津田寛治さん主演映画『THEATER』、海外映画祭正式招待! 作道雄監督インタビュー

2022/10/19

海外映画祭正式招待作品に

コロナ禍の世界は、まるで人間がいなくなったかのように静まり返り、人々は息をひそめて過ごしていました。映画館は密室だから(本当は違うけれど)と、特に敬遠された娯楽施設。休館を余儀なくされ、映画自体の製作もストップした、そんな世界でした。

ーー緊急事態宣言が発令され、明日から休館せざるを得なくなった映画館。翌日から上映が決まっていた自主映画作品の監督のために、支配人は1日限り、無観客で監督だけを招待して映画を上映することになったーー

当時の状況がリアルに感じられる短編映画『THEATER』、この度イギリスのリーズ国際映画祭にて正式招待作品として選出されました。この映画祭で最優秀短編作品に選ばれるとアカデミー賞短編部門への応募資格も与えられることになります。これまでVR作品で海外の映画祭にてノミネートされてきた、作道雄監督にとって実写映画での海外映画祭正式招待は初となりました。


きっかけは三谷幸喜作品

作道監督の最終学歴は京都大学法学部! 異色の監督ではありますが、京大に入学したきっかけもやはり映画。「脚本家になりたかったからなんです」。中学2年生のときにレンタルビデオで借りてきたテレビドラマが衝撃的だったのです。折しもその年に見ていた大河ドラマにも同じ名前の脚本家が。作道少年は驚きました。まったく違う作風なのに同じ人が脚本を書いているのかと。

「借りてきたのが『古畑任三郎』、当時の大河ドラマが『新選組!』。三谷幸喜さんだったんです。もう、『この人みたいになりたい!』でした。以降は映画も舞台もほぼすべて三谷幸喜作品は観ています。三谷作品は主人公も含めて“変わり者”ばかり。それでいて根底に流れているのが性善説なんです。たとえ悪人でも環境のせいでそうならざるを得なかった、という感じで。基本的に“変わり者だけどいい人”なんです。三谷さんの人間好き、の部分をよく感じます」。

それで、脚本家になるにはと考えたのが、「脚本家になれなくても最悪テレビ局に入れたら脚本家になれるんじゃないか、と短絡的に考えました。だからいい大学に入ろう、と思いまして、猛勉強して。でも入学してわかったんですが、テレビ局に入ったとしても脚本家にはなれないんだと(笑)」。
となればもちろん自主制作にのめり込んでいきます。「作ってみて感じるのですが、やっぱり自分は現場が好きなんだと。俳優と打ち合わせするのも、編集マンの隣に座って編集をしていくのも。脚本を書いているだけだと寂しいし、物足りないし、無理してでも脚本・監督でいたいと思いました」。





津田さんの役作りに感動

卒業後に制作会社を立ち上げ、さまざまな作品にて脚本も監督も製作も行なってきました。そして2020年、世界にコロナがやってきます。翌年の2021年も非常事態宣言が出され、すべてがストップしてしまいます。「あらゆる業界に元気がなく、仕事自体もなくなっていきました。そんなときにプロデューサーの星久美子さんから『こんな時代だから映画を作ろう』とお話をいただきまして、コロナ禍の今を描こうと」。

ストーリーの節々に作道さんの“映画館好き”が表われています。さらに演じるのもこれまた映画館好きの津田寛治さん。いわば映画館愛に溢れた作品になっています。「映画は映像も音響も、映画館で観るように作られています。一度も休憩を挟まないノンストップの2時間を、あの真っ暗の環境の中で過ごすのは、テレビやスマホで見るのとは段違いの没入感があります。それだけ映画に対して真摯に向き合える映画館がやっぱり好きなんです。今回の脚本も、もしコロナ禍に自分が新人監督だったらどうだったんだろうと想像して書きました。津田さんが本当に映画館の支配人のように見えたのも、セリフを完全に自分の中に落とし込み、役柄をギリギリまで研究し続けてくださったからだと思います。撮影の合間にずっと、映画館の客席に座って目を閉じて、セリフを唱えていた津田さんの姿がとても印象的でした」。


主人公を務めた津田さんもこの映画には並々ならぬ思いもあったそうです。「今回、作道監督が描いた物語は映画館の世界。それもシネコンではなく、僕の大好きなミニシアターが舞台です。コロナ禍で喘ぎながらもなんとか生き延びようとする、この映画の主人公である映画館を演じるのは目黒シネマ。昔からお世話になっている大好きな映画館です。以前、館長さんから言われた忘れられない言葉があります。『うちのスタッフは下を見ていることが多いんです。床にゴミが落ちていないか、いつも気を配ってるんですね』と。その言葉に僕は心を打たれました。映画館を愛するスタッフさんは、お客さんよりもスクリーンよりも映写機よりも床を気にかけている。床と一番コミットしている。映画館に限った事ではないかも知れませんが、愛とはそういったところに出るんだなあと思いました。ここは観客にとってもスタッフさんにとっても映画の聖地なんだと襟を正した記憶があります。素敵な映画に仕上がりましたので一人でも多くの人に観てもらいたいです」。


言葉は違えど感情は同じ

海外の映画祭に出したくて、劇場公開を1年待ってもらった甲斐も実り、果たしてリーズ国際映画祭の正式招待作品に選ばれました。「今回驚いたのが、リーズの映画祭の紹介文に“ love letter to cinema”であり、“a charming ghost story”と書かれていたことです。こちらからはそういった言葉を映画祭側に伝えていなかった分、嬉しかったです。世界全体で映画館上映が難しくなっている中、同じ感情を抱いてもらえたのでは、と思いました」。

VR映像、実写映画で、さらにはマンガの脚本も現在書いていて、これからの活躍が期待される作道監督の源は“ポジティブ”だそうです。「元々ポジティブな話が好きですし、ネガティブなテーマでもその中にポジティブを見つけようとしています。それが自分の創作の源でもあり、それを大事にしながら国内外問わず映画を届けていきたいと思っています」。





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#人物#インタビュー

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