“麺のプロ”宗近鉄也さんがお送りする麺好きのための連載「麺 to the future」。
昨年からのコロナ禍で「できないこと」が多い中、「これを機会にできた、やって良かった」ということの一つに、“ふるさと納税”があります。宗近製麺さんの商品もふるさと納税の返礼品として、全国に認知度が向上しているところです。そこで今回は、株式会社さちふる(福井市)の代表、笹川千尋さんに、ふるさと納税についてお聞きしました。

1. 宗近製麺、年間10セットから1000セットに! ふるさと納税の仕掛人 笹川千尋さん。
- 宗近製麺さんの商品がふるさとの納税の返礼品になったのはいつ頃からですか?
宗近さん(以下、宗近) 2016年からです。最初は自社サイトと同じ写真を掲載して、動きはほとんどなし。売上としては大問題ですが、それほど落胆しなかったのは、私自身がその仕組みについてあまり関心が無かったからなんです。
笹川さん(以下、笹川) 最初はそばの詰め合わせ3セットのみの販売で、売上も年間約10セットほど……。それが今や年間1000セット!
宗近 笹川さんのおかげです。ふるさと納税のことをいろいろと質問し、今も疑問に思っていることは随時、聞いています。笹川さんは、ふるさと納税のプロなんです!
- 10から1000! その立役者が笹川さんということですが、お二人の出会いは?
笹川 前職の料理人時代、職場(佐賀県武雄市)で「全国の美味しいものを探せ!」という業務命令で坂井市の事業所と出会い、そこから宗近さんとの関わりができました。前の職場で2015年度の武雄市のふるさと納税返礼品提案に携わり、同年度同市の約50%の実績(2億1000万円の約半分が提案商品による寄付)を上げることができました。ちょうどその頃に子どもが誕生。子どものことを考え、そしてより美味しいものがある地域へと思い、退職して妻の実家である福井県への移住を決めました。5年前(2016年)のことです。
宗近 初めての出会いは就職活動時でしたよね。
笹川 そう! 福井での就職先となる株式会社大津屋の面接終わり、一緒に市役所へ行くのに迎えにきていただきました(笑)。第一印象はやさしい人だなぁと。
宗近 笹川さんの印象は、長い付き合いになりそうだなぁと。
当初、宗近そばのスタッフとして来ていただく話になっていたのですが、タイミングが合わず、お断りしたんです。お会いした瞬間、「こんな方を断ったなんて失敗した!」と当時後悔しましたが、今では、ふるさと納税という形で一緒に仕事ができ、売上を伸ばしてくれた“運命の人”です。
笹川 大津屋では、『福福館』と『オレボキッチン&これがうまいんじゃ大津屋』(共にハピリン内)、外商部を経験。前職でも携わったふるさと納税返礼品部門(ネット事業部)を立ち上げて、昨年独立。現在は、県内自治体のふるさと納税返礼品の提案・監修をしています。
- 武雄市(佐賀県)、福井市、坂井市と、実績を携えての独立ですね。
宗近 大津屋時代はもちろん、現状の笹川さんの業績が凄くて! だから弊社もアドバイスをいただき、返礼品売上が激増。ビジネスパートナーという言い方もありますが、私としてはそれだけの関係でもない気がして……だから、運命の人なんです。
笹川 実績は、大津屋時代からのものもありますが……
坂井市/令和元年度 8億8300万円→同2年度 14億円見込み(12/7 福井新聞)
敦賀市/令和元年度 6億2700万円→同2年度 32億5千万円見込み(1/25 福井新聞)
※令和2年度実績は補正予算をもとに発表された見込み値を記載
宗近 ね、すごいでしょ! 弊社も2016年の年間10セットから1000セットに激増。ちなみに1000セットは、昨年(2020年)11月~今年1月のほぼ3カ月で達成した数字です。ふるさと納税返礼品ポータルサイト「ふるさとチョイス」のそば部門 全国人気ランキングでは1位も獲得しました。
「味はもちろんですが、パッケージも趣があって良い感じに仕上がっていると思います」(笹川さん)
2. ランキング1位獲得にはやはり理由が! 笹川さんなりのコツ。
- 激増の背景には、どのような対策があったのでしょうか?
笹川 自社サイトとポータルサイト、「同じネット上だから、同じ商品(写真)を掲載すればいい」ではないんです。
宗近 ポータルサイトでは、自社サイトとは見え方も商品構成もまったく違う。まさに、ゼロからの企画と考えなければならないことを学びました。
笹川 ポータルサイトをご覧になる方は、お得感があり、「一度購入してみようかなぁ」という“つまみ食い”が大半。ですから、そこでいかに見てもらえるかが勝負です。そして“つまみ食い”が多い中で、リピーターや高評価のレビューが付くのは凄いことと言えます。
宗近 「ふるさとチョイス」では、そうしたレビューをいただき、嬉しいですね。
笹川 掲載のそばセットは大根付きで、すぐに食べられるのが最大のポイント。そばとダシだけのセットは多いですが、果たして大根を買いに行ってまで食べるか? 食べないですよね。それが大根もついて5食分。核家族なら、皆で食べられる量です。
さらに、常温生麺で消費期限が長いのも嬉しい。大根をおろしてすぐに食べられて、美味しかったら高評価になり、リピーターにもなりますよね。ポータルサイトで1位になった時は、「やった~!」と感無量でした。
- 商品は同じでも、構成次第で見え方も変わる。
宗近 私たちはメーカーなので作るのは得意な一方、販売やPR、発信は不十分。そういう意味で笹川さんの存在は心強いし、もう離さない、離したくない!(笑)
笹川 宗近さんのそば以上に、私が好きなのは冷やし中華! 「年間62万食も売れてます!」のキャッチコピーで、夏セットのマストアイテムです。そばも冷やし中華も含め、宗近さんにはまだまだできることがあると思っています。
宗近 商品だけではなく、個人向けに何かができれば……例えば、体験してもらったり、思い出を作るお手伝いができたらいいなぁと。人とのつながりを大事にしたいんです。
笹川 宗近さん指導のもとでそば打ちをして食べたり、別の麺を調理して試食してみたり、創意工夫で何でも出来るってことです。私自身は仕事を通じて、思いつかないようなことを見つけて吸収していきたいし、いつか宗近さんと大きな仕事をしたいなぁと考えています。
次ページ → 個人にとっても企業にとっても良い仕組み。まだの方、必見。ふるさと納税の魅力とは!?
3. 個人にとっても企業にとっても良い仕組み。ふるさと納税の魅力とは!?
- ふるさと納税(返礼品)における、私たち納税者のメリットは何ですか?
笹川 そもそも、ふるさと納税は“皆が笑顔になる制度”だと思っています。個人でいえば年間の税金控除以外に、欲しいものが返礼品としていただけるし、税金の使い道も選びながら“ふるさと”を応援できる。この制度から日本でも災害支援やクラウドファンディングなど、“寄付文化”が少しずつ根付いているのではないでしょうか。
宗近 そばを食べて笑顔になる。笑顔=幸せですからね。
笹川 企業について。ふるさと納税の返礼品は地域の中小企業の参入が容易(大企業にはハードルが高い制度)で、大勢に見てもらえる、という意味では自社サイトよりもメリットが多いです。膨大なアイテム数が掲載される某ネットショッピングモールでは、商品が埋もれてしまいます。それよりも興味のある“ふるさと”からの検索であれば、見つけてもらえる可能性は大きいと思います。
宗近 なるほど! 返礼品に参入していない中小企業は、もっと利用すべきですね。
笹川 「ふるさと納税」の認知度は、2015年は50%未満でしたが、コロナ禍の現在ではなんと99%。そのうち、今年の寄付控除対象者は全体の8~10%とかなり少なめ……。しかしながら、意向調査では約90%の人が継続を希望しています。その市場は現在約5000億円で、すぐにでも1兆円も超えてくるでしょう。1兆円市場が中小企業に開かれていると思うと……凄いことですよね。
- 今後、県内企業の返礼品参入が増えそうですね。
笹川 そうあってほしいですね。福井には良いものがいっぱいあるし、ブランド化もされているのにまだまだPR不足。本当にもったいない!
宗近 例えば、どんなものが“もったいない”?
笹川 いちほまれ(米)や甘えび、地酒、越前町のたけのこなんかも良いですよね。
宗近 地酒は、前職場(オレボキッチン&これがうまいんじゃ大津屋)で数多く取り扱っていましたよね。
笹川 地酒は本当に旨い! 当時、積極的に試飲を行って、売上前年比300%増を達成しました。地酒は県内全域にあるので、県単位または、近隣の自治体同士で設定可能な広域返礼品になると良いなぁと。
宗近 私を含め多くの方が、もっと「ふるさと納税」に関心を持つべきですよね。少しの関心を持つことで笑顔になり、幸せにもつながる――。
笹川さんが幸せを感じる時はどんな時ですか?
笹川 私はいつも幸せです。いい人に恵まれ、助けられていますから。仕事を通じて、企業や自治体のふるさと納税に関する“困った”に応えていきたいですね。
『株式会社さちふる』
2020年創立。「ふるさと納税を通じて福井のPRを目指す」をモットーに、福井県内初のふるさと納税に特化した企業として、同年10月より敦賀市のふるさと納税事業をサポート。自治体の他、事業者サポート、勉強会やイベントなど、ふるさと納税全般に関わることに携わる。
宗近製麺(むねちか)
【住所】福井県越前市北町45-63-1
【電話】0120-22-3139
【時間】10:00~17:00(日曜、祝日除く)
【HP】あり
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