月刊ウララ2月号特集『ふくい 隠れた名店の味』から内緒にしたい名店をご紹介

2020/02/10

地元には名店がある。長年人々に愛される名店がある。人が惹きつけ、味が惹きつけ、歴史が惹きつける。それが名店の味。教えたくはないけど教えたい味。


癖になる香ばしさ | なごとん

 暖簾をくぐると、店いっぱいに広がる味噌の焼けた香り。店名そのままの看板メニュー「なごとん」=「名古屋とんちゃん」の香ばしい匂いだ。
 この道40年、小手を鳴らしながら味噌味のとんちゃんを作り続ける店主の竹内さんは愛知県出身。血気盛んだった若き日の竹内さんを見かねた、行きつけの飲食店の主人が福井駅前に先代が出した新店で働くことを勧めたのが始まりだった。開店当時は6坪の店に20人強が押し合いながら座り、立ち飲みする人がいるほどの人気ぶり。その味を正確に受け継ぐため、先代が残した味噌の割合を守りつつ、焼き手としての技も磨き続けた。「先代が亡くなった後、自信を持てるまで一旦駅前から離れて店を出したんです」と話す店主の言葉からも、受け継いだ逸品にかけるこだわりと愛情が伝わってくる。
 シンプルながら、一度出会うとなぜかまた食べたくなる味。本当の美味は意外と近くにあるのかもしれない。

なごとん
【住所】福井県福井市中央1-21-8
【電話】0776-23-1590
【営業時間】17:00~24:00(日曜は22:00まで))
【定休日】火曜日
【席数】12席
【駐車場】なし


こだわった牛すじ丼 | 太郎

 その場所が地元の人に愛されているかどうかは、その店が漂わせる空気や、看板メニューがあるかでわかる。「内職のように始めた」たこ焼き屋からはじまり、うどん、お好み焼き、一品料理と、客のリクエストで増えていったメニュー。それを形にして満足させるのも店の腕。「この店にはカツもカレーもないけれど、『カツカレーが食べたい』って(笑)」。嫌な顔一つしないで提供する度量の深さもまた愛される秘訣。
「気になった料理は見よう見まねで作ってみる」、と作り出して今では名物にもなったのが「牛すじ煮」。毎日2㎏の牛すじを仕込み、一晩おいて余計な脂分を落としてあっさりと仕上げ、時には4分の1を捨てることもあるくらい、と、とことんやり抜く。その見えないところの手間暇が老若男女問わず人気を呼び、「丼ぶりにしたい」のリクエストもあり、「牛すじ丼」は定番メニューとなった。
 来るたびに新しいメニューが並ぶ。そんな柔軟性もまた愛される秘訣。

お食事処 太郎
【住所】福井県小浜市小浜香取21
【電話】0770-53-1467
【営業時間】11:30~22:00頃
【定休日】不定休
【席数】20席
【駐車場】5台
【HP】あり


花街の記憶残るカウンター | 与志川

 えちぜん鉄道勝山駅を出て、勝山橋から九頭竜川を渡った左手に広がるのは湊町として隆盛を極めた「本町」エリア。舟運が盛んだった江戸から明治にかけての時代、勝山は三國まで九頭竜川一本でつながり、多くの人々や物資が行き来していた。
 とりわけ尊光寺の手前に伸びる河原町通りは勝山唯一の花街として当時大変な賑わいをみせていて、「百人町」と呼ばれる一画もあったほど。至る所に芸妓が置かれていたというから、羽二重に代表される勝山の繊維産業の隆盛と共に華やいでいたのだろう。
 そんな河原町通りにその頃の風情を今に伝える一軒の名店がある。「大清水」の湧き水からも近く、簾や飾り窓など趣ある佇まいの『割烹 すし 与志川』は、昭和初期に仕出し料理店として開業。花街の“貸席(部屋貸しの店)”として料理を提供してきた。
 戦後、初代が寿司をメニューに加え、海に面していない勝山の街には珍しいお店となった。
 店内は、カウンターの目の前に座布団が並べられた座敷とこたつ席という一風変わった造りではあるが、靴を脱ぐことで自然と心が落ち着くようだ。
 メニューを開けば、寿司の他に「テキ鉄板焼」「カツ丼」などの洋食が並ぶ。聞けば、2代目紘一さんは片町のレストラン『CR』でシェフとして経験を積んだ料理人だ。「初代である父親から、田舎の店は何でもできないといけないと教えられました」。山に囲まれた勝山という土地で本格的な握り寿司とステーキを提供できる店は、たしかに唯一無二の存在に違いない。
 移りゆく時代の中で、店主のこだわりやお店としての個性を忘れず、淡々と営み続けてきた『割烹 すし 与志川』。街を行き交う人々の胃袋をしっかりと満たし「生きる碑」として、今日も勝山の片隅で暖簾を掲げている。

割烹 すし 与志川(よしかわ)
【住所】福井県勝山市本町2-6-12
【電話】0779-88-0438
【営業時間】11:00~13:30、17:00~21:00
【定休日】日曜
【席数】36席
【駐車場】4台


辛味そばは“年越し”の特別な味 | 米太

 小浜には「節分そば」なる食べ物がある。これは小浜市全域というより、八幡神社周辺で呼ばれている食べ物。古来では立春が一年の始まりであり、その前日の節分の日は、いわゆる大晦日に当たる。この日、周辺の人々は八幡神社に参拝し、年越しそばを食べるのが習慣になっていたという。ただ、全国に浸透した年越しそばは12月31日のもの。それとの混同を避けるため、いつしか節分そば、と呼ぶようになったそうだ。
 さてこの節分そば、辛味大根の汁のみを使うそばなのだが、地元での本来の食べ方は、温かい辛味そばなのだとか。辛味大根の香りが湯気とともに立ち上がり、一気にすするとむせるけれども、ゆっくり食べていくと辛味がまろやかになる。今でも注文を受ければ温かい辛味そばを提供してくれる。
 ちなみに小浜はれっきとしたうどん文化。こちらの店も「米太のうどん」としての知名度のほうが高い。が、年越しだけはそばをいただく。この地域の人にとってはそばは特別な、“ハレ”の食べ物なのだろう。

米太
【住所】福井県小浜市小浜住吉9
【電話】0770-52-0711
【営業時間】11:00〜19:00
【定休日】水曜
【席数】24席
【駐車場】
【HP】あり


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#エンタメ#グルメ#月刊ウララ

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