【学生の肖像】Z世代の福井の学生はどんな風に福井が見えているのでしょう。|vol.6 Bettyさん

2022/12/13

学生で起業、なんて言葉も今や普通になったこれからの時代を作っていく、Z世代の福井の学生はどんな風に福井が見えているのでしょう。リレー形式で紹介する「学生の肖像」。




vol.6 Bettyさん

2000年坂井市生まれ。金津高校卒。福井大学国際地域学部4年。FM福井では初の現役学生によるラジオパーソナリティを務めている









コンプレックスを抱えていた幼少期

小さい頃に欲しかったもの、洋服と画用紙と色鉛筆。物心ついたときからファッションに興味を持っていたBettyさんは、ファッション雑誌を見ながらコーディネートを覚え、色使いを覚え、絵に描いてみたり、実際に買ってみたりもしていました。
が、それらを着ることはしなかったそうです。妹や従妹に着せてそれで満足していました。「かわいい洋服はスタイルがいい子が着て初めて似合うもの。だから自分は似合わない、そう決めつけていたんです」。見てきたファッションの世界には細くてきれいな人しかいない。自分に体系的なコンプレックスを抱きながら、その折り合いをつけるための行動でした。


金沢にてアンケートを一人ひとり取っていった

一つひとつ、常識が変わっていく

その考えが変わりだしたのが高校2年生のとき。2週間のアメリカ滞在で見た世界はコンプレックスも自分の中の常識も変えていくものでした。「いろんな人種の人がいて、それぞれが思い思いの服を着て歩いていたんです。アメリカでは価値観も宗教も違うけれど人は人、自分の思い通りに生きていいという世界観に、自分がイメージしていた“こうあるべき”感がなくなっていったのがわかったんです」。

そして高校3年生のとき、インバウンド向けのツアープランコンテストで提案したアイデアが選ばれ優勝します。外国人に直接取材をして、福井を旅してもらうためのプランを考えたのです。「福井にいらっしゃる外国人に、と思っていたんですが、福井には外国人がいないんです。インバウンドの統計を見ても福井県はワースト1~3位くらいで知られていないんです。だから考え方を“金沢から京都に向かう間の2泊3日というプランにしました。福井というとソースカツ丼やおろしそばなどをイメージしますけど、それもまた自分の基準でしか考えていなくて、本当に必要な、求めている旅は何かがわかりました。意外と大浴場に抵抗があるということも、越前打刃物に興味を持っていることもわかりました」。


多様性を知り“大学デビュー”

大学では福井と外国を学ぶことができる福井大学を選びます。県外はまったく考えていませんでした。何故なら福井が大好きだから。「何気ない雰囲気が心地よいというか。いろんな場所に行って、いろんないいところを見つけられる、宝探しのような感覚が福井にはあります。県外に旅行に行っても福井が恋しくなったり(笑)」。

大学に入って初めて知った言葉「多様性」に、これまで見聞きしてきたものが全部つながって腑に落ちたのです。自分にまとわりついていたコンプレックスがはがれていったとき、彼女ははじけます。好きな服を着ればいい、髪の毛だって染めてもいい、自由に生きる、と。それはマイノリティという言葉をこの街からなくしていく壮大な目的への行動の始まりです。

「福井には外国人がそれほど来ていません。つまり、街を外国人が歩いていると違和感を覚えて目が行ってしまうんです。それは奇抜な服を着ている日本人に対してもそう。以前SNSに県外から嫁いできた女性が『周りの目が気になって大好きなファッションさえできない』というメッセージをもらったこともあるんです。外国人に対しても日本人に対しても、この街はどこか違和感に壁を作ってしまっていて。だから自分で自分を発信して、こんな自分でも受け入れてくれるような街にしたいと思ったんです」。


価値観をなくすという価値観

価値観の基準をなくしていく。それは自分にもあてはまり、その価値観を見直すきっかけもありました。奇抜であればあるほど、年上の人たちは距離感を図ります。彼女にとってもそういう世代の人は全員そうした価値観を持っている、というネガティブな価値観を持っていたのですが、ある日パン屋の女性に「私もそんな色の髪をしてみたい」とポジティブに捉えてくれたことが、世代でひとくくりにしない、という価値観へと変わったのです。何よりも“慣れ”がそうした価値観を変えていくもので、好きな服を着て街に出続けると、周りの見方もポジティブに変わっていきます。

「人の目を気にせずに自分の考えに沿って生きていたほうがハッピーじゃないですか。私も好きな服を着ているほうがハッピーな気持ちになります。福井は今でも好きな街ですけど、そうした目や言葉に寂しい思いをしていた部分もあります。最近では慣れなのでしょうか、ポジティブに私のことをとらえてくれる人も増えています。そうやってお互いを理解する街になっていったら、もっとこの街はハッピーになるんじゃないかって」。
大学3年生のときには福井市中央公園で「+parco」というイベントも開催して、何気ない場所が素敵に変わっていく発見もしました。とことん福井を愛し、福井を楽しんでいる彼女にまた一つ転機が訪れます。ラジオのパーソナリティという仕事です。


大学生のアイデアでイベントを開催

ラジオDJも目標のための行動

ある日「将来の夢はラジオDJになること」と言った言葉が巡り巡ってラジオ出演につながり、大学4年の7月から、FM福井の「Update Evening」木曜日のパーソナリティとしてデビューしたのです。ラジオは彼女にとってずっと身近にあったもの。祖父の車での思い出、大好きなK-POPアイドルのエアチェック、聞く側だったのが今度は話す側に変わりました。これもまた、彼女の壮大な目標への行動の一つ。

「外見だけで判断して話を聞いてくれない方もいましたが、ラジオは自分の姿が見えません。見えないけど声は届きます。話を聞いてくれなかった方の耳にも。この声を聴いて興味を持って姿の見える自分を認識してもらえたらまた、距離感も縮まるのかな、と思っています。コロナで人と会えない時間もあって、精神的に大変な時期もありました。だからこそ、伝える言葉は大事だと思って、相手を傷つけない言葉を選ぶようにもなって、その考えがラジオにも生かされています」。

番組でやりたかったお悩み相談室も開設して、自分よりずっと年上の人が「心が動かされる」と感想をくれたこともありました。「声しか聞こえないからどんな姿なんだろうと想像するのも楽しいですよね。音楽だって自分が生まれる前の曲が流れると懐かしさと新鮮さが両方やってくる感じで」。


ラジオと福井は同じ

パーソナリティを始めて数カ月が経ち、彼女はこんなことを感じ始めています。「ラジオと福井って似ているって。『福井を、福井を』と向き合い過ぎると見えるものも見えなくなってしまって、私が福井を好きなのはリラックスした何気ない瞬間のとき。ラジオもどちらかというと“流れている”という風に、街の音の一つであって、ふとしたときにいいことが聞こえたり、心地いい音楽が流れて『いいな』と思ったり」。
彼女が考え、行動し続けていることは、すべて一つにつながっています。福井を愛し、福井を住みやすい街にするということに。





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