元福井県知事・栗田幸雄氏の『真実一路 ふるさと福井と歩んだ道』

2019/06/01

元号が変わった令和元年5月1日。昭和の終わりから平成の時代へと、4期16年福井県知事を務めた栗田幸雄氏の自叙伝が出版された。
今年めでたく卆寿を迎える同氏が、これまで福井県政にどのように向き合ってきたのか、どんな人生を歩んできたのか、その半生を当時の出来事を振り返りながら描いた一冊は、全344ページにも渡る。

『真実一路 ふるさと福井と歩んだ道』

舞台は少年時代。まるでドラマのような運命的な出会いから物語は始まる。
同氏が小学校に入学した1年前に、その学校に赴任してきた一人の教師がいた。その教師の名は中川平太夫。この時点で気付いた方もいると思うが、この中川氏とは栗田氏の前の福井県知事であり、当時自治省に勤務していた栗田氏に、副知事として帰ってきてほしいと声をかけたのも、この中川“先生”であった。

教師と生徒が、40年後に知事と副知事に―。

偶然や奇跡は起こると信じていても、ここまでドラマティックな出会いは、中々存在しないものだ。

この本の主となる知事時代を描いた章では、初の選挙となる知事選の舞台裏がリアルに描かれている。特に、「君出るか?」とふいに問われた一言から始まる、出馬を打診され決意するまでのやりとりには、事の重大さを思わず忘れてしまうほどイメージしていた重々しさがないことに驚く。
その後は、知事時代の主な出来事を当時の県職員の寄稿文とともに振り返るのだが、特に印象強かったのは、現在の福井を代表する建築物が栗田県政時代に開かれたものが多いことだ。今年の3月に来館者数が1千万人を超えた恐竜博物館をはじめ、県立音楽堂やサンドーム福井、県立図書館などなど。また県立大学の創設においては、それ以前に県外の私学が福井への移転を希望しており、そのまま当初の予定通りに進んでいたらどうなっていたのか。福井県民であれば馴染み深い内容、且つそれぞれに知られざる事実を知ることになる。

また、この本では栗田幸雄という人間性を垣間見ることができる。
破れた帽子にボロボロの服、下駄。そんなバンカラな格好に憧れ、第四高等学校時代に入学。担任の何気ない一言から東京大学を受験。社会人になってから始めた趣味のゴルフは今も健在。これまでにホールインワンを2度も達成している。知事時代に経験した始球式では、知事公舎の庭で運転手をバッターに立たせて投球練習を行うなど、本番に向けて念入りに準備。何事にも誠実に、でもどこか人情味のある一面を見せてくれる。

栗田幸雄という人間の半生を綴った『真実一路』。この本を通して、ふるさと福井の歩みを学び、また当時を知る人にとっては 自分自身を振り返るきっかけになるはずだ。

『真実一路 ふるさと福井と歩んだ道
【発行日】令和元年5月1日
【ページ数】344ページ
【販売価格】1400円+税
【販売場所】福井県内主要書店など

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