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【パルタージュ】
2021/05/18
春を迎え、マラソンのシーズンがやってきた。私は、毎年4月に開催されるパリマラソンに2019年デビューを果たし、初出場の勢いのまますぐに翌年もエントリーした。
初マラソンは「サブフォー」(フルマラソンを4時間以内で走ること)を目標に、経験者の友人のアドバイスに従いながら走り込みを行った。そして帰国した夏の早朝には実家の周囲にある低い山中で日陰を選びながら走った。鯖江まで足をのばした際に、ちょうど折り返し地点で「榎お清水」という湧き水を偶然見つけ、水分補給できたことを懐かしく思い出している。
「フルマラソンには30キロの壁がある」と聞いていたが、いざ本番となると経験不足のために25キロを過ぎたあたりから足が痛くなり始めた。マラソンの厳しさを経験できたことに満足感でいっぱいになったものの、あと少しのところで目標に届かなかった。「次回こそは」という小さなモチベーションを今も心の片隅に抱いている。
2020年はコロナ禍で中止となり、今年のパリマラソンは10月の開催が決まった。日本への帰国を予定している時期と重なり、当面の目標とも呼べる大会への出場が難しくなった私は、少し物足りない気持ちのまま、習慣的に練習を続けている。
週末の練習ではよく娘と一緒にヴァンセンヌの森へと向かう。クジャクや白鳥、アヒルなどが遊んでいる様子を横目に観察しながら、湖のほとりにある小さな道を1時間40分ほどかけて走りきる。疲労困憊の帰り道、「よく4時間もあのペースで走り続けられたものだ」と、過去の自分に感心している。
パリマラソンに出場した2019年、沿道に集まった人たちの温かい応援はゴールまで続き、時々知らない人がゼッケンの名前を見て声援を送ってくれた。何よりも嬉しかったのは、いつも厳しい勤務先の店長が私の名前を書いた旗を作って応援に来てくれたのを見つけた瞬間だった。
北陸新幹線の福井開業に合わせて3年後にフルマラソンの開催が検討されていることをニュースで知った。多くの人の協力が必要となるものの、どのような形でも参加することでたくさんの人と心を通わせることができる素晴らしさがマラソンにはある。ぜひ私も故郷の大会に挑戦してみたい。
画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。2年以上愛用していたランニングシューズがとうとうダメになってしまった。今月は、ゴッホが何枚か描いていた「古靴」に触発されて作品を描いてみた。
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