【パルタージュ】

フェリックス・フェネオン、新しい時代展から。

2020/01/12

『未来の黄金時代 (L’Âge d’Or)図』 ©Tomoko Iozaki

 12月に入ると、パリの花屋にはモミの木が並び始め、商店街はイルミネーションで光のトンネルのように彩られた。フランスでは、クリスマスは「家族で過ごす大切な日」という印象が強く、この季節になるとプレゼントのような大きな袋を手に下げている人たちともよくすれ違うようになる。こうして年末を目前にして一年を振り返ると、最も興味深かった「フェリック ス・フェネオン」展のことを思い出す。  

フェネオン(1861〜1944年)は公務員、美術評論家、新聞記者を経て、画廊のアート・ディレクターとなり、パリで最も重要なコレクターの一人とされた人物。彼はジョルジュ・スーラの作品と出会って「新印象派」の名付け親となり、次々と無名の画家たちを発掘した。  

その新印象派を代表する画家のひとり、ポール・ニャックが点描法で描いた手品師のような趣のフェネオンの肖像画を一目見ようと、私は「フェリックス・フェネオン」展の会場に足を運んだ。最初は「憧れのMoMA(ニューヨーク近代美術館)から来る有名な絵を見ておきたい」という程度の軽い気持ちだったものの、彼は近代美術史のキーパーソンであり、その功績によって美術史に名を連ねる画家たちが誕生していく過程を垣間見たような気になった。  

点描法といえば、福井大学の学生時代に油彩画の授業で人物を描いたことがあり、ハーモニーのある明るく透き通った色合いの仕上がりに満足したことを覚えている。折よく、東京西洋美術館で点描主義を確立したジョルジュ・スーラの作品「ポーズする女たち」を鑑賞する機会にも恵まれ、一つ一つの点の緻密さに思いもかけず感服した。  

あらためて当時購入した画集を手に取ると、私にとってお気に入りの作品もまたフェオネンの目に留まった幸運な画家たちによるものだった。フェオネンは、芸術作品は個人が手元において身近に楽しむのが理想的とする考えの持ち主で、作品が最終的に行き着く美術館を「共同墓穴」と辛口で表現したこともあったという。

「作品は時間をかけて親しむことができれば見えてくるものがある。その見え方は様々に変化していく」(「現代アートバブル」吉井仁美より)。そのことを体験できるのは、作品を買い求めた人だけが得られる特権だと思う。

画家/五百崎 智子 
1971年、福井市生まれ。福井大学、大学院を卒業後、フランスへ。油絵などを学ぶ。この秋は注目の展覧会が目白押しで、没後500年を記念する「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」にも2度、足を運んだ。

#コラム#アート#連載

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