月刊ウララ9月号特集 最高のローカルを往く『北陸温泉宿の旅』から厳選宿をご紹介

2020/09/09

温泉は癒し、である。温泉宿は別天地、である。喧噪もしがらみも何もかもを捨てて湯に身を浸す。穿った気持ちは染み出して、心地よい思いが染み込んでくる。温泉は気持ちを切り替える場所。自分本来の心を取り戻す場所。



トロッコ電車で行く渓流の奥に佇む隠れ湯宿。

黒部峡谷
黒薙温泉旅館
くろなぎおんせん
◉富山県黒部市・黒薙温泉

河原に隣接する混浴大露天風呂「源泉(いずみ)」。中央に大岩を抱き天然石に囲まれたダイナミックな大露天風呂は28帖相当もの広さがある。厳しい自然環境に配慮し、安全確保のため入浴は21時まで。一部、女性専用となる時間帯がある。

深山幽谷に立ち昇る、湯けむりを目指して進む。

まず知っておくべきは、ここが、トロッコ電車に乗り、徒歩でしか辿り着くことができない温泉であるということ。深い山あいにありながら、17世紀頃には発見されており、慶応4年(1868年)に開湯したという長い歴史をもつ。江戸末期から多くの人が湯あみを楽しんできた「黒薙温泉」は、今も、野趣あふれる姿で訪れる人を迎え入れている。自然そのものがホスピタリティになっているから、五感が研ぎ澄まされ、黒薙川の水音や鳥のさえずり、ヒグラシの声、木々の香りにも敏感になる。今はこうした時間こそが贅沢と言えるのかもしれない。余計なものは何もない環境だからこそ、楽しみなのが食事。雪解け水が流れる清冽な川で育った岩魚やすぐ近くで採れる山菜、扇状地の伏流水で育ったコシヒカリなど、水がおいしい黒部はとびきりの食材も豊富だ。それらを生かした素朴な家庭料理が、すべてとしっくり相まって余計にありがたい。建物は100年余り前に建てられ、改装を重ねてきたものの、柱や躯体そのものは当時のまま。冬季は雪深く交通手段が絶たれるため、4月下旬から11月下旬までの期間営業。旅館までは山道のため、日の入り時刻も気にしながら早めの出発を。

黒薙駅から階段の多い山道を約20分、600m歩いた先に建つ旅館。
建物は明治時代のもの。自然とともにある佇まいが魅力だ。日々の喧騒から離れ、ゆっくりとした“黒薙時間”を。
旅館下流側、高台から黒薙川を見下ろす「天女の湯」は女性専用露天風呂。男性専用の時間帯あり。
心がほっこりする、この土地ならではの家庭料理。
春から夏は川の水量が多く轟音に近い音がするため、気になる方は山側のお部屋を。


◉温泉 Information
源泉名:黒薙温泉
泉質:弱アルカリ性単純泉(低張性高温泉)
泉温:98~105℃
湯量:2,000ℓ/分

◉宿Information
【住所】富山県黒部市宇奈月町黒薙
【電話】0765-62-1802
【料金】1万600円~(1泊2食付、1室2名利用の場合の1名あたりの料金)
【時間】チェックイン/14:00~16:00、チェックアウト/10:00
【HP】あり

◉ACCESS
電車:北陸新幹線「黒部宇奈月温泉駅」下車。隣りの富山地方鉄道「新黒部駅」から「宇奈月温泉駅」下車。黒部峡谷鉄道「宇奈月駅」からトロッコ電車で約25分。山道を約20分徒歩。※トロッコ電車の営業期間は4月下旬~11月下旬のため冬季休館。
車:北陸自動車道「黒部IC」より宇奈月温泉方面へ約30分。黒部峡谷鉄道「宇奈月駅」からは上記の通り。

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#エンタメ#月刊ウララ

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