【気象予報士 二村千津子の風と雲】
2021/10/01
10月です。秋の深まりと、冬の足音を感じる1カ月。
キンモクセイの香りが漂い始める頃ですね。
以前、太平洋側のNHKを中心に勤務していた記者さんが、10月の終わり頃、けっこう悩んだ表情で「ふたむらさん、福井の10月は、なんでこんなにどんより曇った日が多いんですか?自分、マジで気分が憂鬱で。。。」と話しかけてきたことがあります。
実際には、10月の日差しが出る時間自体は、統計上は福井より東京の方が少ないのですが、それ以降の日照時間、11月、12月、1月、2月と冬に向けて、確実に東京の方が長くなるので、そんな印象を持ち始めるのが10月なのかもしれません。
10月の福井の天気の特徴としては、数日おきに天気が変わる、周期的な変化となるのですが、周期的にやってくる「どんよりした空」をもたらすようになる気圧配置があります。
西高東低
この言葉、聞いたことがある方も多いと思います。日本の西に高気圧、東に低気圧がある気圧配置。冬に現れやすくなるので「冬型の気圧配置」という言い方もします。
この気圧配置の時は、大陸からの冷たい空気が日本海に流れ込んできます。冬の日本海の海面水温は、大陸から流れ込んでくる冷たい空気に比べるとわりあい暖かいので、冷たい陸上から海上にでた時に、海面付近の空気が一気に冷やされて、雲の粒になります。寒い地域の、露天風呂で湯気が立ち上っているそんなイメージです。
その雲が西風に流されて、日本海側の陸地にかかってくるので、西高東低の冬型の気圧配置の時には日本海側は雲が広がりやすくなります。
一方で太平洋側には届かず、冷たい空っ風だけが吹きおります。これがいわゆる「木枯らし」です。
10月から11月になると「木枯らし1号が吹いた」というニュースを耳にすることがあるかと思いますが、実はこのお知らせは、近畿地方と東京地方にだけ発表されます。
同じような風のお知らせに「春一番」があります。春一番は沖縄と北日本をのぞく広い地域で発表されます。春一番はある意味、海が荒れたり、気温の急激な変化があったり…と、注意喚起を呼びかける意味でも、発表されるエリアが広範囲にわたっています。
木枯らし1号の場合は、意味合いが「冬の到来のお知らせ」という漠然としたもので、人口が多く、その時期の話題にのぼることなどから東京地方と近畿地方で発表しているようです。
とは言え、福井県内でもこの木枯らしという言葉がぴったりの風は吹きます。それが、西高東低の冬型の気圧配置になった時に吹く、木の葉を散らすような冷たい風です。
ただ、10月は木枯らしがビュービュー吹き続けるわけではなく、冬型の気圧配置の後は、高気圧に覆われ穏やかに晴れる。そんな日は朝晩がぐっと冷えて、葉っぱの色づきが進む…。秋がゆっくり深まっていく、そんな時期です。
晴れた日には、空高いイワシ雲やうろこ雲を地上から楽しむことができますが、西高東低の冬型の気圧配置になって寒気が流れ込んだ様子を宇宙からとらえた雲の様子で知ることができます。
写真は去年の10月6日の日本付近の雲の様子です。注目していただきたいエリアが2つ。水色で囲った部分です。
上の方の〇の部分をよく見ると
日本海上に線で描いたような雲が同じ方向に並んでいます。「筋状の雲」と言われます。寒気が強いほど筋が密になります。これが10月から11月には時雨(しぐれ)の天気をもたらしたり、冬には雪雲のもととなります。
この筋状の雲が現れるとき、気象予報士がちょっとウズウズする渦が現れることがあります。もう一つの水色で囲った部分なのですが、
数字の6を左右対称にしたような渦があるの、わかるでしょうか?
これは「カルマン渦」といわれるもので、大陸から流れ込む冷たい空気の風が、韓国の済州島で二手に分かれ、また、東シナ海で合流した時に、こういう渦が現れるのです。これもまた、そろそろ寒気が流れ込みやすくなってきたなぁと感じる現象です。
天気予報で冬型の気圧配置というワードを耳にしたら、「雲画像」など、チェックしてみると、面白いかもしれません。
10月は雲と風で秋の深まり、冬の足音を感じる1カ月となりそうですが、9月のコラムでもお話しした通り、台風という風にも注意が必要です。
二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ
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