【メトロの灯】
2020/02/02
2月10日(日本時間)のアカデミー賞の発表を間近に控え、ノミネート作品が続々公開されるこの1月、2月。業界の端にいる私も華やいだ気持ちになり、足繁く映画館をはしごする週末だ。来場者の感想や注目作などの会話に耳をそばだて、手に取るチラシを眺めて過ごす。劇場は気づきの宝庫だが、驚きを隠せないのが『パラサイト 半地下の家族』の来場者層だ。試写を観たり、配給会社の担当者と話しをしたりして立てた私の予想とは全く違っている。エンタメ仕立ての作品だが、そこは、2019年カンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)受賞作。墨のような社会の闇をえぐっている作品なのだ。なのに、ほぼ満員の劇場は20、30代のカップルや女性複数人がメイン。中高生と思しき子供をつれた親子連れもみられる。映画ファンらしきお独り様や60代超のお客様が予想以上に少ない。3回、時間帯、曜日、エリアを変えて行ったが、画期的な違いはなかった。数十億円以上になる映画とは、映画ファン以外に広がっての数字。こういう動きをするんだと、独りごちた。
3年前メトロ劇場の支配人になって、お客様が予想以上に高齢なことに危機感を持った。私が勤める新聞業界が永続的に抱える課題−若年層の新聞離れ、と共通するものを感じたからかもしれない。では、福井の若者は映画を観ないのか? 『福井コロナ』の支配人に問うと、「高校生もいっぱい来ますよ」とにべもない返答。つまり、「メトロ劇場」に来ない、だけらしい。そのとき、やるべきことの最重点事項に、若年層の新規顧客の開拓が加わった。少なくとも、平均年齢を40代、私や館主と同じ世代まで引き下げたい。今までのお客様を今まで以上に大切にしながら。
父が大切にしてきた、「お客様と一緒に創る映画館」というコンセプトはそのままに、世代や趣向に特化した特集上映と、学校とのタイアップで10代のうちにメトロ劇場での映画鑑賞を体験してもらう試みを、続けている。そして、コンテンツ。映画館に足を運びたくなるような良質の作品、話題作を上映できるかが成功のカギを握るからこそ、映画会社とのパイプを少しでも太くする努力もしていかないと。一朝一夕に成果は出ないかもしれないが、種をまかないことには芽吹かない。
そこで、『パラサイト 半地下の家族』、なのだ。ここで、大きな花を咲かせてくれるか? ジェットコースタームービー、エンタメ要素満載ながら、社会派の話題作。世代、性別を超えて楽しめる作品です。2月15日(土)〜終了日未定。
パラサイト 半地下の家族
【公式HP】http://www.parasite-mv.jp/
メトロ劇場
【住所】福井県福井市順化1-2-14
【電話】0776-22-1772
【HP】あり
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