【パルタージュ】

シスレーが晩年を過ごした町から。

2019/11/14

『モレ=シュル=ロワンの風景』五百崎 智子
『モレ=シュル=ロワンの風景』 ©Tomoko Iozaki

パリ生まれの英国人画家、アルフレッド・シスレー(1839〜99年)が晩年を過ごした町、モレ=シュル=ロワン。パリから南に80キロほどの所にあるこの町は、豊かな水とのどかな自然に囲まれている。とても美しい町だと聞き及び、久しぶりに戸外制作を思い立った。
実はこれまでシスレーに特段の関心を寄せたことがなかった私は、あらためてオルセー美術館に足を運び、同じ時代を生きた印象派の画家たちの作品と見比べてみることにした。 
明るく目にも心地よい色彩で描かれた風景画は一見どれも同じように見える。しかし、他の画家たちの表現がそれぞれ変化していく中で、シスレーは「典型的な印象派」の画家であり続けた。それほど彼の気質に合う制作スタイルだったのだろう。 
美しい風景を前に描く当時の彼の姿を思い浮かべた時、私は同じ画家として日常の煩わしさを忘れさせてくれるその静かな喜びのひと時を共感した。

画家/五百崎 智子 
1971年、福井市生まれ。福井大学、大学院で油絵を勉強。卒業後、フランスのニース大学、パリ国立高等装飾美術学校で学ぶ。新学期が始まり毎日娘のお弁当を作るように。パリでは手作りのお弁当は珍しいようだ。

#コラム#アート#連載

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