【麺 to the future|宗近製麺】
2020/02/29
“麺のプロ”宗近鉄也さんがお送りする麺好きのための連載「麺 to the future」。
麺のプロとあって、蕎麦以外の麺類にも精通している宗近さん。実はとある中華料理店 店主とタッグを組み、完成させた渾身のラーメンがあるのだとか! 今回は、無添加かつ美味しい料理にこだわる店主と、それを実現させるべく、この麺に情熱を注いだ麺のプロ。このアツい男たちの真摯な物語を紹介します!
宗近鉄也(むねちか・てつや)
株式会社 宗近 専務(四代目)
1980年、越前市(旧武生市)生まれ
高校卒業後、大学進学を機に上京。大学卒業後は某企業で数多のクレーム対応に従事、約6年間勤務。その後、奈良県の製麺所に就職、約4年間勤務。32歳で実家である『株式会社 宗近』に就職、35歳で専務に就任。現在に至る。
-宗近さんではそばだけでなく、中華麺も製造しています。夏の「冷やし中華」は市販されているのでお馴染みですが、飲食店への納入もありますよね。
はい。でも単なる製造・納入ではなく、麺のプロとしてその店のお客様に喜んで頂ける麺を提供したいと考えていますし、実際に提供もしています。その一つが越前市にある無化調にこだわる中華料理店『やさい中華 四川菜』(以下、四川菜)さんです。
-『四川菜』さんですか! オーナー、背戸(せと)さんとの接点は元々あったのですか。
宗近さん(以下、宗近) 以前、『四川菜』と同じ場所にあった中華料理店に中華麺を納入していました。がしかし、そこが数年前に閉店、しばらくして背戸さんが『四川菜』をオープン。納入業者としてそのまま継続していただきました。
背戸さん(以下、背戸) 開業直前まで県外(大阪など)でしたから、業者のことは全くわからない状態でした。そういう意味では、業者を引き継げたのはラッキーだったんです。
-背戸さんは宗近さんのことは全く知らなかった?
背戸 はい、まったく(笑)。地域や食文化についても情報はゼロでしたから、周りの方から少しずつ教えてもらいました。
-では、中華麺の納入開始後、すぐに店に合った麺の製造に取り組んだわけですか?
宗近 実は納入し始めて2年後(2018年)です。きっかけは、担々麺の美味しいお店があると噂を聞いて。2年間も納入しているのに、『四川菜』さんの料理を食べたことがない…これはイカンと。
-それで麺料理を注文した。
宗近 人気の「担々麵」を注文して、単純に美味しかったんです。こんな本格的な担々麺を福井で提供されていることにかなり驚きました。でも、瞬時に麺に違和感を感じました。具とスープに対して、麺の主張が強すぎるし、噛み応えも何とかしたい。
せっかく無化調で熱意のあるスープを作られているのだから、その思いに応えてもっと麺を美味しくしたい、…そう思ったら、いてもたってもいられなくて即、行動。翌日には改良した麺を勝手に試作していました。
-背戸さんは、中華麺についてどう思われていましたか?
背戸 自分で麺を作ることができないので選ぶ(購入)しかありませんよね。でも、当時の宗近さんの中華麺に個人的には満足していましたよ。
一方で当時は無添加、化学調味料を使わない(無化調)メニューを目指していました。“食の安全”は店の責任ですからね。そんな時、宗近さんが2種類の麺を持ってきてくれたんです。
宗近 現状の麺の雰囲気を生かしつつ改良したものと、私が思い描いた担々麺に合う私好みの2種類。
背戸 試作品として1種類50食分、計100食分も持ってきてくれた。頼んでもないのにこんなことまでしてくれることに驚きましたよね! 男気を感じました(笑)
-宗近さんとしては“私好み”推しですよね。
宗近 もちろん。「担々麵」を食べた後、自分のこれまでの経験をもとに小麦粉の配合を考えて試作。すると、一発でこれだ! という麺が出来上がったんです! 無化調のことも聞いていたので、国産小麦粉と天然かん水にはこだわりました。
背戸 まず小麦粉の香りに驚き、さらにかん水に“天然モノ”があることにも驚き…驚き尽くめでした。