【パルタージュ】

パリで出会った福井の工芸品。|パルタージュ

2020/12/13

『ホオズキの頃』©Tomoko Iozaki

私が働いているお店と同じ通りにある「パソナ農援隊パリ」の小さな事務所で友人が働いている。パリの地で日本の地方創生事業に取り組む、パリ支店の責任者という立場にあり、「10月から福井県の工芸品をプロモーションする仕事を請け負っているので見に来たらどうか」と誘いを受けたので、訪れることになった。

そこで紹介されたのは、見覚えのあるイチョウの木のまな板や、平らな眼鏡と漆器、本物の石のように見える軽い和紙製の箱など、9つの事業者の商品で、これからフランスでの新たな販路を探っていくとのことだ。

これらの商品は、日本酒専門店「メゾンデュサケ」やヨーロッパのコレクションのあるウイスキーバー、ミシュラン一つ星のフレンチレストランも入っている中心街にある、お洒落な雰囲気のショールームで、ブランド品のように温かみのあるスポットライトを受けて展示されているそうだ。

展示は10月中旬を過ぎた秋のヴァカンスの時期から始まったが、新型コロナの感染者が急激に増え、パリなど複数の大都市で21時から朝6時まで夜間外出禁止令が発出されたタイミングと重なってしまった。

ようやく営業再開にこぎつけたレストランやバーの関係者の落胆は大きく、その対応に追われていたことから、落ち着いたタイミングを見計らって、連れて行ってもらう約束をした。

レストランの中には閉店する店もあり、客の反応が予測しづらいものの、ディナーの時間を早める決定をした店も少なからずあったようだ。客側もこうした動きに臨機応変に対応しながら、それぞれが制限された範囲内で楽しもうという流れが生まれていたように感じた。しかし、こうした対応策も十分な結果を得ることができず、感染拡大の状況を受けて2度目のロックダウンとなってしまった。

日本でもニュースで伝えられているようにフランスは今、さまざまな問題を抱えて病んでいる。私自身、故郷の工芸品に触れ、分野は違ってもその前向きな取り組みに励まされた。福井で生まれた素材と、唯一無二の伝統技術によって生み出された美しい工芸品の数々。先入観のないフランスの地で、自由な発想とともに新たな展開に期待が膨らんでくる。

画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。福井大学などで油絵を中心に学び、渡仏後は語学や絵画などを勉強。2020年は作品発表の場がなく、インスタグラムデビューすることになった。


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#コラム#アート#連載

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