【気象予報士 二村千津子の風と雲】
2022/11/01
こんにちは。
コラムを書いていて、「え、今年もあと2か月?」と、にわかに焦りだしている、気象予報士の二村です。
来年のカレンダーやスケジュール帳が店頭にならぶわけです。そんな季節の歩みを感じさせることの一つに朝の冷え込みも挙げられます。
10月も後半になると福井市街地でも最低気温が10度を下回る日が少しずつ増えてきて、サクラやハナミズキなど色づきが進む木々が目立つようになってきます。
そこで今回は、紅葉について少し深堀りしてみようと思います。
今年の10月は10月らしからぬ暑さでスタートしたものの、半ばを過ぎた頃からは一気に冬の入り口を感じさせるような冷たい空気が流れ込むようなこともしばしばありました。
最低気温が8度前後になってくると、紅葉の色づきが進むといわれています。わたしは、毎年紅葉の色づきをウォッチしているマイモミジがあるのですがだいたい11月後半になると一気に色づきが進む印象です。
木々の紅葉には個体差がありますが、そもそも、紅葉はなぜ起こるのか皆さん、ご存じでしょうか?簡単に言うと「冬支度」です。気温が低くなり、昼間の時間が短くなって、太陽の力も少しずつ弱まり始めると、「そろそろ葉っぱへの水分補給はほどほどにして、寒い冬に備えるか…」みたいな感じです。
葉っぱの中で何が起こっていくのかを順に追っていきましょう。
まず、そもそも葉っぱが緑色に見えるのは「クロロフィル」と言われる緑色の色素が幅を利かせているためです。クロロフィルは木々の成長にはかかせません。クロロフィルが持つ「葉緑体」が行っているのが光合成です。小学校の時にならった記憶がある方も多いのではないでしょうか。この葉緑体が二酸化炭素と水と太陽の光をもとに光合成を行い、木の成長に必要なでんぷんなどの栄養素と酸素を作り出します。葉っぱにある色素はクロロフィルだけではないのですが、夏の間、つまり、元気バリバリの時はクロロフィルの数が多いため葉っぱは緑色に見えるわけです。そして、葉っぱの色の変化のカギを握るのが、このクロロフィルの数の変化です。
このクロロフィルの数に変化が起こるのが、木が冬支度をはじめた時です。
冬支度の手始めに、まず、木は枝と葉っぱの間にコルク栓のようなものを作ります。
「離層」と言われるものです。完全にふさぐわけではなく、幹はクロロフィルを分解して養分にかえて幹に送って活動のエネルギーにします。葉っぱの中のクロロフィルが減ってくると、もともとその葉っぱの中に存在していたほかの色素が目立ち始めます。それがおもに黄色です。黄色の色素は「カロテノイド」。にんじんのオレンジ色の色素のβカロテンの仲間です。イチョウなど、葉っぱが黄色くなるのは、このカロテノイドが目立ってくるためです。
次に、葉っぱを赤く染めるのは「アントシアニン」という色素です。
このアントシアニンができるメカニズムは解明しきれていないのですが、離層によって養分の行き来がしづらくなったことで、葉っぱの中には光合成でできた糖分が残り、その糖や酵素が日光があたるとアントシアニンを作り出すと考えられています。
木が冬支度を始めて、葉っぱの中のクロロフィルが減ることで、葉っぱの色が黄色や赤に色づいていたんです。紅葉は一気に赤くなるわけではなく、カロテノイドのなどの数によっても、少しオレンジっぽい紅葉になったり、深い赤の紅葉になったりします。葉っぱが色づいていく過程にも注目すると、いっそう紅葉を愛でるのが楽しくなる気がしませんか?(笑)
さて、紅葉がきれいに色づくためには、「大きな寒暖差」「日光」「適度な湿度(雨)」が必要です。
10月25日発表の1か月予報では11月の気温はほぼ平年並み。極端な高温傾向にはならなさそうなので、きれいな色づきに期待したいですね。11月は暦の上では立冬を迎え、時折、冬の空気が流れ込んでは「冬型の気圧配置」となり、時雨の天気をもたらします。この冬型が緩んだ時が穏やかに晴れてモミジ狩り日和となるのですが、冷え込みが強まりますから、しっかりと防寒をして季節の移ろいを楽しみましょう。
※回答の掲載時期は未定です。全てのご質問にお答えできるとは限りませんので、ご了承ください。
二村千津子(ふたむらちづこ)
福井市出身。気象予報士、防災士、健康気象アドバイザー。2008年7月から2009年9月まで、中京テレビ「おめざめワイド」「ズームイン!SUPER!!」お天気キャスター。2014年4月から2017年3月までテレビ朝日「モーニングバード」(現在は「羽鳥慎一モーニングショー」)にて「ふた天」を担当。同年4月からNHK福井放送局「ニュースザウルスふくい」に出演中。アメブロ Twitter
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2022/12/01
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