【冬になると逢いたくなる つるんと食感、水ようかん。】
2019/11/03
全国的には夏に食べるお菓子である水ようかん。“寒い時期に食べる”風習は、県外の人が聞けば必ず驚く、福井人特有の食文化です。雪の日に学校から帰ると、「今日のおやつは水ようかんやよ~♪」と言うお母さんの声。そんな思い出のある人もいるかもしれませんね。それくらい、福井の人にとってなじみのある水ようかんについて調べてみました!
「蒸しようかん」から「煉りようかん」を半煉り状にしたものが作られた後に、水分を多くした「水ようかん(丁稚ようかん)」が作られるようになり、主におせち料理の一つとして食されていたとか。かつては木枠の型(羊羹舟)に流したものを切り売りしていました。当時の名残として厚みのある木板が残っている店も複数見つかっています。
店ごとに材料や仕上がりなどに違いがありますが総じてやわらかく、みずみずしいのが福井の水ようかんの最大の特徴。保存料などを使用していないことから日持ちがせず、気温が低い冬場が「旬」になったとも言われています。
県内の水ようかんは別名「丁稚ようかん」という名前でも知られています。丁稚ようかんは、西日本の主に近畿地方を中心とした地域での呼称。かつて年末に奉公先からの帰省時に持ち帰った小豆で作ったのが起源という説もあります。「出汁」(でじる)に、煉る工程からの「でっちる」の意味が重なった説や「上りようかん」の手前の半人前の意味での「丁稚」、「安価なので丁稚が里帰りの時に土産にした」など、「丁稚」の意味は多々あるよう。大野市や小浜市などでは「丁稚ようかん」という名前で販売されています。
物心ついた頃から「雪が降り、寒くなったら、暖かいこたつに入りながら冷たい水ようかんを食べる」のが冬の楽しみという福井の人も少なくないのでは? 紙箱に流す“一枚流し”も福井独特のスタイル。切れ目に沿って付属のヘラですくってつるっと食べます。噛まなくてもすっととろける口どけ、喉ごしの良さも美味しさの秘密! 一枚(箱)ペロリと食べてしまう人も多いはず!
製造方法は一般的な煉りようかんと同じく、砂糖と餡を寒天で固めて作りますが、水ようかんは水分を多くしてやわらかく作るのが特徴。また、砂糖の分量を少なくすることでより甘味を抑え、あっさりとした味にしています。しかし、糖度が低い=要冷蔵で保存が効かず、常温や夏場の気温ではすぐに腐敗してしまうため、冷蔵庫などが普及していなかった時代は福井の気温の低さが自然の冷蔵庫としての役目を果たしていたのでしょう。
水ようかんは、こしあん、寒天、黒糖、ザラメが主な原料。こしあんの代わりに小豆、黒糖の代わりに上白糖を使う店もあり、それらが色の濃淡や味の違いにもなっています。また、厚さの違いも各店の個性で、比べてみると面白いですよ!
厚さ比べ
縦、横の厚みも比較してみると一目瞭然! 薄い水ようかんはいくらでも食べられますが、厚さのあるものは一切れで満足度が高い!
色の濃さ比べ
餡の種類や黒糖の配合量によっても全く違う色合い。ちなみに一番濃い(右)のは金時あんを使用した水ようかん
なんとも奥深い福井の水ようかん。冬の水ようかんに馴染みがない、という方も、今年はぜひ味わってみてください!
日々URALAからのお知らせをLINEで受け取れます!