【長坂真護のMAGO NOTE】

長坂真護のMAGO NOTE|ガーナに 芽生えた アートな心。

2019/10/13

長坂真護
世界各国のジャーナリストはなぜこの先進国が廃棄した電子機器を羽織ったこの木がこのスラム街に誕生したのか? その意味を問いてほしいと願う

ガーナに滞在して一カ月半が経ちました。こちらの生活に慣れてきて、日本の生活の記憶が薄れてきました(笑)。それぐらいエネルギッシュで、先進国民が忘れている心、人との付き合い方、近隣との関わり方を再認識させてくれます。いわば180度、先進国とは真逆の生活を行なっています。同時に先進国の大量消費の犠牲になり、沢山のものを失っています。美しい自然が残っていたのも20年前のこと。空気・水質・土壌汚染、貧富の差、病気、雇用など問題が山済みです。先進国が作り出した産業廃棄物を燃やしたり、解体したり、この3万人が住むスラム街はこの産業廃棄物処理で完全にこの街を賄っている状態です。

そんな街に、新しい収入源獲得、新しいスキル向上のきっかけを祈って作っている初めての文化施設『MAGO E-Waste Museum』。一カ月半が経ち、大きな立体アート作品も全貌を表わし始めてきました。一つが電子廃棄物の樹木「E-Waste Tree」。このスラム街の焼き場の真ん中に大きく建てられたこのアートは7mほどの大きさになります。この“木”が全世界に配信され、この場所の抜本的問題は先進国にあると注目され、1日でも早く美しい自然が戻るよう、この作品が機能してくれることを願っています。

そしてもう一つ、このコラムでも度々紹介している世界平和の満月、それが今回立体の月の塔になり誕生しました。こちらも7mほどの大きな立体作品です。現地の人々とペットボトルを800本収集してそれを素材に作りました。満月は人の心を平和にする力があると考えています。この何もなかった広場は、今ではみんなに「月の塔広場」と呼ばれるようになりました。

この街にもアートという文化が投入され、新しい気持ちが芽生えてきました。なんと、この月の塔の周りを、彼らは自発的に掃除をするようになったのです。さらに彼らにペットボトルはゴミじゃないという新しい概念を提供できました。僕はこれから彼らが街から集めたペットボトルを買い取り日本に輸出して、再生プラスチックにしてTシャツを作るプロジェクトを進めていきます。作る責任、使う責任、使った責任。この“使った責任”を私たちは強く考え、行動に示して行かなくてはなりません。

美術家 長坂真護
MAGO CREATION㈱代表取締役兼美術家 /MAGO Art & Study Institute Founder。サスティナブルを合言葉に、ガーナのスラム街に先進国が不法投棄した電子廃棄物を再利用し、美術品を制作販売。その利益をスラム街での新規雇用や完全無料の学校運営に。
公式HP  Instagram

#コラム#アート#連載

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