【麺 to the future|宗近製麺】
2019/12/20
“麺のプロ”宗近鉄也さんがお送りする麺好きのための連載「麺 to the future」。前回のテーマは「“麺のプロ”誕生秘話」でしたが、第2回目の今回は、この時期ならでは「年越しそば」です。
家庭で美味しく食べるコツから、世間の年越しそば事情までたっぷりとお伝えします。
記事の最後にはとっておきの情報もありますのでぜひ最後までお読みください!
宗近鉄也(むねちか・てつや)
株式会社 宗近 専務(四代目)
1980年、越前市(旧武生市)生まれ
高校卒業後、大学進学を機に上京。大学卒業後は某企業で数多のクレーム対応に従事、約6年間勤務。その後、奈良県の製麺所に就職、約4年間勤務。32歳で実家である『株式会社 宗近』に就職、35歳で専務に就任。現在に至る。
-早速ですが大晦日といえば年越しそば。一年の最後(笑)、美味しく食べるコツはありますか?
ズバリ、茹で方です。
茹で方で失敗して、美味しさ半減ということはよくありますよね。麺を提供している側としては、皆さんが上手く茹でているのか、かなり気になります。
-失敗している方は多いような気がします。どうすれば失敗しませんか?
私たちは麺の特徴や形状(麺の断面や水分量など)を確認して、麺の茹で上がり具合を肌感覚で調整しています。「表示では〇分だけど、あと〇秒ほど長く茹でた方が美味しいかも」みたいな感覚です。
この感覚を皆さんにお伝えできれば、もっと麺を美味しく食べてもらえるのになぁ…。「家庭で美味しく麺を茹でる方法」は、私の永遠の課題なのかもしれません。
-そばにはゆで麺と生麺がありますよね。当然、茹で方が違いますが…。
ゆで麺は、一度茹で上げてあるので、お湯にサッとくぐらせ温めるだけでOK。柔らかくて食べやすく、調理も簡単で、昔から一定の人気があります。
一方、生麺はお湯で茹で上げ、しっかりと水で締めると美味しく食べられます。ゆで麺よりも手間はかかりますが、断然に美味しいです。
-今すぐにでも出来る、茹でる簡単なコツは?
ご自宅にある一番大きな鍋で、たっぷりのお湯で茹でること! たったこれだけ?と思われるかもしれませんが、「沸騰していない」「お湯が少ない」場合、美味しく茹で上がりません。
逆にお湯がたっぷりあっても、「一度に大量の麺を茹でる」場合は失敗の可能性大。お湯の温度が急激に下がり生煮えの状態になり、美味しく茹で上がりません。生麺重量に対し10倍以上のお湯を使い、なるべく少ない食数ずつ茹でてください。
-茹でている最中、茹でた後、それぞれで気を付けるべきポイントは?
生麺をお湯に入れたら、優しくソッと麺をほぐすこと。乱暴に混ぜすぎると、麺が切れてしまいます。茹で上がり後は、キンキンの氷水で麺を締めること(真冬は水が冷たいので不要)。しっかり締めることで、「喉越し」「コシ」が格段に良くなります。
「茹でる前のたっぷりのお湯」
「茹でた後の氷水」。
最初と最後が肝心です!
それと、麺の形状にも、美味しく食べるヒントが隠されていますよ。
-ぜひぜひ教えてください。
麺の断面によっておススメの食べ方があります。
正方形に近く、細打ちの麺なら「ざるそば」。濃い目のつゆにつけてシンプルに食べるので、喉越しが良い正方形の細打ちの麺です。
平たく、太打ちの麺なら「おろしそば」などのぶっかけそば。つゆ以外の具材が麺と絡み合うので、麺が具材の存在感に負けてしまわないためにも、太い方が相性が良いです。
実は、福井のスーパーで見られる生そばは「平たい太打ちの麺」。おろしそば文化が根付いている福井県民のための麺といったところですね!
温かいそばで召し上がる場合、太麺・細麺どちらでも美味しいですが、個人的にはスルッと口に入りやすい細麺の方がおススメです。
ちなみに、全く同じ原料・配合の麺でも、0.1mm単位の切り方の違いで、茹で時間も変わりますし、食感も味わい方も全然違います。これも麺の楽しみ方のひとつかもしれません。今年は麺の断面にも注目して、年越しそばを選んでみてはいかが!