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日本一のフリーペーパー〈いけだごのみ〉。「私は池田が大嫌いだった」と語る制作者の想いとは。

全国各地のタウン誌やフリーペーパーの中から、誌面内容のクオリティや読者からの支持により選出される「日本タウン誌・フリーペーパー大賞2019」。昨年11月末に選出が発表され、福井県池田町の情報を発信するフリーペーパー「いけだごのみ」が【自治体PR部門】で最優秀賞を受賞した。

 左側が小林さん、右側が宗倉さん
左側が小林さん、右側が宗倉さん

美しい写真や可愛らしいデザイン、そして深掘りされた池田の魅力が生き生きと誌面から伝わり、審査員一同、池田に足を運びたくなったと評価されたわけだが、この「いけだごのみ」、池田町で働く宗倉伸子(そうくらのぶこ)さんと小林智映(こばやしともえ)さん、このたった2人の女性”によって制作されている

さらに、実は小林さん、元々池田町が大嫌いだったと言うのだ。

そんな彼女が今や、嫌いだった町の魅力を多くの方に伝える側に。一体そこにはどんなメッセージが込められているのか。制作エピソードを交えながら、宗倉さんと小林さんに、池田に対する想いを伺った。

—まず、簡単に「いけだごのみ」について教えてください。

宗倉:2013年に創刊された池田町を紹介するフリーペーパーで年に数回、これまでに16冊が刊行されています。単に観光情報を紹介するのではなく、例えば料理だと、作り方や作り手さんの想いなど、深いところまで紹介しています。

最新号の誌面、20代女性がターゲットとあって、
情報量たっぷり、細かく作られている

小林:それと、メインターゲットを20代女性にしていて、彼女たちが池田に足を運びたくなるような切り口の内容、デザイン、写真など、世の中の流行を取り入れた誌面作りを心掛けています。
ホームページで全て公開しているので、是非見て下さい。

―2013年創刊ということは2019年で丸6年。その間、制作はお2人でしていたのですか?

宗倉:いえ、創刊当時は約5人で制作していたようです。私が福井に引っ越して来て、池田で働くようになってからは3人で、そして現在はともちゃん(小林)と私の2人体制になりました。

―元々池田出身ではないのですね。

宗倉:はい、私は香川県高松市出身です。約6年前に結婚を機に岡山から福井に移住してきました。現在は越前市在住です。

―小林さんもそうでしょうか?

小林:私は池田町生まれ、池田町育ちのこってこての池田人です(笑)。私は逆に結婚を機に池田から離れ、現在は坂井市に住んでいますが、勤め先は池田の林業会社なので毎日通っていますよ。

宗倉さんは「いけだ農村観光協会」で広報を担当している

―岡山県からの移住で、池田のPRをしようと思ったのはどうしてですか?

宗倉:元々大阪や岡山で観光・旅行関係の仕事をしていました。福井に来た当初は別の仕事をしていましたが、やっぱりもう1回観光業に携わりたくて。それから約2年前、2017年ですね、縁あってこちらに。

ともちゃんが池田で働くようになったのもそのあたりだよね。

―小林さんもずっと池田で働かれていたわけではないのですね。

小林:はい、私は創刊から携わっていますが、当時は、福井市やあわら市の印刷会社で働いていました。そして、2017年4月に現在の林業会社に転職しました。もっと深く池田と向き合いたい、知りたいたいという想いが強くなっていったのが、転職の理由のひとつですね。

―林業の会社を選んだ理由は何かあったのですか?

小林:池田って9割が山や森なんですね。それで、池田の山のことを知れば、「池田町」についてもより深く知ることができると思ったからです。

そこで「企画デザイン部」のような部署を立ち上げて、林業の仕事もしつつ、「いけだごのみ」を制作しています。

―もっと深いところを追求したいという想いからなんですね。
誌面の制作にあたってそれぞれの役割はありますか?

宗倉:各号の企画は2人で案を出し合いながら行なっています。

小林:良くない案だと「その案なし」ってはっきり言われます(笑)

宗倉:私たちが伝えたいことを念頭に企画していますが、やっぱり足を運んでくださる側の目線から、それって面白いのかな、分かりにくくないかなというのを考えて、調整をしています。

それから取材は2人で行き、誌面デザインや撮影、文章はともちゃんがしています。私はそのサポートや校正チェックなどを行なっていますね。

―誌面デザインと撮影は全て小林さん。同じメディア人として、その多彩なスキルに驚きです。

小林:デザインの方は、前職もデザイナーだったのでその経験を活かしています。写真は、表紙や体験もの、インタビュー記事など、町民の方たちに協力してもらうような撮影は主に私が担当しています。必要があれば料理なども撮りますよ。

宗倉:季節の風景などは横浜のカメラマンさんの写真ストックも使っています。

小林:阿部さんといって、私の師匠です。15年くらい池田に通われているカメラマンさんで、主にパンフレットなど、広報の写真を撮られています。

私はこの阿部さんの写真を見て、池田の良さを再発見できました。池田で育ったのに、全然池田のことが見えていないってことに気づかされて…。池田をPRするには絶対に写真を極めないといけないって感じて、独学で勉強してきました。

なので、誌面の写真は、阿部さんと私の写真で構成されています。

次ページ→ 過去にはクレームになった記事も!? &
語られる池田への想い。



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企画会議は賑やかな様子で行なわれている

―これまでの制作の中で思い入れのある出来事、印象に残っているエピソードはありますか

小林:最初のメンバーは、冊子制作とかに関わったことのない、全く違う職種の方たちで、分からないことだらけでした。大変だったという意味では思い入れはあります。それはそれで挑戦的で面白かったですけどね。突飛な案を形にしていく作業とか。

例えば「池田のお米のファン」を県内中探し回って、池田に集まって対談する企画とか(笑) 大変だった内容こそ、「あの記事よかった」って言ってもらえることが多いです。

宗倉:あと、池田のデートスポットを紹介した記事は、写真が刺激的ではないかと注意を受けたこともありました(笑)(気になる方は2016年の秋冬号をのぞいてみて下さい。

小林:あれはあれでやってよかったです。シンプルに紹介するよりも池田にある素材を使って注目されたり、話題にしていきたいので、最適解の一つだったと思います。

―確かにそうですね。突飛な案こそ読者への印象に残りますよね。

宗倉:嬉しいという意味で印象に残っているのは、誌面をここの下(インタビュー会場は『こってコテいけだ』の2階)に置いていますが、20代女性の方々が「これかわいい!」って言いながらバックナンバーも手に取ってくれる姿を目にした時ですね。

小林:それは本当に嬉しい。
それと今回の件、町のみんなが応援してくれて、そして受賞することができて、喜んでくれた。取材に協力して下さる方や読者の方、みんなで誌面を作っている感じがしてとても嬉しかったですね。

宗倉:あと、これは池田のお菓子屋さんからの言葉で、「県外にお菓子を持っていくときは、必ず「いけだごのみ」を持っていきます」とか、池田に住んでいる方が「読んでいると、この町にも誇るべきところがたくさんある! って再認識させられる」と言って頂けるのもすごくやりがいを感じます。

小林:私が阿部さんの写真から池田の良さを再認識したように、今、改めて町の方がそう思ってくれるのは本当に光栄なことです。

―宗倉さんは以前も観光関係のお仕事をされていたとのことですが、「いけだごのみ」の制作ならではのことはありますか?

宗倉:池田は小さい町なので、どこを取材するにしてもじっくり話を聞くことができます。日常の生活の中でお店に行ったり、滝を見に行ったりして、「ここに来たことがない方には本当に来てほしい」って思えるところを実際に紹介できるのはすごく楽しいです。全国的な観光事業では絶対に体験できないことですね。

あとはやっぱり深く取材するので、実際に誌面には表れないかもしれないですが、「この人こんな歴史を持っていたんだな」っていう部分を知ることができます。これもならではだと思いますね。

―今後の「いけだごのみ」についてのビジョンや目標などを教えてください。

宗倉:町外にもっと置いてもらえるところを増やしていきたいです。長居できるような喫茶店や美容室の待ち時間など、そういった時間に読んでもらえる機会を増やしたいですね。

小林:これは実現可能かどうかは分からないですが、「設置店さんを池田に招待して、ご飯を食べてもらって、スポットを回ってもらう。そうすればお客さんがそのお店で誌面を手に取った時に池田の話ができて、さらに知ってもらうことに繋がると思います。

―まずは知ってもらうことが大事ですよね。池田町としてはどんな町にしていきたいですか。

小林: 私は今でこそ池田のことが大好きですが、元々は大嫌いでした。なにもない田舎の池田町出身ってまわりに言うのが恥ずかしくて。出身を聞かれても答えたくありませんでした。

だけども、池田町の事を知れば知るほど好きになり、この土地で生まれ育った自分のことも好きになれたし、自信になっていきました。なので、観光客に足を運んでほしいのはもちろんですが、まずは、ここに住んでいる方に池田での暮らしを楽しんでほしいし、町に誇りを持ってほしい、幸せになってほしいです。

宗倉:私は、日々すごく広く情報を発信しているつもりですが、まだまだ知らない方が多くて。なのでやっぱり知ってもらえる機会を作らないといけないなって思います。

それから、池田には自分のやりたいことを実現して生き生きと生活している方がたくさんいます。その方たちをもっと知ってもらって、それに刺激を受けた方々が、何かにチャレンジしたいと池田に集まる、そんな風になってほしいです。

―今後の池田がますます楽しみです。ありがとうございました!

生まれも育ちも池田町のエネルギッシュに活動する小林さんと、移住者としての視点も持ち合わせ、冷静に周りを見る宗倉さん。この2人が手掛けていく池田への愛がこもった誌面、そして彼女たちが想い描く誇らしい「池田の町」にも注目していきたい。



いけだごのみ
2013年創刊の「いけだ農村観光協会」が発行しているフリーペーパー。20~30代の女性をターゲットとし、池田町の情報をテーマを絞って発信している。町内だけではなく、県内各市町の観光施設、病院・美容室・カフェなどに幅広く設置。首都圏のアンテナショップなどにも置かれている。年間数回の不定期発刊で、これまでに16冊が刊行。


宗倉伸子(そうくらのぶこ)
香川県高松市出身。大阪や岡山などで旅行情報誌の制作や観光プロモーションの仕事に携わり、6年前、結婚を機に来福。約2年前から「いけだ農村観光協会」の広報として「いけだごのみ」の企画・編集・制作などを担当。


小林智映(こばやしともえ)
福井県池田町出身、池田町育ち。池田の林業会社に勤める。創刊時から「いけだごのみ」制作に携わり、企画・誌面デザイン・写真撮影・文章執筆などを担当。昨年11月には池田町に撮影スタジオ『龍宮写真館』も開館。


【問い合わせ】
いけだ農村観光協会:0778-44-8060
龍宮写真館:0778-44-6008



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