【パルタージュ】

外出禁止令で変わる家族の暮らし。|パルタージュ

2020/05/12

『春先の私のアトリエから』 ©Tomoko Iozaki

毎日アトリエから眺めている、空港へと続く高速道路が普段であれば混雑しているのにとても空いている。花屋も閉まり、春の花を買いそびれしまったと思っていたが、バルコニーのプランターにはいつの間にかパンジーやスミレ、オトメギキョウなどが咲いていた。時折、ハトが巣を求めて顔を出す光景だけは今年も変わらない。

新型コロナウィルスの深刻化で、フランスでは3月16日から外出禁止令が出され、国境が閉鎖された。ほんの一週間ほど前には、マクロン大統領が劇場の人混みの中に身を置き、怖がらずにいつも通りの生活を送るよう手本を示しながら、「国境は閉鎖せずに先進各国と連携しながら対策を考えていく」と発表したばかりだったのに。

多くの人たちと同様に私も急遽仕事が休みとなり、専業の絵描きだった4年前と同じ生活リズムに戻った。版画を掘ったり、描きかけだった作品を仕上げたり、作品の整理を始めたりしながら毎日を過ごしている。

生活リズムの変化に慣れることができず、時々窓を開けて外の空気と部屋の空気とつなぐ。飛行機雲ひとつない春の暖かい日の青空を何度も眺めながら。ニュースで見る現実は日に日に悪化していて何かできることはないだろうかと考えるものの、結局のところ「家にいる」ことしかできない。

「1日1時間、自宅から1キロ以内、許可書と身分証明書を携帯して1人で行う」という制限付きでの運動が認められていて、ランニングに出かけることで精神的なバランスを取るように努めている。夫は15年以上も前に福井で買ったギターを久しぶりに弾き始め、娘は毎日机に向かって勉強したり、裁縫したり、映画を見たりと、ひとりの時間を静かに過ごしている。

今回の出来事は、大学院生の時に肺結核と診断されて入院が決まり、突然隔離された経験と重なる。検査結果を待つ4ヶ月間、相部屋で同室だった年輩の女性たちとは話題が合わず、彼女たちも次々と退院して最後は1人になった。当時まだ若く元気だった私は1日がとても長く感じ、なかなか進まないカレンダーを眺めていた。

人生には予期しなかったことが起こるもの。フランス人が「戦争」とも「津波が来た」とも表現する新型コロナウィルスは長期化の様相を呈している。

画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。福井大学、大学院で油絵を中心に学ぶ。卒業後、ニース大学、パリ国立高等装飾美術学校で語学や絵画を勉強。パリでフランス人の夫、16歳の娘と暮らしている


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#コラム#アート#連載

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