【パルタージュ】

ポストコロナの新しい生き方が始まる。|パルタージュ

2020/08/12

『ジェラニウムの花たち』 ©Tomoko Iozaki

奇しくもパンデミックが起きていなければ日本行きのフライトに乗る予定だった5月11日、フランスで約2ヶ月に及んだロックダウンが解除された。本来なら福井で久しぶりの温泉に浸かっているはずなのに、ロックダウンが解除された翌日には、感染の不安やストレスを感じながら、自転車に乗って勤務先へと向かっていた。

パリで暮らしていると、ポストコロナを巡ってさまざまな情報が伝わってくる。例えば、仕事に関してはネットを利用した働き方の普及によって、毎日職場に行かなくてはいけないという既成概念が崩れている。家賃が高く、狭いパリの厳しい住宅事情を背景に、テレワークによって不便な生活を経験した人たちの間でパリ離れが生まれ、より広く、自然豊かな田舎を選択肢に選ぶ人が増えているそうだ。

アートを巡っては、7月初旬に開館するルーヴル美術館に先駆けて、6月23日にオルセー美術館が扉を開いた。開館を心待ちにしていた夫に誘われ、開館初日に美術館を訪れることになったが、チュイルリー公園を横切りセーヌ川を渡って美術館へと向かう道すがら、あまりの人の少なさに夫は戸惑いの表情を浮かべていた。

館内に入るとさらに人は少なく、テロ事件が続く中で恐る恐る訪れた時のことを思い出すほどの状況だった。ほとんどはパリの住民だろう。絵の前で記念写真を取る人はいない。いつもであれば人が多すぎて鑑賞する気になれない人気のゴッホの絵をゆっくりと観ながら「観光客でにぎわう日は戻ってくるのだろうか」と、複雑な思いも込み上げてきた。

福井や京都で予定していた展覧会は中止・延期となってしまったが、そんな中で励ましの言葉をいただき、創作活動への思いを強くしている。一方で、毎年日本に帰省して、実家で過ごす時間は、私が心のバランスを保つうえで必要なものだと、気づかされた。 

世の中の価値観が大きく変わり、制限のある生活を余儀なくされる中、一人一人が必要に迫られ、今まで思いも及ばなかった生き方とのバランスを探り始めている。

「制限は創造性につながる」という絵画の世界の表現にあるように、ここから新しい可能性が生まれることを願わずにはいられない。

画家/五百崎 智子 1971年、福井市生まれ。パリ在住。福井大学などで油絵を中心に学ぶ。卒業後パリで語学や絵画を勉強。今月の作品では「変わらない美しさ」が身近にあることに気づかされた。


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#コラム#アート#連載

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