南越前町河野地区の「へしこ寿し」は秋祭りに欠かせないローカルフード。

2021/10/09

日本海に面する福井県は古くから豊かな漁場を有し、地域ごとに特色ある「魚食文化」を生み出してきた。魚を多く食するだけではなく、調理方法や処理、保存技術などが知識・知恵として受け継がれてきたことを示すのだが、南越前町河野地区にも独自の魚食文化があり、今に残っている。



青魚を塩漬けにし、さらに糠漬けにした郷土料理・へしこもその一つで、古くから越冬の保存食として重宝されてきた珍味だが、そのへしこを使った「へしこ寿し」は河野地区独特の伝承料理。鯖のへしこをなれ寿しにしたもので、へしこを塩抜きし、三杯酢に漬けた後、炊いたご飯を挟んで、丸ごと一尾をアブラギリの葉で包み、重石をして発酵させている。小浜にも同じような「鯖のなれずし」があるが、こちらは炊いたご飯ではなく、米麹を挟み、アブラギリの葉には包まずに漬け込んでいくスタイルで、旧河野地区のものとは少々異なる。

「へしこ寿しは、地元にある十九社神社の秋祭り(2021年中止)に作るもので、嫁いでから40年、作り続けています。今年も祭りにあわせて作りますよ」とは、『うみの宿 さへい』の女将・南清美さん。

「10月19日に食べられるように1週間ほど前から作り始めます。うちでは塩抜きをしたへしこを三倍酢に漬け、白ご飯を使いますし、鯖の骨は取り除きます。他の家では酢飯を使ったり、へしこの骨を残したまま作ったり、アブラギリの葉がない場合は昆布を代用するなど、作り方や味はそれぞれ違いますね。最後に水を入れる家庭もありますよ」。作って2日ほど置くとご飯が馴染んで美味しくなるそうだが、ご飯が液状になるまで発酵させる人もいるとか。
今ではへしこ寿しを作る家も限られ、ご近所や親戚の分をまとめて作り、分けている南さん。「へしこ寿しは河野の秋の風物詩で、私は代々伝わる味を義母から教わりました。お嫁さんにも伝えていきたいと思っています」。



秋祭りの風物詩であるへしこ寿しを作るための鯖のへしこもまた河野地区に伝わる伝統料理の一つだ。かつて北前船の船員が保存食として食べていたとも言われ、その歴史は古い。

『うみの宿 さへい』の南清美さんはへしこ寿し同様、この地に嫁いでからへしこ作りを学んだという。「昔は船で運ばれた米を精米する際に出た大量の米ぬかを使い、夏の間に獲れた魚を塩漬けした後、米ぬかに漬け込み、一年間発酵させてへしこを作っていたそうです。地元に岩吉じいさんという方がいて、私はその人の作り方を義母のお姉さんから教わりました。サバ、ぬか、塩、米麹、唐辛子だけを使用して作るシンプルな逸品ですが、素材が生きる熟成と奥深い美味しさを知り、長年受け継がれてきた理由が分かりました。そんな大切な味を次の世代に伝えていきたいと思い、毎年、へしこ作り教室『ヘレンプロジェクト』を開催し、多くの方と一緒に河野のへしこ作りを行なっています」。

郷土料理を伝える人と教わる人、そこには必ず会話があり、コミュニケーションがある。飽食やデジタルな時代だからこそ、本当に大切にしたい“人と人とのつながり”。そんな地域・家族コミュニティの一役を担う郷土料理に、ぜひとも注目していきたい。

最後に、2日間重石をしたへしこ寿しをそのまま味わうのも美味しいが、軽くあぶって食べると甘みが増してさらに美味。香ばしい匂いが食欲をそそる、『うみの宿さへい』のオリジナルの味もぜひご賞味を。


「へしこ寿し」に関するお問い合わせはこちら

うみの宿 さへい
【住所】福井県南条郡南越前町糠12-21
【電話】0778-48-2738
【時間】9:00〜22:00(電話受付時間)
【HP】あり






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#グルメ#丹南

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