2021/07/12
ふくいのフルーツ開拓史
福井県は全国から見ても、果物の産出額は全国46位。確かに福井は果物のイメージがない。ところがどっこいブランド品はある。誰もが名産にしようと奔走する。これはそんなフルーツの開拓の物語。 ※農林水産省統計2018年
業界の常識を覆し、席巻する福井の完熟梅。
黄金の梅
他にはない価値がある、
フルーツとしての再起。
日本海側最大の梅の産地である福井県。福井梅は天保年間(1830〜1843年)に現在の若狭町(旧西田村)伊良積(いらづみ)に発祥したとされている。梅干し・梅酒のどちらにも使える「紅映」、梅酒や梅シロップ用の「剣先」、梅干しに加工しやすい「新平太夫」、フルーティな香りが特徴の「福太夫」の4種類が福井梅の主な品種だ。
福井県内における福井梅の産地のひとつ、南越前町河野地区ではいち早く新平太夫を栽培、梅干し用の塩漬けに加工し、出荷してきた。新平太夫は小玉で黄熟、病気に強く、収量が豊富という強みがあったが、一般的な手摘みとは違い、梅が木の上で完熟し、自然に落ちてきた実を収穫するという方法は稀だった。実は、梅は落下や雨などにより果実が腐ってしまうなどのリスクが高いため、青梅の状態で収穫、出荷するのが常識だったのだ。しかし、樹上完熟した梅の圧倒的な香り、黄金色とフルーティさは、この方法でなければ実らない唯一無二のもの。それでも他の品種に比べて単価が低いという理由で生産中止を検討していたところ、料理研究家との出会いによって運命が大きく変わることに。「当時は梅=梅干し・梅酒がお決まりでしたが、新平太夫はそんなカテゴリーに収まらない、フルーツとして勝負できる可能性を感じました。製菓材料やジャムに向いていると感じたときからブランド化のお手伝いをしてきて、やっと認められてきたと実感しています」と、料理研究家の佐々木京美さんは話す。
プロ向けの商材として
注目され続けるフルーツ梅。
10年の歳月をかけ、生産者と行政、民間企業が連携し、「黄金の梅」としてのブランド化に成功。製菓材料、資材卸の『(株)カリョー』が加工施設を整備し、製菓材料として県内外での販路を開拓している一方で、一般客向けにも生梅やジャムなどの加工品の販売も行なっている。生梅に至っては予約販売数が早々に完売してしまうほどの人気だ。
今現在、県内外の一流料理人や有名店でも使われるようになった黄金の梅。あまりの流行ぶりに、全国区の有名な産地でも完熟梅の栽培、市場出荷が当たり前となっているとか。
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