを食べる。それらは僕が生きるための犠牲になってくれてる。しかしそれは生きるための犠牲なんてのはきれいごとで食べなくても生きていける。なので「おいしいものを食べて幸せを感じるため」の犠牲にしている。しかし38年間食べ続けていると犠牲にしてるという感覚はない。いや初めからその感覚はない。牛であろうが豚であろうが鳥であろうが僕はそれを「飯」と呼ぶ。そこには「犠牲にした命」ではなく「飯」が存在する。

僕はお笑い芸人といわれる仕事をして生活している。僕は例えばタクシーに乗っていて運転手さんが変わった人ならばそのあとの舞台ではそれをネタにして笑いをとる。その話をしたときに僕はタクシー運転手の名前を知らないし知ってたとしても名前を舞台で呼ぶわけにもいかないので「タクシー運転手が」と言う。そうなれば客席にいるかもしれない関係ないタクシー運転手、もしくはその親族がタクシー運転手みんながそうだと思われたらどうしよう、と思うかもしれない。しかし僕は笑いのためにそれらを犠牲にし、その話をする。

僕は福井県出身の村本家の三人兄弟の長男だ。18歳ですぐに家を出てお笑い芸人になるために大阪に行った、そしていま東京、近いうちにアメリカに行きたいと考えている僕が、生まれた街を離れて自由にすると言うことは兄弟のうち誰かが親を見るということになる。一番下は金沢で働き真ん中の弟はその生まれた町を離れることなく実家の隣に結婚して住んでいる。彼は親の面倒を一番近くでみることになる。もし彼がほかに引っ越したいとなっても彼は優しいので自分を犠牲にして親の近くに住むと思う。「誰も親を見る人がいなくなる」と言って。要は僕の自由は弟を犠牲にしているとも言える。


長崎県に石木ダムという大きなダムを作る計画がある。地元の住民からすると自分たちの育った集落が無くなるということで反対している。

それに対していまの地方創生大臣は「みんなが困らないように生活していくためには誰かが犠牲になるという積極的なボランティア精神で世の中は成り立っている」といった。たしかに日本が守られているのも沖縄にある在日米軍、自衛隊のおかげだとする。電気を使えるのも原発のおかげ、水不足に困らないようにするのもダム。それらが置かれてるのはほとんどが地方。地方が犠牲になってくれるから成り立っている。東京では隣に保育園や児童相談所がくるだけでも追い出そうとする、地方創生大臣のその発言に違和感を感じるのは地方創生とは富の東京一極集中型ではなく地方を活性化させ、地方の経済が原発やダムなしの依存状態から抜けだすことが地方の創生だと思ってた。地方は補助金などを理由にそれを受け入れる。地方は街が少し潤ったようになる。国からのお金が入れば街が助かる。ある小さな街でこんな話を聞いた。あるフランチャイズのドーナツ屋を誘致しようとしたら街の人口が少なくフランチャイズとして利益が出ないということで断られた、フランチャイズのコーヒー屋も、だからその街は自衛隊を誘致しようとした、理由は自衛隊が来ればそこに働きにくる人も増え、そのフランチャイズのドーナツ屋もコーヒー屋も誘致できる。まずおれは思った、なぜフランチャイズを呼ぼうとしたのか、フランチャイズが来れば街が発展するという発想。自分たちで自分たちの街発のドーナツ屋を作ればいいのに。その街には原発がある、補助金依存は独り立ちするためにどうしたらいいか考えるという思考の犠牲を生んでいる。

犠牲とはなんだろうか。少なくとも誰かを犠牲にする側は「代わりになってくれてありがとう、ごめんね、痛かったら教えてね」じゃないのか「みんなが困らないように生活していくためには誰かが犠牲になるという積極的なボランティア精神で世の中は成り立っている」という台詞は犠牲になる側の痛みをなんら共有していない。福島の事故があったとき、放射能が東京までこなくて助かったと言った知り合いがいた。電気は共有するくせに痛みは共有しない、沖縄に在日米軍基地の70%以上が集約されてる。繰り返される事故、犯罪、戦闘機のバカでかい音、国の安全は共有するくせに沖縄の痛みは共有しない。

それはおれもだ。ステーキは食べれるのが当たり前だと思ってる。命の犠牲があるなんて想像しなくなってる。

ある母親は旦那と離婚したがっていた。しかし子供が大きくなるまでは、と我慢した。子供の大事な時期の時間を犠牲にしたくない、と。しかし大きくなったとき、その子供は当時を振り返りなぜもっと早く離婚しなかった?のか、と聞いた。その子は「僕は母親の時間を犠牲にしてることが悲しい」と。犠牲とは思いやりを持ち合うこと。それは言葉にでる。

コンビを組んですぐの時、地元で祭りで漫才をやる仕事があった。お酒を飲む客、全く漫才を聞いてない、焦ったおれは当時、最前列でみてくれてた、友達のお父さんのハゲ頭を全力でいじった。会場はバカウケ。終わった後、すいません、、おじさんと言ったら彼はさわやかな顔で「だいちゃんが笑いを取れるなら喜んで笑いの犠牲になるよ」と言ってくれた。あの時は温水さんみたいなおじさんがブルースウィルスにみえた。あ、温水さん犠牲にしてしまった。。

村本大輔(むらもとだいすけ)
福井県おおい町出身。2008年位結成したお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」のボケ担当。賛否両論のコラム「炎上エンジョイ」は、日々URALAにて継続することが決定! ツイッター

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