日々URALA(ウララ)

「千と千尋の神隠し」の舞台「油屋」を完全再現|茶蔵庵房

茶蔵庵房
蔵を改装したつくりのカフェ『茶蔵庵房』。
バス停はダミーなので訪れる際は車で

福井県坂井市丸岡町にあるクラフトミュージアム&カフェ『茶蔵庵房』(さくらんぼう)。土日祝限定で営業している隠れ家的スポットのこちら。お店のオーナーは、“神の手”「立体間取りアーティスト」の名前をもつタカマノブオさん。

どうやらタカマさん、今年4月末、日本映画界の名作「千と千尋の神隠し」の舞台、お湯屋「油屋」を完成させたそう! これまで数々の名建築ジオラマを製作してきたタカマさんが「これまでで最も大きく、苦労した作品です」ということで、期待大。

右側の模型と比べてもその大きさは一目瞭然

例の作品がある展示室は『茶蔵庵房』の2階部分で、これまでに製作したジオラマがずらりと並んでいる。その中に一際大きいものが! ありました巨大ジオラマ「油屋」。まずはそのプロフィールを。

油屋…八百万(やおよろず)の神々が訪れるお湯屋さん
幅…約1m
奥行き…約1m
高さ…台座0.7m、本体約1.3m
製作時間…約1800時間
製作期間…約1年2カ月(2019年4月完成)
素材…厚紙・ヒノキ木材・プラスチック板など
地下階層・湯殿階層・上部階層の3部構成

大きさに関してはもはやジオラマの域を通り越すサイズ。タカマさんの作品は基本的に1/40だが、大きすぎるということで1/50に。つまり実際の「油屋」は約45m四方に、高さ約67mにもなるお湯屋。ちなみに県内でいうと『ホテルフジタ』さんが似たようなステータスだそう。

そして単純計算で1日4時間を「油屋」製作に費やした。これはとうに趣味の域を超えている…。

素材に関しては、これは他の作品もそうだが、基本的な材料は身の回りにあり、すぐに手に入るものを用いる。100円ショップやホームセンターなどはタカマさんにとっては素材の宝庫なのだとか。

タカマさんのお気に入りは右側の「油屋」裏側だそう

そびえたつ雄姿に近寄ってみるが、一方向からは全景を見ることができず、一周して確認。台座の表面は映画にもあるよう沼として表現され、そこには千尋とカオナシが乗る電車も!

「油屋」としての建物だけではなく、周りの情景までもジオラマで表現しているから驚き!これがあるかないかで伝わり方がずいぶんと違うはず。

中央部正面。オクサレ様が飛び出す大扉は開閉可能な作り

さらに細部に注目すると、屋根の瓦1枚1枚に、手すり、窓の格子1つまで、これは「油屋」に限ることではないが、タカマさんの“妥協はしない”というモノづくりの姿勢がひしひしと伝わってくる。

では、このような緻密なジオラマは一体どのように作られているのか。

次ページ→ 必見。“神の手”の製作スタイル。

あくまでも“神の手”のスタイルを貫く

「これほどまで苦労した作品はありませんでした」と語る通り、完成までは一筋縄ではいかなかったよう。タカマさんの製作スタイルは、間取り図(平面図)を基に内部まで忠実に立体的にしていくが、もともと、この間取り図がどこかにあるわけではない。それを自ら起こすところから始まるのだ。

さまざまな資料を参考に間取りの手がかりを探る

「製作にあたって「千と千尋の神隠し」のDVDは通しで10回以上観ました。その後部分的にも数10回。図版や書籍、ジブリの展示会などからも調べました」という。しかし、今回に限っては上部階層と地下階層は手がかりが十分に見つからず、登場シーンが多かった湯殿内部のみ再現したそう。それでも、外身だけを作るということはせず、最低限自らのスタイルを貫いたということだ…!

こちらが湯殿内部。
中央に見える緑色の部分が浴槽である
上部階層外観。美しく整然と並ぶ手すり・窓だが、
当然既製品ではない

間取り図が描けたらそれに沿って組み立てていくが、もちろんここからも大変だ。屋根や窓は一見同じ作業の繰り返しで、量産できそうだが、「この「油屋」という建物は建築様式が混じりあってとても複雑なんです。例えば屋根部分は、真っすぐの平たい屋根ではなく、反ったり膨らんだりしているので、アールを付けるのに苦労しました」とのこと。

この窓枠の製作は相当な根気と集中力が必要だ

また、障子などの建具に関しては、レーザカッターなどを用いれば画一的に美しく作れるが、「温かみがなくなってしまう。見てもらう方に手作りによる親近感を持ってもらいたいので」との想いから、すべての工程を手作業で行なった。なんとガラスの引き戸や障子戸など、約500枚を作るのに2カ月ほどかかったという。

これらの曲がりも、元はまっすぐな木材である

屋根や橋など湾曲する部分にも手を焼いたそうだ。もともと湾曲しているぴったりな素材などはないので、まっすぐな木材を水につけては曲げ、そしてまた水につけては…という作業を繰り返して製作。まさに忍耐勝負なのである。

ジオラマなのに物語のような雰囲気を醸し出す。
これがタカマさんの真骨頂

完成に至るまでの製作エピソードをほんの少し伺ったところで、ジオラマに対する想いを聞いてみた。
「やはり完成したものは多くの方に見てほしいです。その中で、ただ眺めるだけではなく、知らず知らずのうちに映画の登場人物になったような気分になってもらえたら一番。僕の作品は実際に映画で登場する印象的なシーンを切り取っています。なるべく原作のイメージを表現したいので、そこに注目してもらえたら」。

そしてこの言葉が最も表れているポイントが、“ジオラマが動く”という点だ。


次ページ→ “動く”ジオラマ。
これが一気に物語の中へと誘う。

“動く”ジオラマ。これが一気に物語の中へと誘う。

今回の「油屋」では以下の全4つのギミックが仕掛けられている。

・BGMに合わせて徐々に内部が点灯していく
・水面を電車が走る
・シンボルマークの煙突から煙が立つ
・ハクが天に向かって昇るように回転する

こちらが点灯していくシーン。
音量を上げて見てほしい↓

特に部屋の明かりが灯るシーンはBGMも重なり、一気に登場人物の一人として映画の中へと引き込まれていく。目を離さずゆっくりと眺めてほしい。

その他、大扉の奥に見える湯殿内部、裏側のかまじいがいるボイラー室へと進む外階段、水面を走る電車まわりなど細部に至るまで見所は満載で、

誰もが見過ごしてしまいそうな隅の部分までこだわっている。誰にも気づかれないような部分だからこそこだわっているのかもしれない。

ここまで再現されているとジブリ好きやジオラマ好きの方は当然興奮するが、日々模型作りに勤しむ建築学生にとっても、よい刺激となるのではないか。

ということで、「令和になる前に完成させたかった」という力作はタカマさんのジオラマに対する想いがたっぷりと詰まった作品でした!

入場は300円必要ですが、払うだけの価値は十二分にあります。「写真や動画で見るだけではなく、現地で実際に見てほしい」と語る通り、その目で実際に見るからこその迫力・感動がありました。

また、「油屋」以外の作品、サザエさんの「磯野家」をはじめ、有名映画やドラマなどに登場する建物も多数。こちらも併せて要チェックです。

※終了しました。

お知らせ
全国各地で展示会を行なっているタカマさんですが、今月11月30日(土)~12月8日(日)までの9日間(3日・火曜は休館)、坂井市の『ハートピア春江』にて開催される「立体アート展Ⅱ」に出展。12月1日(日)にはタカマさん本人によるワークショップも開催! なかなかカフェに足を運べないという方もタカマさんが手掛けるジオラマのダイナミックさを感じられるチャンス! ぜひ訪れてみて下さい。



クラフトミュージアムカフェ 茶蔵庵房(さくらんぼう)
【住所】福井県坂井市丸岡町上安田18-47-3
【電話】0776-76-0086
【時間】11:00〜18:00
【休日】月~金曜(祝日の場合は営業)
【席数】15席
【駐車場】20台
【HP】あり
【SNS】Facebook Instagram
※展示室への入場は300円(税込)

立体アート展Ⅱ
【日程】2019/11/30(土)~12/8(日)
【会場】ハートピア春江 展示交流ホール(福井県坂井市春江町西太郎丸15-22)
【時間】9:00~17:00
【休館】火曜(12/3)
【料金】入場無料
【お問い合わせ】0776-51-8800
【HP】あり



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