日々URALA(ウララ)

美味しいそばは「十割で手打ち」。それって本当ですか?|宗近製麺

宗近 麺

“麺のプロ”宗近鉄也さんがお送りする麺好きのための連載「麺 to the future」。 前回は「そばの美味しいゆで方」についてお話しいただきましたが、今回は「十割そば」や「田舎そば」、そして「手打ち」と「機械打ち」など、そばに関するあれこれを教えて頂きます!

宗近鉄也(むねちか・てつや)
株式会社 宗近 専務(四代目)
1980年、越前市(旧武生市)生まれ
高校卒業後、大学進学を機に上京。大学卒業後は某企業で数多のクレーム対応に従事、約6年間勤務。その後、奈良県の製麺所に就職、約4年間勤務。32歳で実家である『株式会社 宗近』に就職、35歳で専務に就任。現在に至る。

-2019年の年越しそばから、あっという間に1カ月。皆さん、年越しそばは上手く茹でることができたと思います!(茹で方は前回参照)

昨年中は、多くの方々に当社製品を召し上がっていただきました。ありがとうございました。ところでそばには様々な製品があります。分かりやすいところでは、生麺と茹で麺、そば粉の配合割合、つなぎの有無などです。そば店では「二八そば」「十割そば」などとPRするところもあります。手打ちと機械打ちでも分けられますね。今回はいろいろなそばについて少しお話したいと思います。

-「十割そば」は“本物志向”“そば通”“美味しい”のイメージが先行されがちですが、どう思われます?

麺のプロとしては、「十割そばだから絶対に美味しい」とは断言できません。喉越し、噛み応え、風味など、そばの愉しみ方は色々あります。さらに、麺の短さや、ざらつきもそれらと同じで、店主さんのこだわりが麺の個性となって表現されているといっていいでしょう。大きい茹で釜で職人が茹で上げるそば、自宅ではなかなか表現出来ない味です。
また一方で、スーパーなどの小売店で販売されるそばも、幅広い世代から支持されています。リーズナブルな価格でご自宅でも簡単に調理でき、なおかつおいしく食べられる。要は、趣味嗜好や生活スタイルによって、一番美味しいと感じられるそばが変わってくるのです。

-自らの手打ちなら麺の太さがバラバラでも美味しいし、仲間となら無条件に美味しいと感じます。

ね、そうでしょ? まさにそういうシチュエーションこそが、その方にとっての一番美味しいそばなのです。

香りが強く、黒っぽい、いわゆる「田舎そば」
ツルツルと食べやすい「更科そば」

-そば粉の配合割合の違いを見分ける方法はあるんですか?

福井の一般的なそばは、黒っぽくてコシが強いゴツゴツした「田舎そば」です(最近はそうでないそばも増えてますね)。一方、喉ごしが良く、細くて洗練された白っぽい「更科そば」が主流の地域もあります。

色が黒いからそば粉が多い、白いから少ないのではなく、要はそば粉の使い方の問題。黒っぽいのは“そばの殻”も挽きこんでいるから黒く、蕎麦らしい力強い風味が残ります。
一方、「更科そば」は、蕎麦の実の白い部分を使うから白くて洗練された味になる。ですから、残念ながらそば粉の割合は、色では判断できないかもしれません。

ただ、はっきり言って私は、割合とか全然気にしない派で、要は美味しいと感じればOKです!

-そば粉の割合について、店舗なら聞けば分かりますが、市販品での判断は?

あまり知らないかもしれませんが、パッケージの裏側を見て下さい。

原材料の最初に「そば粉」の表示があればそば粉を50%以上使用、「小麦粉」が先であればそば粉は50%以下の使用です。ただ、そば粉が最初に表示されている商品の方が、圧倒的に価格が高いですね。当社商品でいえば、1食(つゆ付き)あたり、小麦粉が先の商品は150円前後、そば粉が先の商品は300円前後です。

次ページ
まだまだ続く奥深き「そば」の世界。
“手打ちの方が美味しい”はもう古い!?

-わかりやすいですね。ところで“つなぎ”は、小麦粉の他には何がありますか?

山芋や卵、新潟県の「へぎそば」などは海藻の布海苔(ふのり)を使います。グルテンのモチモチ感や山芋などのネバネバ感が、そばのツルツルとした滑らかな食感を作り出しています。当社では、小麦粉や山芋の粉末を使用しています。

新潟県「へぎそば」。つなぎは布海苔

-つなぎを入れる理由は?

主に3つあります。

①ゆでのび防止 
②食感の調整  
③製麺のしやすさ

①ゆでのびについて。
“ゆでのび”とは、茹でた後に柔らかくなってのびてしまうこと。つなぎを入れたからといっても30分も経てば当然のびますが、そば粉だけの麺に比べれば伸びにくいです。

②食感の調整について。
例えば、ざらざらした麺をもう少し滑らかにしたいとか、逆にもう少しコシを出したいとか。福井ではあまり見かけませんが、ラー油などが入った辛いつけ汁で食べる「肉つけ蕎麦」などは、つなぎとして卵白を練りこみ、独特の強いコシを出すこともあります。

③製麺のしやすさについて。
そば粉十割はやはり生地が破れやすいです。水とつなぎを加えることで、破れにくく伸ばしやすくなります。まさしく“つなぎ”です。

一言につなぎと言っても、様々な使い道があります! つなぎを入れるから安く仕上がるというネガティブ要素ではなく、色々なプラスの要素があるから使用しているのです。

-水の話が出ました。手打ちと機械打ちでは水の分量も違うのですか?

違います。通常、そば粉に対して手打ちなら45~50%前後機械打ちなら35%前後でしょうか。機械打ちが少ないのは、水分が多過ぎると生地が柔らかくなりすぎて麺になりにくく、機械(ロール)を通過するにも時間を要するから。そして日にちが経っても麺の品質劣化を防ぐ役割もあります。

-手打ちと機械打ちの違いは?

手打ちは職人さんの思いや個性が、ダイレクトに味に伝わってくる「料理は心」という感覚があります。手打ちならではの食感・ざらつき・麺の透明感に加え、包丁切りならではの少し不揃いな麺が、噛み心地の愉しさも演出してますよね。

機械打ちは、均一な麺が特徴です。当社では、いつどこで食べても美味しく感じるよう、粉の配合・製麺方法をレシピ化し、職人さん以外でも製麺が出来るよう仕組化しています。あとは、職人さんがそばに思いをぶつけているように、私たち製麺所も心に響く麺が作れるかどうかが腕の見せ所ですね(笑)。

-宗近さんでは、すべて機械打ちですよね?

いいえ。実は、かなり手打ちに近い製法の商品もあります。

当社の通常ラインでは1時間に約1000食を製造していますが、手打ちに近い製法は1時間に250食くらい。人の手を使う工程がかなり多いので、明らかに効率も悪いです。ちなみにこの製法は、私が一般的な製麺理論を無視して勝手に編み出したもので、全国でも珍しいケースです。

先日、人手不足・労力に限界を感じている店主が当社に相談に来て、「自分で打たなくても、この味なら十分いける!」と、このそばを絶賛! 切り替えていただきました。

手打ちそば屋さんが納得するほどの高品質に、自信をもっています。そして、この手打ちに近い製法が麺づくりの想いをより強く伝えてくれるのではないかと感じているところです!

-なるほど。そばの様々な“いろは”、ありがとうございました!




暖冬とはいえ、2月は底冷えする季節です。そんな寒さを温めてくれるのが、あったかい麺料理。次回は中華麺、専務と縁の深い中華料理屋のお話です。ご期待ください。

宗近製麺(むねちか)
【住所】福井県越前市北町45-63-1
【電話】0120-22-3139
【時間】10:00~17:00(日曜、祝日除く)
【HP】あり



日々URALAからのお知らせをLINEで受け取れます!




モバイルバージョンを終了