【パルタージュ】

パリはたゆたえども沈まず。

2019/07/05

セーヌに浮かぶ火災後のパリのノートル・ダム
『セーヌに浮かぶ火災後のパリのノートル・ダム』 ©Tomoko Iozaki

 今月は、パリ五区にある高級レストラン「トゥール・ダルジャン」にも近い橋の上から、復興に向けて工事が進むノートルダム大聖堂の姿を描いた。
 私が初めてノートルダム大聖堂を「描く対象」として意識したのは留学直前のことで、福井の駅前にあった仏料理店にノートルダム大聖堂の油絵が飾られていて、セーヌ川に浮かぶように後方から描かれていた美しい佇まいが印象に残った。それは福井出身で、(私が大変お世話になった)パリ美術学校の先生が手掛けた作品だった。
 ノートルダム大聖堂の火災から2週間ほどが経過し平穏を取り戻しつつある5月初旬、温かい日差しを受けてデッサンを描いていた私の背後で、ノートルダム大聖堂に優しい眼差しを向ける人たちを見つけた。きっと今回の悲しい出来事は、宗教や芸術に関わる人だけでなく、普通のパリ市民にとっても身近な存在に感じるきっかけとなったのだろう。

画家/五百崎 智子
1971年、福井市生まれ。福井大学美術科、大学院で油絵を学ぶ。ノートルダム大聖堂の火災の前日、私は初マラソンに参加していた。今、振り返ってみると、疲労がピークに達した25km付近を通過したあの瞬間も、平和な時間が流れていたように思える。

#コラム#アート#連載

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