【パルタージュ】
2019/12/13
最近になって、パリが運営するアトリエの版画講座に通い始めた。福井大学に在籍していた学生時代には一通り習っていたものの、版画にはその技法や版の仕組みなどにたくさんの種類があり、(鑑賞する上でも)もう一度勉強し直す必要があると思っていた。
版画は支持体(版画紙)や色材の白黒の感じが、感覚的にも合うと感じ始めていたことも理由のひとつ。そして、絵の具と筆を使った描画方法では表現できない視覚的な効果が得られるので、ゆくゆくは制作に取り入れていきたいと思っている。
8年前に受講した裸婦をデッサンする講座では、時折モノタイプ(版の表面に直接インクや絵の具などを使って描き、紙を当ててプレスする1点物の版画技法)で制作しながら楽しんでいた。この技法をよく用いていたフランスの印象派画家・ドガ(1834-1917)の作品と出会ったのもちょうどこの頃。福井に帰るたびに必ず足を運んでいる福井市美術館では2年前に開催されていた「版画にみるベル・エポック展」で、20点ものドガのモノタイプを見る機会に恵まれた。
この秋パリではオペラ・ガルニエ(オペラ座)の350周年を祝して「オペラ座のドガ」という特別展が催されている。ドガはバレエを主題とした作品の画家として有名だが、私は「彼のモノタイプを見ることができる」と期待して会場に足を運んだ。
浮世絵(特に葛飾北斎)の影響を受けたと言われる、中心がずれたような構図と白黒のバランス、いきいきとした線はやはり魅力的で、今回もまたパステル画や油彩画よりも版画やデッサンに目を引かれた。
版画講座では、三色刷りのドライポイント(版画の技法のひとつ)から始まり、3つの版を作って正確にプレスする方法を習った。 「作品の完成という1%の喜びを得るために99%の職人的作業がある」。自身も作家活動を行っている講師の先生が最初に語ったその言葉の通り、必ずしも満足のいく刷り上がりになるとは限らないがどこか地味な技法が面白い。少しずつ工程が進む中であれこれと試行錯誤しながら、さらに手直しを加えたり、色を変えたりしながら制作活動に励んでいる。
画家/五百崎 智子
1971年、福井市生まれ。福井大学、大学院を卒業後、フランスへ。油絵などを学ぶ。選手のサポートスタッフとして東京オリンピックに帯同予定という、娘の柔道のコーチに日本語を教えてあげることになった。
2020/01/12
2019/11/14
2019/11/14
2020/01/12